2018/05/21

IT導入補助金について

1.はじめに

 国の政策目的を達成するためには、多くの事業者にその目的にあった事業を取り組んでもらうことが重要です。そのような目的に合致した事業に対して実施のサポートをするため、日本では様々な補助金制度が設けられています。
 今回取り上げる「IT導入補助金」は ITツールの導入による業務効率化・売上げアップ を目指しており、 生産性の向上 を達成することを一つの目的としています。
 この制度は、ITツールの導入を受ける側と、ITツールを提供する側の両側面を対象としたものですが、今回は導入を受ける側についてご紹介いたします。

2.IT導入補助金とは

 ITツールの導入を受ける側=「補助事業者」はIT導入支援事業者によって申請からITツールの導入・報告まで支援を受けることができます。
 この補助金には、以下のような特徴があります。

  • ①多彩なITツールの中から 自社のニーズに合わせてツールを選べる 

    様々な課題・ニーズにあわせたITツールが、IT導入支援事業者によって登録されます。昨年は20,000件をこえる登録がありました(組み合わせ含む)。

  •  IT導入支援事業者が申請をサポート 

    補助金の交付申請から実績報告などの煩雑な申請・手続について、IT導入支援事業者によるサポートを受けられます。必要な情報を取りまとめてもらえるので、初めて補助金を申請する方でも安心です。

 昨年にも公募があったこの補助金制度は、今年の予算において前年の100億円から500億円と割当額が増額しました。予算増額の一方、補助金額の上限は100万円から50万円に減額となりましたが、その分、補助を受けられる中小企業・小規模事業者の数が昨年に比べ約10倍になることが想定されます。そのため、一層多くの中小企業・小規模事業者が受けることのできる“使える補助金”としても話題となっています。
 この補助金自体は、ソフトウェア・クラウド利用費・導入関連経費等の1/2以内の部分に対し交付されます。限度額は下限が15万円、上限が50万円となりますので、実際の支出額として利用・導入費30~100万円の部分が対象となります。

補助対象経費区分 ソフトウェア・クラウド利用費・導入関連経費等
補助率 1/2以内
補助上限額・下限額 上限額:50万円
下限額:15万円

 なお、この制度で使われる用語としての「ITツール」とは、 新規に導入 するソフトウェア・クラウドサービス等のことを指します。 申請・交付決定前に契約し導入され発生した経費は補助対象となりません ので、補助事業の開始は必ず交付決定を受けたあとに開始しなければならない点に注意が必要となります。
 ITツール、IT導入支援事業者は順次事務局HPに公表されます。

3.応募

  対象会社が満たすべき要件 は、以下のとおりです。

  • ・日本国内で事業を行う『中小企業(※)・小規模事業者等(法人または個人)』であり、法人の場合は『みなし大企業』でないこと。
  • ・本事業を実施することにより、3年後の生産性の伸び率が1%以上、4年後:1.5%以上、
    5年後:2%以上となる 計画を立てられること 。(経営診断ツールを用いて生産性を計測、目標策定を行う)
  • ・「風俗営業」、「性風俗関連特殊営業」及び「接客業務受託営業」を営むものでないもの。
  • ・中小企業・小規模事業者等又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でない
  • こと。反社会的勢力との関係を有しないこと。

  • ・その他一定の要件

(※)中小企業者の定義
この税制における中小企業者とは、以下の各業種において資本金要件または従業員数要件を満たす企業を言います。

資本金要件 従業員数要件
製造業その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円以下 100人以下

なお、ゴム製品製造業、ソフトウェア・情報処理サービス業については別途基準が定められています。

4.申請・申請後の手続

この補助金の申請・手続きの流れは以下となります。

  • ①ITツールの検討(交付申請の準備)
  • ②交付申請(IT導入支援事業者による代理申請)
  • ③ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)
  • ④事業実績報告
  • ⑤補助金交付手続き
  • ⑥事業実施効果報告

