2017/10/17 セミナーレポート

障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応について

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全国手をつなぐ育成会連合会
統括
田中正博氏

障害者の地域生活を支援し、多様なニーズにきめ細かく対応

 2016年5月、「障害者総合支援法・児童福祉法」の一部が改正され、障害者が自らの望む地域生活を営むことができるよう、「生活」「就労」に対する支援の一層の充実や高齢障害者による介護保険サービスの円滑な利用を促進するための見直しが行われました。これにより、ニーズの多様化にきめ細かく対応するための施策やサービスの質の確保・向上を図るための環境整備などが行われます。
 常時介護だけでなく、「日常的」に「支援」を要する障害者に対する支援も実施されます。重度包括支援は家族同居での利用も検討されており、重度訪問介護は入院中でも利用可能となりました。地域の包括支援センターと、それにつながるさまざまな地域のサービスについてご紹介いただきました。

 目次 

総合支援法3年後の見直し
 -「障害者総合支援法・児童福祉法」の一部を改正
 -地域生活を支援する新たなサービス(自立生活援助)の創設
 -就労定着に向けた支援を行う新たなサービス(就労定着支援)の創設
 -重度訪問介護の訪問先の拡大
 -法改正等の概要とポイント:障害児支援
 -居宅訪問により児童発達支援を提供するサービスの創設
 -放課後等デイサービスの見直しについて
 -障害福祉サービス等の情報公表制度の創設
高齢障がい者と介護保険の関係
 -高齢障害者と介護保険との関係
 -障害福祉サービスと介護保険サービスの関係
 -「共生型」ってなんですか?
 -地域生活に必要なサービスのイメージ
 -意思決定支援ガイドラインの概要
 -「わたしの希望するくらしシート」(岩手県障害福祉課作成)
 -サービス等利用計画と個別支援計画の関係
 -支給決定プロセスの見直し等
 -地域移行支援と地域定着支援
 -地域における成年後見制度利用促進体制の構築
 -地域自立支援協議会が設けられる
 -相談支援専門員の資質の向上と主任相談支援専門員
 -地域生活支援拠点等の整備について
 -地域生活支援拠点等整備推進モデル事業一覧

総合支援法3年後の見直し

「障害者総合支援法・児童福祉法」の一部を改正

 2016年5月、「障害者総合支援法・児童福祉法」の一部が改正されました。今回の法改正では障害者が自らの望む地域生活を営むことができるよう、「生活」「就労」に対する支援の一層の充実や高齢障害者による介護保険サービスの円滑な利用を促進するための見直しが行われ、ニーズの多様化にきめ細かく対応するための施策やサービスの質の確保・向上を図るための環境整備などが行われます。

 常時介護だけでなく、「日常的」に「支援」を要する障害者に対する支援も実施されます。重度包括支援は家族同居での利用も検討されており、重度訪問介護は入院中でも利用可能となりました。

地域生活を支援する新たなサービス(自立生活援助)の創設

 地域で単身生活する方への定期巡回型サービスが「自立生活援助」というかたちで創設されます。障害者支援施設やグループホームなどを利用していた方だけでなく、家族による支援が難しくなった障害者で、ひとり暮らしを希望する人が対象です。定期的に居宅を訪問し、食事、洗濯、掃除などに課題はないか、公共料金や家賃に滞納はないかといったことを確認し、必要な助言や医療機関との連絡・調整などを行います。

 サービスの利用期間は1年間ですが、必要性が認められれば更新は可能で、計画相談を用いて市町村によく理解してもらう必要があります。

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地域生活を支援する新たなサービス(自立生活援助)の創設(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

就労定着に向けた支援を行う新たなサービス(就労定着支援)の創設

 就労に伴う生活面の課題に対応できるよう、事業所や家族との連絡・調整などの支援を一定の期間行うサービスも創設されます。遅刻や欠勤の増加、業務中の居眠り、身だしなみの乱れ、薬の飲み忘れといった生活面の課題を把握し、必要な支援を行ったり、企業や障害者就業・生活支援センター、医療機関などとの連絡調整にあたったりします。対象は生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援などを利用して一般就労した障害者です。

 この支援をどこが担うのかは、就労に送りこんだ事業所が中心となります。利用期間は3年間で、きちんと機能すれば、生活面での不安定な状況の改善が図れます。

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就労定着に向けた支援を行う新たなサービス(就労定着支援)の創設(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

重度訪問介護の訪問先の拡大

 最重度の障害者が病院に入院中は医療法上の建前では看護師による24時間完全看護を受けられることになっていました。実際は看護師では対応しきれない場合が多々ありました。そこで入院中の医療機関でも利用者の状態を、よく知っているヘルパーを引き続き利用できるようになりました。

