2017/10/17 セミナーレポート

高齢者福祉平成30年度制度改正セミナー

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シルバー産業新聞
泰江 和也氏

改正介護保険法の柱は「地域包括ケアの深化」と「制度の持続性」

 改正介護保険法は2017年5月の通常国会で成立。6月に公布されました。厚生労働省が2本の柱として掲げたのが「地域包括ケアの深化」と「制度の持続可能性を高めること」です。大きく5つのポイントがあります。
 2018年度法改正、報酬改定の方向、最新情報や、人材確保、混合介護など、そのほかの注目トピックスについてご紹介いただきました。

 目次 

1.次期法改正・報酬改定の動向
 -自立支援、重度化予防にインセンティブ
 -新たな施設サービス「介護医療院」がスタート
 -介護保険に共生型サービスを創設
 -利用者3割負担の導入
 -介護納付金への総報酬割の導入
 -サービス供給への保険者の関与
 -居宅介護支援事業所の指定権限の移譲
 -改正の施行スケジュール
 -介護報酬改定のおおまかなスケジュール
 -介護老人福祉施設の論点:プライバシー配慮と個々のニーズに応じたケアの推進
 -介護老人福祉施設の論点:特養の医療対応強化
 -居宅介護:特定事業所集中減算の見直し
 -訪問介護:生活援助の基準・報酬引き下げ
 -リハ職による訪問看護(訪看7)の見直し
 -定期巡回・随時対応型訪問介護看護の論点
 -小規模多機能、看護小規模多機能の論点
 -認知症グループホームの医療対応強化
 -認知症関連の加算
 -訪問リハビリテーションの論点
 -在宅復帰・在宅支援機能の評価
 -口腔・栄養関係の論点
 -福祉用具貸与の論点
 -通所介護の論点
2.注目トピックス
 -外国人介護人材の要件
 -ロボット、ICT、センサー活用の評価

1.次期法改正・報酬改定の動向

自立支援、重度化予防にインセンティブ

 1点目は新しい取り組みとして、自治体の自立支援や重度化防止の取り組みに財政的インセンティブ、つまり、お金をつけることになりました。国から地域の課題を分析するツールを配布し、各自治体が地域の課題を分析します。

 2018年4月から第7期の介護保険事業計画が始まります。事業計画、事業支援計画のそれぞれに具体的な自立支援、重度化防止の取り組みの内容、目標を書き込みます。例えば、地域ケアの会議に地域の職能団体と連携し、リハビリテーション職などの専門職を派遣するといった内容が想定されます。指標によって実績を評価し、優れた実績を残したところに交付金が支払われます。ただ、具体的に何を指標とするかは、まだ決まっていませんが、要介護状態の維持・改善度合いや地域ケア会議の開催状況など、アウトプットとプロセスを組み合わせた評価指標を検討しています。

新たな施設サービス「介護医療院」がスタート

 2 点目は介護保険の新しい施設サービスとして「介護医療院」が創設されます。設置根拠は介護保険法で、要介護高齢者の長期療養・生活施設です。

 現在、介護保険の施設サービスには特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養病床の3 つがあり、介護療養病床は廃止が決まっていましたが、国が描くような転換が進んでおらず、今も5.9万床ほど残っています。介護医療院は介護療養病床の受け皿として新設され、2018年4月からスタートします。それに伴い、介護療養病床の廃止期限も6年間再延長され、この期間に転換が進んでいくものと考えられます。

 ポイントは医療保険の医療療養病床から介護医療院に転換するケースを見込んでいることです。基準緩和された25対1の医療療養病床も介護療養病床同様、廃止が見込まれます。医療療養病床の選択肢は大きく2つあり、配置を厚くして医療保険に留まるか、介護医療院へ転換するのかを決めなければいけません。もし多くが介護医療院へ転換すると、介護保険財政を圧迫することになり、介護側からはすでに懸念の声があがっています。

介護保険に共生型サービスを創設

 3点目は介護保険と障害者福祉の両制度に新しいサービス、共生型サービスが創設されます、イメージとしては1つの事業所で高齢者と障害児者の双方にサービスを提供する事業所です。現行でも両制度それぞれの指定を受けていれば、両者にサービスを提供することは可能ですが、今回のポイントは一方の指定を受けている事業所であれば、他方の指定が受けやすくなることです。

