2017/09/15 セミナーレポート

民泊新法(住宅宿泊事業法)と管理会社の対応

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中島綜合法律事務所
弁護士・マンション管理士
中島 亮平氏

民泊新法(住宅宿泊事業法)と管理会社の対応

 2017年6月、住宅宿泊事業法が成立し、マンション管理会社、管理組合にとっても今後大きな変化が予想されます。国土交通省による同法の成立を踏まえたマンション標準管理規約の改正に関する意見公募(パブリックコメント)の結果、規約例が示されました。
「民泊新法とは何か?」についての具体的解説と注意事項の整理、規約改正の内容など、法律上の問題点のご説明をいただきました。

 目次 

第1 民泊新法制定の背景
 1. 法制度の検討の必要性など
 2. 民泊に関する紛争事例
第2 民泊に関する法規制
 1. 旅館業法に基づく民泊
 2. 国家戦略特別区域法に基づく民泊(特区民泊)
第3 住宅宿泊事業法による民泊
 1. 民泊新法のポイント
 2. 民泊新法の仕組み
 3. 他の法規制との比較
第4 マンション標準管理規約の改正
   国土交通省の規約例・コメントの解説
第5 管理会社の対応

民泊新法制定の背景

訪日外国人観光客の増加に対応

 民泊新法(住宅宿泊事業法)制定の背景には訪日外国人観光客の増加などで宿泊施設が不足していることがあります。東京オリンピックも開催されることとなり、今後、旅行者が増えることが予想されますので、宿泊施設の不足に既存の空き住宅・部屋の有効活用で対応しようと、国が民泊サービスを推進する流れになってきました。

民泊に関するトラブルと法規制の整備

 一方、それに伴い、テロや感染症の問題、文化の異なる外国人宿泊者を受け入れることによるトラブル、建物を改造することによる安全性などの問題も弊害として考えられます。既存の旅館業法は1948年に成立した法律ですが、許可制度を採用していることも要因となり、旅館業法に違反する民泊(違法民泊)が増加し、紛争事例も増えています。そこで、民泊についての法制度の整備が検討されてきました。

民泊に関する3種類の法規制

 現状は①旅館業法に基づく民泊、②国家戦略特別区域法に基づく民泊(いわゆる特区民泊)、③2017年6 月に法案が成立した民泊新法に基づく民泊の3 種類があり、民泊に関する法制度が併存しています。現時点においては、民泊新法が制定されることによって①②がなくなるということではなく、メリット・デメリットを考えながら、いずれかを選択するという状況になっています。

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第1 民泊新法制定の背景(講演資料:民泊新法(住宅宿泊事業法)と管理会社の対応より)

第2 民泊に関する法規制

旅館業法に基づく民泊

 旅館業法は、ホテルや旅館を経営するにあたっての許可制など基本的事項を定めた法律ですが、ホテルや旅館のほか、簡易宿所というカテゴリーが設けられています。この簡易宿所というものは、カプセルホテルやユースホテルなど1部屋に多くの人を宿泊させる形態をイメージしていただければいいと思います。

 旅館業法に基づく民泊は都道府県知事(但し、保健所を設置する市又は特別区にあたっては、市長又は区長)の許可を得る必要があります。建築基準法上の用途規制などもあり、住宅をそのまま利用しようとしても用途変更のための建築確認申請などの手続きが必要になったり、住居専用地域で営業できなかったりする問題があります。

 これに加え、都道府県の条例で換気や採光、便所、照明など細かい基準が定められています。こうした要件に合致する施設にしなければならないため、多額の費用がかかるケースもあります。結果として、合法的に民泊に取り組むのは難しい点も違法民泊が増える要因と言われています。

 もっとも、国も旅館業法の規制緩和を進めています。例えば、簡易宿所は客室の延べ床面積が33平方メートル以上という規制がありますが、宿泊者の数が10人未満の場合には3.3平方メートルに宿泊者数をかけた床面積で足りるとしたり、ワンルームマンションなどではフロントの設置義務を緩和したり、規制緩和が進められています。

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第2-① 旅館業法に基づく民泊(講演資料:民泊新法(住宅宿泊事業法)と管理会社の対応より)

国家戦略特別区域法に基づく民泊(いわゆる特区民泊)

