岡崎通運株式会社さま

システム主導でブレない業務改革を! 利便性を考えればクラウド化は当然の選択でした

創立60年を超える歴史を持ち、愛知県の運送会社としては老舗となる、岡崎通運株式会社(以下、同社)さま。
一般的な宅配便等とは異なり、自動車産業が盛んなこの地特有の業務形態として、かんばん方式(トヨタ自動車のジャストインタイム生産システム)に従いあらかじめ指定された時間に決まった場所を訪れ自動車部品を配送します。
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昭和25年の創業当時は、JR岡崎駅に鉄道貨物の拠点があった時代に荷役会社として設立され、現在は自動車部品のサプライヤー企業の製品を、トヨタ自動車、三菱自動車工業をはじめとする主要自動車メーカー各社へ納品することを主な業務とするほか、鉄道運輸や学校給食の配送も取り扱っています。

基幹システムの刷新にあたり、この独特な業務形態をより効率よく管理するための大きな目標として「業務そのものの改善」を掲げ、さらに当時最新のクラウドサービスとして登場したばかりだった「FUJITSU Cloud PaaS A5(富士通が提供するWindows Azure環境)」の導入にも踏み切りました。
この事例では、単に基幹システムを新しくするだけに留まらず、システム面から業務の改善を進めた同社の課題解決法をご紹介するとともに、最新クラウドの活用事例と導入の考え方についてもお話をお聞きしました。

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  • 業務の効率化を考えた新たな基幹システムへの作り替えが必要。
  • 情報システム部門の負荷削減を目的としたクラウドサービスの利用を考えたい。

導入の背景

『社内の課題を解決するため、基幹システム入れ替えによる業務改善を目指した』
-社内システムの刷新を検討されていた当時の課題について詳しくお聞かせください。 -

もともと基幹システムを新しくしようとしたきっかけは、ちょうどハードの保守が切れるタイミングでアプリケーションも寿命だったからです。当時使っていたシステムも悪くはなかったんですが、実際に使用していたのは主に売上の管理で、請求書の発行をするだけのものになっていました。
経営上の課題や社内からの要望も多く出てきていた頃だったので、機械の入れ替えに伴い中身の設計も見直して、業務に合わせたものにしたほうが良いと思ったんです。

経営上の課題というのは、売上や収益、利益を早くつかんで業績の予測を立て経営に活かしたいということでした。
事業規模が小さかった頃は、毎日手作業で売上を集計して次の日には収益を出していましが、現在のように業務内容が多様化し事業規模も大きくなってくると、とても対処できません。これまでも収益管理の効率化を図ってきましたが、月間の売上実績は把握できても、売上の見込や実績を日々把握するまでには至らず、以前から経営上の課題として指摘されていました。それを可能にするためには、新たな仕組み作りの必要があると考えたのです。

また、当社は社内システムの管理部門は私達3人だけで、社員の使用するパソコンの設定や不具合の対応なども担当していますし、サーバーの保守にも工数がかかっていました。この負荷を減らし、少人数でも効率的に業務が回せるよう、ウェブを利用したシステムを希望してはいましたが、検討当時はまだクラウドの利用までは考えていませんでした。

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管理部部長 兼 経営企画室室長
取締役 山本 信勝 様

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管理部システム課 課長
井戸田 充弘 様

導入のポイント

『利便性を考えればクラウドを選択したのは当然の結果、最後まで目的意識をブレずに設計』
-当初予定に無かった基幹システムのクラウド化を検討されたきっかけ何ですか? -

内田洋行ITソリューションズ(以下、ITS・当時はオフィスブレイン)さんと新しい社内システムについて相談していた2010年9月当時は、オンプレミスの基幹システムとして考えており、クラウド利用の予定は無かったんです。ただ、先ほどもお話ししましたが、3人体制で新システムを回していくことを考えたときに、保守や運用の工数はなるべく抑えなければならなかったので、クライアント端末の管理やソフトのインストールなどの負担を削減するためウェブシステムを利用したいと思っていました。

ちょうどそのころマイクロソフトから、当時最新のクラウドサービスの紹介ということで「Windows Azure」の情報提供がありました。
ハードに大きな費用をかけず保守の工数も抑えるためにサーバーの仮想化はずいぶん前からやっていたので、もしもこのころに「Windows Azure」 の話を聞いていなければ、社内で仮想サーバを構築し開発を進めることになっていたと思います。

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早速ITSさんに「Windows Azure」が使えるかどうか調べてくれるよう依頼し、提案されたのが「A5(“FUJITSU Cloud PaaS A5 Powered by Windows Azure”の略称、富士通が提供するWindows Azure環境)」でした。
「A5」は、当時まだ日本語化されていなかったマイクロソフトの「Windows Azure」が日本語化されていて使いやすく感じましたし、富士通が機能検証とサポートを担当しているので信頼感がありました。

最終的に、アプリケーション自体はシングルサインオンで利便性を高めるためオンプレミスで構築し、データベースを「A5」上のSQL Azureと連携させることで、100を超えるユーザーや協力会社への配送情報の提供に活用する、という形にしました。