 創設の背景は2点あります。ひとつは障害者の高齢化です。ずっと障害福祉のサービスを受けてきた人も65歳になると介護保険が優先適用されます。なるべく使い慣れた事業所でサービスを受け続けられるようにということです。もうひとつは福祉サービスの人材不足です。なるべく効率的に運用してもらおうという人材活用の面からサービスが創設されました。

利用者3割負担の導入

 4点目は介護保険の利用者負担割合は原則1割でしたが、2015年8月から2割負担が導入され、今回の法改正で3割負担も創設されました(2018年8月から実施)。所得に応じて1割、2割、3割と3段階の負担割合が設定されます。

 今、2割負担の対象者は45万人。厚労省の試算では3割負担に該当するのはおよそ3%で12万人とされています。法律に3割負担が明記されたので、今後、340万円、280万円というラインの引き下げには国会審議は必要ありません。国会でも政省令の改正でそのラインを引き下げる際は、慎重に検討するよう、附帯決議が付けられました。

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介護納付金への総報酬割の導入

 5点目は第2号被保険者の保険料が従来の頭割りから収入に応じた負担に変わります。今年8月より、段階的に導入されており、2020年度までに全面実施されます。

サービス供給への保険者の関与

 今回の法改正以外の話ですが、2016年4月から定員18人以下の小規模なデイサービスは居宅サービスから地域密着型サービスに移りました。その地域密着型通所介護は2018年4月から市町村が指定を拒否できる仕組みが導入されます。要するに増え過ぎたので、今後は保険者が計画に基づき、参入を規制できるようになります。

居宅介護支援事業所の指定権限の移譲

 居宅介護支援事業所の指定権限も2018年4月以降、都道府県から市町村に移譲されます。

改正の施行スケジュール

 2018年4月には介護報酬改定や地域密着型通所介護の指定拒否の仕組みの導入が控えています。改正事項をスケジュール順に並べましたので、参考にしてください。

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介護報酬改定のおおまかなスケジュール

 厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会で2017年4月から介護報酬改定の議論が進められています。例年、年末に取りまとめて、1~2月に具体的な新報酬が示され、4月から新たな報酬・基準でスタートするスケジュールになっています。具体的な議論は11月以降からですが、ここでは一巡目の審議で論点になっていることを、いくつかご紹介します。

介護老人福祉施設の論点:プライバシー配慮と個々のニーズに応じたケアの推進

 特養は厚生労働省から論点が4つ示されています。まず介護老人福祉施設の入所者のプライバシーに配慮した上で、一人ひとりのニーズに即したケアを実現するために、どのような方策が考えられるかというものです。多床室の場合、仕切りなどでプライバシーに配慮し、手厚い体制でのケアを実施している場合、準ユニットケア加算が設けられています。こうした多床室であってもプライバシーに配慮し、ユニットケアに近い形でのサービス提供を推進したい考えです。

介護老人福祉施設の論点:特養の医療対応強化

 今後、病院からの早期退院や医療ニーズを抱えた方を地域が受け止めていかなければならないということで、特養の医療介護強化も論点に掲げられています。厚生労働省によると、配置医師の95%以上が非常勤で、特養の4割以上が夜間などの急変のとき、頼るべき外部の医療機関・医師がおらず、さらに9割の特養が看護職員の夜勤・当直体制は原則ないとしています。検討会では既存の訪問看護ステーションなど外部の事業所を利用できないかなどの意見があがっています。

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居宅介護:特定事業所集中減算の見直し

 居宅介護支援事業所では特定事業所集中減算の適用を受けている事業所が3000近くあります。1つの事業所に8割を超えて集中している場合、減算が適用されるのですが、ケアマネジメントの公正中立を果たす目的に沿っていないとの指摘を受け、今、廃止を含めて見直しが検討されています。ただ、公正中立を担保するための効果的な代替案も見通せず、二巡目の議論でどのような具体案が厚労省より示されるのか注目が集まっています。