 国家戦略特別区域法という法律が定められ、2014年4月から順次施行されています。旅館業法の特例を設けて、民泊ができる特区をつくり、その区域で定められた要件を満たす事業を認める制度です。例えば、羽田空港がある東京都大田区は、条例やガイドラインを制定し、特区民泊を推進しています。2017年8 月時点で確認したところ、大田区では40箇所以上の民泊施設が認定されています。

 国家戦略特別区域法に基づく民泊にも問題点があります。第1に、滞在者の施設使用期間(宿泊日数)に制限があり、3日(宿泊日数2泊3日)以上で10日(宿泊日数9泊10日)までの範囲内で条例が決めた期間になっています。現時点で、大田区においては6泊7日以上の宿泊日数制限がありますが、大阪府や大阪市では条例改正により2泊3日以上とされています。

 第2に、どの地方公共団体でもできるわけではありません。現時点では大田区、大阪府、大阪市、北九州市と、確認できるのは4カ所だけです。ごく限られた一部の範囲内でしか、この特区民泊という制度を利用できないという問題点があるわけです。

 第3に、1部屋の床面積が25平方メートル以上という制限が規定されています。ワンルームマンションの場合、25平方メートル未満の部屋がかなりあると思いますが、こうした部屋で利用できないという問題点もあります。

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第2-② 国家戦略特別区域法に基づく民泊(特区民泊)(講演資料:民泊新法(住宅宿泊事業法)と管理会社の対応より)

民泊新法に基づく民泊

 民泊新法の正式名称は、住宅宿泊事業法とされています。住宅宿泊事業とは宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業で、宿泊させる日数として1年間で180日を超えないものと定義されています。無料で部屋を貸す場合は対象になりませんし、単発的に宿泊させることも事業とはいえません。法律の目的は観光客の宿泊需要に対応し、観光客の来訪・滞在を促進することです。特徴的なのは事業者の登録制・届出制を採用した点になります。

 民泊新法の条文を確認しますと、政令や省令(国土交通省令、厚生労働省令など)で定めるとする規定があります。例えば、民泊施設の衛生面の確保に関する措置は厚生労働省令、施設の安全性の確保は国土交通省令で定めるなどの規定が見られますので、今後、確認していく必要があります。

民泊新法の公布と届出の開始

 2017年6月に法案が成立、同年6月16日に公布されました。法案は1年以内に施行されますので、遅くとも2018年6月には施行の見通しです。住宅宿泊事業を行うためには届出が必要ですが、この届出手続の規定の施行は公布日から9カ月以内とされています。したがって、遅くとも2018年3月15日までに住宅宿泊事業法の届出が開始されることに注意が必要です。

第3 住宅宿泊事業法による民泊

民泊新法のポイント

 年間営業日数の上限が180日とされているのが特徴です。住宅を短期間利用して宿泊させたいケースだと利用しやすいかもしれませんが、年間通して営業を行いたい事業者には不向きな面があります。また、ホテルや旅館と異なり、住居専用地域での営業の制限も確認できませんし、特区民泊のような宿泊日数制限も法律では規定されていません。

 また、旅館業法と異なり、住宅宿泊事業者による届出制が採用されました。一般的には、許可制に比べるとゆるやかな制度ということになります。

 民泊新法では、家主が一緒に滞在するホームステイのような家主居住型民泊、家主が一緒に宿泊せず、ただ利用者のみが宿泊する家主不在型民泊の2つの類型があります。家主がいない場合、家主の監督機能が働かず、トラブルが生じることが予測されるため、住宅宿泊管理業者への管理委託が義務づけられています。住宅宿泊管理業者は登録制度で、国土交通大臣の監督を受けます。名義貸しや全部再委託の禁止等も定められています。

 住宅宿泊仲介業者の観光庁長官への登録制度もスタートしました。Airbnbなどインターネットなどで仲介する業者を想定しています。住宅宿泊仲介業者を登録させることで、住宅宿泊仲介業者を監督し、無登録の業者を排除することが目的とされています。

民泊新法と他の法規制との比較

 民泊新法では届出制が採用され、旅館業法など他の法規制より、ゆるやかになったと思われるかもしれませんが、政令や省令、条例などが制定されていない段階では、まだ、全体像は明らかではありません。政令、省令等の内容によっては利用しにくい制度になる可能性もあります。

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第3-③ 民泊新法の他の法規制との比較(講演資料:民泊新法(住宅宿泊事業法)と管理会社の対応より)

