2018/02/20

平成30年度税制改正大綱について①

1.はじめに

 平成29年12月14日に、平成30年度税制改正大綱が与党から公表されました。今回の税制改正大綱では、近年の働き方の多様化をあまねく応援するため個人の「 基礎控除の引上げ 」が行われるとともに、「 給与所得控除等の見直し 」や、高齢化の進むなか、円滑な代替わりを実現するための「 事業承継税制の特例の創設 」が挙げられています。他にも、法人税については「 所得拡大税制の見直し 」や、「 情報連携投資等の促進 」といった改正により、企業の積極的な賃上げや投資の促進など、昨年に続き、経済の好循環の促しが見込まれています。

 そこで今回は、平成30年度税制改正大綱の中から、トピック性の高い項目のうち、 個人に関わる改正 についてご説明したいと思います。

2.基礎控除の引上げと、給与所得控除等の見直し

(1)基礎控除の引上げ

 所得税は、1月1日から12月31日までの一暦年間における利益部分である「所得」から、個々人の事情を考慮した「所得控除額」を差し引いた価額に対し課税がなされます。所得控除のうち、基礎控除は最低限の生活費を考慮し、税負担軽減のために差し引かれるものです。

 現行の制度では、基礎控除はすべての個人に対し一律38万円とされておりますが、今回の改正大綱により 48万円と10万円引上げ 、さらに高所得者に対しては以下のように段階的に減額される見直しが検討されています。

給与収入額 現行 改正案
2,595万円以下 38万円 48万円
2,595万円超  2,645万円以下 32万円
2,645万円超  2,695万円以下 16万円
2,695万円超 ゼロ円

 給与収入のみの場合 の所得制限で記載しております。給与収入以外の収入がある場合には、上記制限額が異なります。

(2)給与所得控除額の引き下げ

 基礎控除の引上げに伴い、給与所得控除・公的年金等控除が一律10万円引き下げられることとなりました。今回は、給与所得控除について具体的に取り上げます。

 給与所得控除とは、給与収入から必要経費とみなして差し引き、残額を利益部分として所得税を計算するものです。収入金額に応じて概算額が算出されますが、その算出表が以下のように見直しが検討されております。

【現行】

給与収入金額 給与所得控除額
162.5万円以下 65万円
162.5万円超  180万円以下 収入金額×40%
180万円超   360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超   660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超   1,000万円以下 収入金額×10%+120万円
1,000万円超 220万円(上限)

【改正案】

給与収入金額 給与所得控除額
162.5万円以下 55万円
162.5万円超  180万円以下 収入金額×40% - 10万円
180万円超   360万円以下 収入金額×30% + 8万円
360万円超   660万円以下 収入金額×20% + 44万円
660万円超   850万円以下 収入金額×10% + 110万円
850万円超 195万円(上限)

 給与所得控除額の上限額が適用される収入金額が1,000万円から850万円へ引き下げ、その上限額が220万円から195万円となりました。850万円以上の給与収入がある方にとっては増税されることとなりますが、23歳未満の扶養親族や特別障害者控除の対象となる扶養親族等と生計を一にする場合は、850万円を超える部分の10%相当額を加えて控除できるようにし、負担が増えないように調整措置がとられます。

(3)配偶者控除・扶養控除への影響

 基礎控除額の引上げに伴い、各種所得控除にも影響がございます。そのうち、配偶者控除・扶養控除についてご紹介いたします。

 現行の制度では配偶者控除・扶養控除は、所得が38万円以下の方が対象とされております。この金額は基礎控除と同額であることから、所得がゼロならば所得控除が受けられることとなっております。昨年の改正があるまで103万円の壁と表現されていたものは、この38万円に給与所得控除額の65万円を合算した金額でした。今回の改正により、基礎控除の額が48万円となることで、 配偶者控除・扶養控除の所得要件も同様に所得が48万円以下 であることが判定基準となります。

(4)留意点

 今回の税制改正大綱により、所得からマイナスできる基礎控除額が10万円引き上げられましたが、同時に給与所得控除額も10万円引き下げられることとなり給与所得額はプラスに、 結果としてはプラスマイナスゼロ となります。そのため、収入金額から見る基準額は改正前と変わらないこととなります。

 昨年の配偶者特別控除の改正により配偶者の給与収入が150万円以下であれば上限額(38万円)までの所得控除が適用できるようになりました。今回、給与所得控除額及び基礎控除額の改正はございましたが、結果的には金額がシフトしたのみであるため、配偶者自身においては年間の給与所得額が 103万円を超えた場合には所得税が発生 することとなります。また、社会保険の適用基準である130万円の収入基準も未だ改正は行われていないため、 年間収入金額が130万円 (一定の大企業の場合は106万円) を超えた場合には社会保険の加入対象 にもなります。

 なお、当該基礎控除の改正については、2020年分以後の所得税について適用が検討されています。

4.おわりに

 今回は12月14日に公表された平成30年度税制改正大綱の中から、トピック性の高い個人に関わる項目について述べさせていただきました。

 基礎控除については10万円増額という基準に注目されていますが、上述の通り給与の場合は結果として 収入金額に対する最終的な税額に変わりはありません 

 国としては、経済社会の著しい構造変化の中、様々な形で働く人をあまねく応援する「働き方改革」の後押しを目的に、個人所得課税の改革・デフレ脱却・経済再生のために税制面からの改正を行なおうとしているようです。

 執筆者 長谷川 祐哉
汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ税理士法人
代表社員 税理士 長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
企業会計を中心とする深い知識により、顧客との強固な関係を築くのに成功している。
グローバル企業や上場会社及び上場準備会社に関する税務を担当している。