 ただし、普段から重度訪問介護を利用している人で、最重度の障害支援区分6の人という厳しい条件が課されます。

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重度訪問介護の訪問先の拡大(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

法改正等の概要とポイント:障害児支援

 子どもについては基本的な枠組みは大きくは変わりません。児童養護施設や乳児院などに入所している子どもも訪問型サービスが受けられるようになりました(保育所等訪問支援の派遣先拡大)。保育所や幼稚園などで発達の遅れや課題を見出した場合、これまでも専門家を送り込むことが行われてきましたが、そのサービスを児童養護施設や乳児院にも広げます。

居宅訪問により児童発達支援を提供するサービスの創設

 障害児の自宅を訪問する発達支援サービスも新設されました(居宅訪問型児童発達支援)。対象は医療ケアを要する子や重い疾病のために感染症にかかる恐れがある子らで、外出が著しく困難な子に発達支援を受ける機会を提供しようというものです。

 報酬改定のヒアリングでは、さまざまな団体から医療ケアを要する子どもが取りこぼされているとの意見が続出、新たにスポットライトがあてられました。

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居宅訪問により児童発達支援を提供するサービスの創設(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

放課後等デイサービスの見直しについて

 就学前の児童発達支援も需要に応じて伸びが著しく、放課後デイサービスも右肩上がりに増えています。ただ、支援の質が低い事業所が増えているといった指摘もあり、支援内容の適正化と質の向上が喫緊の課題となっていました。

 特に放課後デイサービスはガイドラインをつくり、そのガイドラインに沿った運営が求められます。医療ケアを要する人や行動障害の人を受け入れている場合は報酬を高くし、いわゆる預かり型で、療育の視点に欠け遊ばせているだけの場合は報酬を下げる方向で検討していると聞いています。

 管理責任者の資格要件として保育所等の児童福祉に関する経験が追加され、3年以上の障害児・児童・障害者支援の経験が必須化されました。児童指導員または保育士を半数以上配置しなければなりません。

障害福祉サービス等の情報公表制度の創設

 利用者が、それぞれのニーズに応じて、サービスを提供する事業者を選択できるよう、情報公表制度の創設も織り込まれました。食事提供体制加算は社会保障審議会では廃止の方向で了解されました。事業者団体としては非常に気になる点で、今後の議論に注目したいと思います。

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障害福祉サービス等の情報公表制度の創設(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

高齢障がい者と介護保険の関係

高齢障がい者と介護保険との関係

 最大のポイントは現行の介護保険制度を優先することが前提となっていることです。通所サービスについては障害福祉サービス事業所が介護サービスを使える仕組みを検討してはどうかと、共生型類型が新設されました。

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高齢障がい者と介護保険との関係(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

障害福祉サービスと介護保険サービスの関係

 介護保険サービスは現在1割負担が原則で、障害福祉サービスを受けていた人にとっては負担増になります。そこで、高齢障害者に対しては特例を設け、お金が戻ってくる仕組みを整えました(現在の基準のままの負担とする)。

 問題になったのは65歳に達する前に5年間の障害福祉サービスの利用実績があることという対象者の要件でした。知的障害の人たちで60歳以上まで企業などで働いていた人が、この対象からこぼれおちることがわかり、数は少ないのですが、なんらかの救済策が必要です。

「共生型」ってなんですか?

 定員40人の生活介護事業所を例にとると、従来は原則として介護保険の事業を併設することはできませんでした。ところが、法改正で40人のうち例えば5人を介護保険デイサービスの対象として位置づけることが可能になりました。「基準該当」として市町村に認めてもらえれば、その人は介護保険からお金が出ることになります。

 逆に介護の事業所でも障害者を受け入れることを可能にする制度改正も行われます。

 過疎の町で高齢者サービスしかなく、障害者は別の市町村に通わないといけないとすると、地域包括の仕組みがより整備されれば医療的なケアを要する人は高齢者サービスの仕組みで受けてもらったほうがいいかもしれません。

 2018年度の介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定で共生型の仕組みが始まります。国は2020年代初頭からこの考え方に基づく「わが事まる事」の取り組みを全国展開していく方向性のようです。

地域生活に必要なサービスのイメージ

 子どもから大人になるまで幼児・学齢期、卒業、社会参加、家族の高齢化、ひとり暮らし、介護保険年齢といったライフステージがあります。ステージによって求められるサービスは異なります。家族同居、ケア・グループホーム、ひとり暮らしという住まいの形態の違いによっても、さまざまなニーズがあります。

 まずは「意思決定支援」ということを踏まえて、相談員とサービス管理責任者は2018年度からガイドラインに沿った対応が求められます。

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地域生活に必要なサービスのイメージ(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