もちろん、まだ登場したばかりの「Windows Azure」を基幹システムに使用することに不安はありました。当時はクラウド自体の事例も少なく、まさに「雲をつかむような」話でしたね。しかし、当社が「A5」導入の先駆けになれば、前例がないぶんメーカーもしっかりサポートしてくれるのではないか、という算段はありました。

また、もともとクライアント環境にソフトを入れてシステムを構築することは否定的に考えていて、まだウェブシステムが今ほど一般的でなかったころから、イントラネットやウェブメールなど拠点の環境に左右されないネットワーク上のサービスをシステム構築に積極的に利用するべきだと思っていました。利便性を考えたらクラウド化は当然の選択だと考えていましたね。

-導入決定から稼働までの間、どんなふうに進められましたか?-

クラウドとの連携を意識した構成はスムーズに決まったのですが、実はアプリケーションの設計には苦労しました。

当社の課題を突き詰めていくと、単純にシステムを新しくしただけではうまくいかないと思っていたので、業務のやりかたをシステムと一緒に変えていく必要がありました。これまでの、業務の結果を入力して伝票を発行する「後処理」中心の体制から、あらかじめ運行計画や作業予定を作成して業務を進めていく「前処理」中心の体制に変えることにしたのですが、一見すると入力作業が増えて負担がかかるような印象になってしまったんです。

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管理部システム課 主任
竹谷 雅貴 様

当然、不満や反対意見が出てきますし、実際に使用する立場になる営業所や拠点の社員に話を聞きに行っても、出てくるのは現在の業務に沿った意見や現行のシステムへの改善要望が中心でした。業務が大きく変わるなんてなかなか想像できませんから、発想が追いつかず前向きな意見が出てこないのです。

また、私達自身も通常の業務と並行しながらの検討では集中できなかったので、思い切って当社とITSの担当者さんとで2泊3日の合宿を2回行ない、要件定義を行ないました。合宿中に各拠点の社員にも来てもらって、業務と切り離した環境でじっくりと話を聞いたり、マイクロソフトに「Windows Azure」について質問したりして、仕様を固めていきました。

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クラウドとの連携を意識した構成はスムーズに決まったのですが、実はアプリケーションの設計には苦労しました。

当初の予定から半年間延期して構築完了した後、5か月間の並行稼働期間を設けましたが、最初は営業所があまり新しいシステムを使ってくれませんでした。システムの入れ替えを進めて行く中で業務も変わるということに、営業所がついてこれていなかったのです。

通常の運送業(宅配便)だと、荷物の運送をすることで儲けが決まるので、荷物が無ければ始まりませんよね。当社のような業務形態の場合、一台の車両を特定のお客様の貸切で運行する契約が多いため、いつどれだけの車両が運行するのかといった予定を把握できれば、売上の予測が可能になります。これがきちんと出来るようになれば、経営計画が立てられるはずなんです。7割近くの車が常に定期運行しているにも関わらず、これまでは「いつどこへ運行したか」 という結果は把握できても、「明日以降、どの車両がどこへ運行する予定か」という情報をデータで取得することができなかったため、経営面での問題になっていたのです。
そこをきちんとシステム化しましょうというのがコンセプトだったんですが、このあらかじめ分かっている項目を入力しておくことが、作業が増えた感覚で受け取られていました。実務的には、それぞれがエクセル等で管理して計画を立てているのに、それを業務として入力しデータ化していくという考え方に切り替えるのに時間がかかっていました。

最終的には、強引ですが期日を決めて現行のシステムを止めることにしました。旧システムから請求書を出せないようにして、新システムで業務をしなくてはならないようにしたんです。そして、今回のシステムは「収支管理の徹底」という目的意識をしっかりと持った設計になっており、これまでの伝票発行のためだけのシステムとはまったく違う、ということをしっかりと社内に伝えました。今までと同じやり方を続けているようではなんのメリットもない、将来的な成長も見込めない。「運送業ってこんなもの」という考え方を変えたかったのです

こうした目的意識をしっかりと伝えることで、やっと真剣に新たな業務体制で回してくれるようになってきました。まだ完全に期待した動きにはなっていませんが、この目的意識にブレはないので、時間はかかってもきちんと使えるようになっていくはずです。

また、ITWさんに作ってもらったウェブシステムの画面が随所に心遣いを感じるものになっていて、感心しました。ウェブの部分は標準的なもので良いと思っていて、使い勝手の部分などでは特に要望はなかったのですが、画面や動作などが以前のシステムと違和感のない作りになっており、期待以上の作り込みをしてもらえました。