訪問介護:生活援助の基準・報酬引き下げ

 訪問介護は生活援助の基準・報酬の引き下げが大きな論点になっています。生活援助を中心に訪問介護を行う場合、現行の資格要件など人員基準を緩和し、それに応じて報酬も引き下げようというものです。

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リハ職による訪問看護(訪看7)の見直し

 訪問看護を提供する訪問看護サービスの中にはリハ職が訪問する、いわゆる訪看7があります。訪問看護の3割に達していますが、それだけ増えているにもかかわらず、看護職とリハ職の連絡や情報共有がまったくないとするところも少数ですがあります。そこで、例えば、計画を作成するとき、リハ職と看護職員が共同で作成するなど連携を深めていく仕組みが検討されています。

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定期巡回・随時対応型訪問介護看護の論点

 定期巡回・随時対応型訪問介護看護や夜間対応型訪問介護を、さらに普及させたいということで、例えば、日中のオペレーターと随時訪問員の兼務を認め、効率化を図っていく緩和などが検討されています。

認知症グループホームの医療対応強化

 グループホームを退所する理由として、「医療ニーズの増加」「長期入院が多い」などが多く挙がっています。胃ろうや経管栄養に対応不可などがあります。胃ろうや経管栄養に対応できないグループホームが7割あり、特養と同様、訪問介護ステーションなどの外部サービスを利用してはどうかという意見が出ています。

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認知症関連の加算

 認知症関連の加算はサービス別に多岐にわたって設定されています。今後、認知症の方がさらに増えていくことは間違いないので、ある程度、整理したらどうかという議論があります。

訪問リハビリテーションの論点

 訪問リハでは、退院後14日未満に訪問リハを導入した場合、14日以降の導入よりもADLが向上したデータが事務局より示され、早期導入の方策が論点の一つとなっています。例えば、ケアマネージャーがかかりつけ医に訪問リハの導入の要否を仰ぐ目安をつくってはどうか、入院中のリハ職訪問を推進する仕組みの創設などが意見として挙がっています。

在宅復帰・在宅支援機能の評価

 老健(介護老人保健施設)では在宅復帰率やベッド回転率が高い、在宅強化型や在宅復帰・在宅療養支援機能加算を算定する「加算型」が増加しています。ただ、ベッド稼働率では従来型より悪く、経営判断上、従来型に残る事業者もあります。老健の性格上、より在宅復帰に取り組んでいるところのほうが収支が合わないのは良くないので、この辺の是正を図ることが論点になっています。

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口腔・栄養関係の論点

 前回の改定から厚労省は口腔や栄養関係の重要性を訴えています。前回の見直しで、施設サービスの経口維持加算(Ⅰ)の算定要件を見直し、特養や老健では算定数が大幅に伸びました。今回は入所者数に応じた栄養士の配置や在宅での栄養改善の取組み推進などが検討されています。

通所介護の論点

 通通所介護全体として一番のポイントは通所介護と通所リハの役割分担です。通所リハの利用によるADL(日常生活動作)の変化を見ると、厚労省の説明によれば、1回のサービス提供時間が長いほど改善しているわけではないということでした。例えば、時間区分を通所介護と通所リハビリで特徴づけてはどうかといった提案があります。

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2.注目トピックス

外国人介護人材の要件

 アラカルト的に何点かにしぼってお話しします。2017年11月から外国人技能実習制度を使った外国人介護人材の受け入れがスタートします。実習生には日本語能力や入国後の講習が要件として設定されました。基本的には就労6カ月以降、介護報酬の人員基準としてカウントできることが示されました。

ロボット、ICT、センサー活用の評価

 ロボット、ICT、センサーを活用している事業所に対する報酬や人員基準のあり方などのインセンティブ付与も論点として掲げられています。これは政府の未来投資会議で意見があがり、現在、厚労省の介護給付費分科会で論点の一つとなっています。介護ロボットやICTなどを活用し、サービスの質を下げず、生産性を高めている事業所には報酬の上乗せや人員基準の緩和を検討しようというものです。インセンティブ云々はともかく、労働環境を改善し、利用者と向き合う時間を増やしていくことは業界全体として進めていくべきことだと思います。


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