意思決定支援ガイドラインの概要

 以前から「自己決定」という表現で取り組む事業所はありました。今回、「意思決定支援ガイドライン」が示されたことで、今まで取り組んでいなかった事業所、取り組んだがうまくいかなかった事業所も意思決定支援を避けるわけにはいかなくなりました。

 その際、重要なのは情報の伝達です。本人が決められるような環境を用意するのが意思決定支援です。特に、言葉を持たないコミュニケーション障害の方には時間と労力がかかります。障害が重い方の意思決定支援は色々な本人のエピソードを寄せ集めて、断片的ではなく総合的にモザイクを繋いで構成する本人のライフストーリーづくりにも、つながります。

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意思決定支援ガイドラインの概要(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

「わたしの希望するくらしシート」(岩手県障害福祉課作成)

 意思決定支援を行うためには、さまざまな環境を調整しなければなりません。意思決定支援責任者を用意した上で計画書を作成し、意思決定支援会議にかけます。意思決定支援については4つの関わりが重要です。①支援者との安心感・共感に基づく信頼関係、②わかりやすい情報提供、③説得ではなく納得、④チームの支援の4つです。計画を立てる際には、まずは希望する暮らしに対する見通しを本人に持ってもらい、支援する側も共有することが大事です。

サービス等利用計画と個別支援計画の関係

 国がつくった「サービス等利用計画」は計画作成前(アセスメント)に本人の心身の状況、置かれている環境、日常生活の状況、現に受けているサービスに加えて、サービス利用の意向などを確認することになっています。それを踏まえてサービス等利用計画では生活に対する見通しを立てていきます。それに基づいて事業所としてできることを計画したものが個別支援計画です。

支給決定プロセスの見直し等

 支給決定プロセスには一定期間ごとのモニタリングが組み込まれています。障害者支援センターとしては基本的な役割をサービス等利用計画を中心に組み立てながら、望ましい状態がどこにあるのかを設定し、本人の実際の暮らしぶりを確認。望ましい状態と実際との差を、どのように埋めていくかを考え、手を打っていくのが役割のひとつではないかと思います。

 地域の中で本人の暮らしを主体的に整えるためのライフプランをサービス等利用計画でつくることになります。さまざまな地域資源を活用することで、たとえば宿泊型自立訓練や訪問型自立訓練などの訓練事業も可能になります。

地域移行支援と地域定着支援

 地域定着支援ということで、家庭内での緊急時の支援が見込まれない人への対応も可能になりました。住宅入居等支援事業(居住サポート事業)と地域移行のための安心生活支援事業があり、これに自立生活援助を加えると、組み合わせて利用する事が可能となり自立のための環境整備にも使えます。

地域における成年後見制度利用促進体制の構築

 成年後見制度も見直しが進められています。特に法人後見には注目が集まっており、普段、サービスを提供している事業所(社会福祉法人)、あるいは事業所の職員を後見人と立てられるような方向で検討していくことになっています。

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地域における成年後見制度利用促進体制の構築(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

地域自立支援協議会が設けられる

 加えて、地域でのサービス調整を担う地域自立支援協議会が設けられます。障害者自立支援法に基づく公的サービス、自立支援法以外の公的サービス、民間によるサービスを調整するほか、緊急時の対応や虐待・権利侵害を発見した際の対応なども担います。

相談支援専門員の資質の向上と主任相談支援専門員

 また、事業所や地域で指導的役割を担う主任相談支援専門員(仮称)の育成も決まりました。相談支援専門員と介護支援専門員も含めて、地域で障害者を支える体制が非常に重要になってきます。

地域生活支援拠点等の整備について

 地域生活支援拠点等の整備は基本的にはショートステイの不足を、どのように改善するのかという問題意識から始まりました。整備手法としては、いろいろな機能を複数の拠点で分ける面的整備型と複数の機能を1カ所に集約する多機能拠点整備型などがあります。地域の実情に応じた整備手法を検討していけばいいと思います。

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地域生活支援拠点等の整備について(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)

地域生活支援拠点等整備推進モデル事業一覧

 京都市は障害者地域生活支援センターを設置する多機能拠点整備型、東京・大田区は基幹相談支援センターを中心とした面的整備型、栃木県佐野市のような複数の拠点を中心にした両者の中間のような連携型もあります。地域の包括支援センターと、それにつながるさまざまな地域のサービス。地域の住民が他人事ではなく、「我が事」として「丸ごと」受け止める体制づくりを支援していきたいと思います。

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地域生活支援拠点等整備推進モデル事業一覧(講演資料:障害者福祉法改正、報酬改定の方向と事業者の対応についてより)


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