導入後の効果

『一度入力したデータを何度も使いまわせる設計にこだわったことで、大きなメリットが生まれた』

-「Windows Azure(A5)」を含めた新業務システムの導入効果はいかがですか?-

システム入れ替えを行なった効果として目に見えるものが出てくるのはまだ少し先ですが、今回の仕組みの中には今後の業務改革を意識した機能をあちこちに仕込んでいるので、順次反映させて効果を出していこうと思っています。運行ダイヤ管理、給与改正、業務ごとの収益、業績グループの仕組みなど、長く使っていけるシステムが構築できました。目的がブレることなく設計しているから、こういう仕組みを作ることが出来たのでと思っています。これだけのシステムを持っている運送業はなかなか無いでしょう。
現在は、社内からの質問も今はまだ操作方法やうまくいかない時の対処法といったものがほとんどです。業務に沿った活用方法や、データの利用に関する要望、意見などといったレベルの質問が出てくれば、業務改善もどんどん進んでいくと思います。

クラウドという仕組みを使うことの利点は多く、経費や負荷の削減、バックアップ管理を任せることができる安心感はもちろん、自社サーバーでは保守やセキュリティの問題で実現が難しかった、ユーザーや協力会社がインターネット経由で取引内容を確認できる仕組みが、クラウドにすることで容易に可能になったのは非常に大きいと感じています。
当社は運送業ですが、恐らくどんな業種の企業であってもクラウドを使うメリットはあると思います。たとえば食品業、スーパーであれば在庫管理の仕組みを作りデータをクラウド上に置いておき、消費者向けにはウェブサイトで「こんな商品を取り扱っています」という情報を公開することで在庫データを使いまわせますよね。基本的にデータは一度入力したものをとことん使いまわすという考え方が重要で、2度も3度もいろいろなところに同じ情報を入れず、クラウドから呼び出して使うことで利用価値が出てくるのです。

最初にしっかりとデータを入力するところが重要なので、そこが導入のハードルにはなる可能性はありますが、一度入力したデータは捨てずに何重にも使っていけます。当社なら、配車のデータがあればそこから業績予測まで出すことができるよう設計している。クラウドを使用するなら、そうやって無駄を省くことができるように設計するべきですね。
1つのデータを必要に応じて活用することができるメリットが分かれば、業種に関係なく導入する利点が見つけられるはずです。

今後の展開

『すべてがかみ合ってデータ分析が出来ることが理想』

-岡崎通運さまの今後の業務課題は何ですか?-

本来なら先に業務を変えてからシステムを変えるほうが良かったのかもしれませんが、それではいつまでたっても進まないと思い、今回はあえて強引にまずシステム側を変えることにしました。結果的には業務を変えていく動きが作れたし、これまでの体制の悪い部分も見えてきたと思います。
ですから、これから力を入れていくのは教育ですね。各営業所の足並みをそろえていくことが今後の当面の課題です。
今の配送業務を変えるための次の手として、運転日報を廃止にしてはどうかと考えています。これまでは運転手が日報で結果の報告をすれば済んでいたのを、運行指示書で回していくようにすれば、ダイヤを意識した業務に変えていかざるを得なくなるので、ダイヤを組み計画を立てていくことが重要になっていくのです。
これまで運転手は決まったルートを覚えて回り報告を出せば済んでいたのが、事前にダイヤを組んで指示書に沿って運行する必要があるため、仕事が増えた印象が強く、不満も出てくるでしょうね。負荷が増えたように感じると思いますが、協力会社さんのダイヤ管理をやってこなかったこと自体が問題なのですから、やらなければいけないことをやるようにするだけです。これをしっかり回していくことで、きっと良い影響が出てくるはずだと思っています。

また、経営面の大きな課題であった予測管理は、早く出来るようになってきました。今はまだ経営陣が独自でたてた予測が優先されていますが、予測データの有効性は目に見えて出てきますから、目標管理がしやすくなるメリットを感じてもらえれば有効活用してくれるでしょう。
これまでも、営業所ごとの売り上げや収支の管理、お客様ごとの売上管理は出来ていました。それが今回のシステムでは、それこそ車一台が一日走ったらいくらの儲けがあるか、といったことまで分かる仕組みは持っているんですね。原価や経費の情報も入ってくるし、給与システムからは人件費の情報も見ることができるので、その日かかった費用も把握できる。当初構想していた、そのような細かな部分の収支が分かるところまでデータ分析を持っていくのが理想です。

-最後に、ITSに期待することをお聞かせください。-

せっかくシステムを作るからには、単なる社内システムに終わらず、やはり当社のお客様にアピールできるようなものにしたいですね。
たとえば宅急便であれば荷物の追跡サービスがあって、あれはお客様にとってとても良いサービスですよね。当社はBtoBなので同じものは求められていないにしろ、目に見える形で何かサービスできるものがないかと考えています。今回の「A5」導入による配送データ提供も、お客様にもメリットがあることが重要でした。

やはり、お客様あっての商売ですからね。お客様目線で業務を考えていきたいと思っています。そんなシステムの構築に、ITSさんもぜひ協力してほしいですね。

ユーザー様プロフィール

会社名 岡崎通運株式会社
設立 1950(昭和25)年8月24日
資本金 4,500万円
社員数 440名(2013年3月末)
年商 91億5,000万円(2013年3月末)
ウェブサイト http://www.okatsu.co.jp/別画面にて開きます

2013年9月取材(記載内容は取材時の情報です)