 ②の交付申請は、登録によって開設する『申請マイページ』を通じ、IT導入支援事業者による電子代理申請にて完了します。「法人インフォ」を使用して法人情報の確認を行うため 法人の場合、原則として申請時の資料添付は不要 となります。そのため、書面の郵送等の必要がなく、インターネット上で全ての手続きが可能となっています(個人事業主の場合、公的身分証明書と、事業の実体が確認できる名刺・開業届等の資料が必要)。

 具体的な申請の流れとしては、①中小企業・小規模事業者が開設し、必要な会社情報等の情報を入力、②これをもとにIT導入支援事業者が申請に必要な詳細情報を中小企業・小規模事業者にヒアリングし、申請画面に入力する。③中小企業・小規模事業者入力内容を『申請マイページ』より確認・ 承認 。④IT導入支援事業者が代理申請を行う。という流れにより申請が行われます。

 申請の後、③IT導入支援事業者とITツールの選定へ進みます。

 なお、ITツールの種類は以下の2種に大別されます。

    ○ フロント・ミドル業務

  • ・顧客と対面し、注文を受けて売上を上げる機能
  • ・原価・納期・在庫などを管理し、フロント業務を支える機能
    ○バックオフィス業務

  • ・会計や文書管理などの事務系・管理系を支える機能

 サービスの前面に立つ「フロント・ミドル業務」と、それをサポートする「バックオフィス業務」よりそれぞれメインとなるITツールを選択し、あわせて 2つ以上の機能が得られるような組み合わせ で申請しなければなりません。これは、複数の業務機能を組み合わせることで、より生産性の向上を図るためです。

5.交付申請後の報告

 補助金の交付を受けた後は、事業実績報告書および事業実施効果報告の提出することとなります。
 実績報告は実際のITツールの発注・契約、納品、支払い等を行ったことが分かる証憑を提出するもので、今年の第一次公募の場合9/14までに提出する必要があります。
 こちらの事業実績報告の内容をもとに、補助金額が確定され、補助金が交付されることとなるため、必ず提出する必要があります。
 事業実施効果報告書は、事業終了後5年間にわたり、毎年4月1日から翌3月末日までの1年間における生産性向上等に関する情報の報告となり、こりらも『申請マイページ』より入力することとなります。
 導入から3年後の生産性の伸び率が1%以上、4年後に1.5%以上、5年後に2%以上を達成できていない場合の返金はありませんが、未達成の際には理由と改善策を付して報告するなどが加わり、こちらは後日事務局HPへ掲載される予定となっています。
 一次公募自体は6月4日までとなっていますが、二次公募が6月中旬に、三次公募が8月中旬に予定されていますので、じっくり情報を収集してからの応募でもよいでしょう。

6.注意点

 交付決定前に行われる事業については、補助の対象外になる点には特に注意が必要です。また、交付される補助金は国庫補助金にあたるため、固定資産へ投入した部分の補助金については、圧縮記帳の対象となります。この点も、IT導入補助金の案内ホームページに記載がありますので、細かい点も事務局HP上で完結できるように工夫がされています。

7.おわりに

 今回はIT導入補助金について述べさせていただきました。補助金制度を使うことには事務処理の増加や時間的な制約といった点も伴いますので、制度の活用には慎重な判断と計画性が必要となります。様々な点を考慮したうえで補助金を上手に活用すれば、設備の導入などで支出が多い事業年度に返済不要の収入を得ることができるだけでなく、圧縮記帳などの規定により課税の繰り延べを図ることもできます。
 このIT導入補助金以外にも活用できる補助金制度はあります。時代の変化や法律の度重なる改正の中で、こうした補助金制度に関して幅広い情報を得ておくことが必要といえるでしょう。

 執筆者 前川 研吾
汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ株式会社 代表取締役
公認会計士(日米)・税理士 前川 研吾

北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。
公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。
また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。
2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。
税理士としてグループの税務業務を統括する。