卸売市場で最新スマートデバイス活用 柔軟な発想で業務改革を最速実現!

丸友青果株式会社 様


金沢市中央卸売市場内を拠点にし、石川県金沢市の伝統野菜である「加賀野菜」を中心とした青果を取り扱う、丸友青果株式会社(以下、同社)さま。
毎朝早くから市場で行なわれる競りで買い付けた野菜の販売管理は、内田洋行ITソリューションズ(以下、ITS)が構築したシステムを使用していますが、伝票はすべて現場の買い付け担当者の手書きメモを見ながら、事務担当者が入力し直していました。
この作業には大変な手間がかかり、コスト面・正確性のどちらの視点からも同社の大きな問題になっていました。

これらの問題を解決したのが、iPadによるシステム連携ソリューションの導入。
現場の担当者がiPadを使って直接、伝票データを入力できるこのシステムは、いまでは同社の業務になくてはならないものになっています。

競りという昔ながらの手法と文化が根付く現場にITを持ち込んだその背景には、どのような発想があったのでしょうか。iPadによる業務改善が実現するまでに重視したポイントと、最新のモバイル機器がもたらした大きなメリットについて、同社取締役・北形典子様にお話を伺いました。

代表者 代表取締役 北形 良太郎
創業 1966年7月
社員数 15名
事業内容 青果物卸
ウェブサイト http://marutomoseika.com/(別画面にて開きます)

導入前の課題

  • 伝票入力の工数を削減したい
  • 年配者中心の現場でもスムーズに導入できるインターフェイスが必要

導入の背景

- iPadによる伝票入力のシステムを検討されていた当時のお話をお聞かせください。 -

実は最初からiPadを使おうと思っていたわけではありませんでした。もともとiPadに興味はありましたが、自分の業界とは無縁のものだと思っていましたし。

毎日の伝票入力業務が大変で、一日中入力して腱鞘炎になったこともありました。勤め出した当初は先輩事務員にならったやり方を続けてきたけど、無駄があるように感じていたんです。


先輩が退職されたことを機に、自分の思っていることが形にならないか、と考えるようになりました。当時は入力担当として派遣の事務員に来てもらっていたんですが、震災があって物が売りにくくなった時期で人件費も気になっていたし、もっと効率化しなければ、このままでは続けていけない、と思いました。
そこで、ITSの担当営業さんに思ってみたことを伝えてみたんです。

ITSさんはいつも私の思いつきや何気ない話をしっかりと丁寧に聞いてくれるので、何か良いアイデアをくれるかもしれない、と思って。
そしたら「iPadでやってみませんか」と提案してくれたんです。



現在のiPad伝票入力画面
シンプルな画面内に必要な項目がすべてそろっており、慣れればかなり高速で入力することが可能

ちょうどiPadが流行り始めた頃で、ITSさんでも入力端末として活用した事例があり手ごたえを感じていたところだったそうで、私もそれを聞いてすぐに細かい画面の話まで詰めていったんです。
もともと当社の基幹システムの構築もITSさんで、業務のポイントをよく分かってくれていました。だからどんな機能があれば良いのか、どんなボタンが必要か、すぐに意思疎通をすることが出来たんです。

その時点で、よその業者にも同じ話を持って行こうという考えは一切ありませんでした。当社のシステムに合うものを作ることが絶対条件だったし、問題を共有したうえで一緒に解決方法を探してくれるITSさん以外にあり得ないと思っていました。

しばらくして実際にiPadの画面を作って持ってきてくれたんですが、ほぼ私の思い通りのものが出来上がっていたので感激しました。これならいけると感じ、本格的に進めて行ったんです。
最終的には、Bluetooth(ブルートゥース=デジタル機器用の近距離無線通信)によるテンキー対応や品目別・得意先別の入力など、当社の業務に合ったものになるようリクエストし、最終的に基幹システムと変わらない操作ができるようになりました。

導入のポイント

- iPadの導入について、重視したポイントは何ですか? -

実際にiPadを操作することになる当社の営業担当は年配の人も多いので、パソコンのキーボードによる入力方法では抵抗があるのでは、と最初から思っていました。
iPadの直感的な操作なら、普段から銀行のATMなどでタッチパネルを使っているのだからわかりやすいだろうと考えていましたし、実際はiPadに少しあこがれがあった担当者もいたようで、操作説明の当日は興味津々という雰囲気も感じましたね。