第4 マンション標準管理規約の改正

マンション標準管理規約の改正

 民泊新法の成立を踏まえ、2017年8月29日、国土交通省によりマンション標準管理規約の改正が公表されました。下線部分が改正によって加わった部分です。(ア)は区分所有者が民泊を可能とするマンションの管理規約、(イ)は民泊を禁止するマンションの管理規約です。コメント欄を読みますと、民泊を禁止する場合、従前の第12条第1 項の規定のみでは、解釈上民泊新法による民泊を規制しきれない懸念があるので、同条第2項で明確に民泊としての使用を禁じたのではないかと考えられます。

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第4 マンション標準管理規約の改正(平成29年8月29日国土交通省)(講演資料:民泊新法(住宅宿泊事業法)と管理会社の対応より)

標準規約の広告禁止の例、家主居住型の民泊のみ可能とする例

 民泊を禁止する前段階として、そもそも広告などを掲載すること自体を禁止する規定例、家主が居住しており一部を民泊に供することが許されている際の規定例です。

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第4 マンション標準管理規約の改正(平成29年8月29日国土交通省)(講演資料:民泊新法(住宅宿泊事業法)と管理会社の対応より)

新築マンションを分譲する場合の例等

 分譲段階では管理組合は機能しておらず、分譲後、組合が実質的に機能し始めてから民泊の可否を議論することになります。分譲の際の原始規約などに使用細則で民泊が可能かどうかを定めることができるとしています。また、パブリックコメントに関しては、規約改正が間に合わない場合であっても、管理組合の総会・理事会決議を含め、民泊を禁止する方針が決定されていないことについて、届出の際に確認する予定であるとの方針も示されています。

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第4 マンション標準管理規約の改正(平成29年8月29日国土交通省)(講演資料:民泊新法(住宅宿泊事業法)と管理会社の対応より)

第5 管理会社の対応

管理会社の対応は?

 民泊に関しては、管理組合がどのような考え方や方針であるのかの確認が出発点です。民泊を禁止したいということであれば、管理規約に民泊の禁止規定が入っているかどうかを確認することになります。禁止されているのであれば、民泊が行われていないことを監視することになります。解釈の問題はありますが、民泊新法による民泊を禁止したいということであれば、管理規約で民泊を禁止しておくのが無難といえるでしょう。

 また、管理規約の改正が間に合わないケースでも、国は、民泊新法に基づく届出があった際には民泊を禁止する旨の管理規約がないことを確認する見通しですので、理事会決議などで方針を決めておくのも一案といえるでしょう。

マンション管理組合が民泊を許容した場合の注意事項

 民泊を許容する場合、住宅宿泊事業者、住宅宿泊管理業者が、安全性の管理や衛生面の確保にあたることになります。家屋の改造や騒音、ゴミ出しなどのルールづくりが必要になってきます。

 消防法の問題は無視できないと考えています。民泊を許容する場合、新たに消防設備を設けないといけないケースも出てきます。特区民泊の事例で、消防法で消防設備を共用部分に設置しないといけないことが判明し、なかなか進まないケースも実際にあるようです。共用部分の変更には総会決議が必要ですが、大規模な変更工事になると、総会で4分の3 以上の賛成が求められるケースも生じてくる可能性があります。

 また、ゴミの問題もあります。例えば、特区民泊の場合は事業系のゴミとして取り扱われており、一般用のゴミとは処理方法が違います。分別のためにゴミ置場などを別に設けなくてはいけないという話が出てくるかもしれません。共用部分にゴミ置場を設置するなどとなると、共用部分の変更ということになり、総会決議をとらないといけないケースも出てくるかと思います。民泊新法に関する細かいルールは、今後、政令や省令などで定められることになりますから注意が必要となります。

 さらに、マンション管理業者と住宅宿泊事業者等の業務の区別のつかない宿泊者によって、マンションの管理事務所に様々なトラブルが持ち込まれたり、本来は民泊事業者が対応しなければならない業務について、クレームがある可能性もあります。民泊事業者が対応しなければならない業務と分譲マンションの管理会社の業務の区別も必要になってくるかと思います。民泊を許容する場合、慎重な判断が要求されるといえるでしょう。

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中島 亮平 氏

弁護士・マンション管理士、NPO集合住宅改善センター会員。マンション管理士の資格を保有し、マンション問題をはじめとした不動産に関する法律問題を得意としています。


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