操作説明を受けたのはたった一度だけだったんですが、やはり直感的で理解しやすかったので、思い切ってその年の12月というもっとも忙しくなる時期に利用を始めることにしました。
最初は大変でしたが、おかげで早い段階で操作に慣れることも出来て、繁忙期を新システムで乗り越え、結果的にとても短期間で業務改善が行えました。

今から思うと、もしパソコンを使ったシステムにしていたらここまで上手くいっていなかったかもしれません。持ち歩くことにも抵抗があったでしょうし、なにか面倒なものという印象がどうしても強くなっていたでしょう。
iPadはとにかく手軽で安価だし、入力業務以外のことにもそのまま使えますからね。インターネットを使ってトマトの産地を調べたりして活用しているようです。



営業(洋菜当)の佐藤 和之様
「伝票入力以外にも、インターネットで野菜の品種を調べたり、産地の天気を確認して温度や気象の流れを見るなど、さまざまな業務にiPadを使っているよ」

-昔ながらの現場に今回のシステムが受け入れられた理由は何だったと思いますか? -

今回のiPad導入がいろいろなところで取り上げられて、取材をうけるようになったり、遠方から話を聞きに来てくれる人が増えたんですが、自分たちでは「卸売業界において先進的なことをやった」という意識はなかったですよ。ただまわりの店舗の特に若い人がiPadを見て「いいなぁ」と声をかけてくれたりするので、少し変わったことをしたのかな、という気にはなっています。

導入がスムーズだったのは、当社の規模もちょうど良かった、ということがあるかもしれません。業務のどこに問題があり、それを改善することで楽になる、楽しくやっていける、という意識で一致団結できたんですよ。伝票入力の面倒さは社内の誰もが感じていて、それを共通の問題として認識して共有できていたんです。



本当はもっと大きなところが導入しても十分使えるシステムだと思いますけど、よその話を聞いていると、経営と現場のギャップ等いろいろと別の問題があるようですね。
以前に同業者の社長さんが、1000件の仕入れ先を管理するために会社の規模に合わない大きなシステムを導入して大失敗した、と言っていました。本当はこのような会社にこそ今回のiPadは合っているはず、と感じています。

市場という環境で行なわれている昔ながらのやり方が、上手く出来ているなあと感心する部分もあるし、同業他社との兼ね合いもありますから、なんでもITにすることは難しいし、思い通りに出来ない部分もあります。ただ、効率が悪かったり不必要に思えるところや省略できるところをスリムにすることは出来るはず、と思っていました。
なにかのきっかけで大きく業績が変化するような業界ではない分、自分たちのできる範囲で少しでも良くしていくことは、とても重要なことなんです。

今回は事務の業務改善で効率化を目指しましたが、これを社内の共通認識として一丸となってiPadへスムーズに移行できたことは大きいですね。新しいことを面倒がらずに前向きに取り組んでくれたことはありがたいと思っています。

導入の効果

-iPadの導入効果はいかがですか?-


導入以前、手書き伝票を私が基幹システムで入力し直すのに毎日2時間以上かかっていました。
これがiPadで担当営業が直接打ち込んだ伝票をまとめる作業のみになり、私が入力する時間はたった10分になったんです。これだけで事務の工数が大幅に短縮しました。
営業担当者はそれまで手書きしていた伝票をiPad入力するだけなので、手間は全く変わりません。午前中の仕入れが終わってから午後の業務まで非常にスムーズなので、時間的余裕も生まれました。
また、iPadを導入する直前まで来てもらっていた派遣事務員の契約が終了したのですが、それ以降も私ひとりでも充分対応できる作業量になっているので、それまでにかかっていた人件費¥3,600,000(年間)がそのまま削減できています。

今回のiPad導入にかかった費用を考えても、いまのところメリットしか思い浮かびませんね。

システム構成図

今後の展開

-丸友青果様の今後の展望と、ITSに期待することをお聞かせください。-

情報の配信やアピールの仕方を考えていく必要があると思っていますね。iPadを使って産地の状況をバイヤーへリアルタイムでお知らせするような仕組みはどうかな、と考えています。
地元の農家の情報とバイヤーの情報を丸友青果がマッチングさせていくことができれば、地域貢献という視点でも意味のあることだと思っています。やっぱり地元のお客さんを大事に、地元の野菜を大事にしていきたいですからね。

東北の状況を見ていると、今まで以上に地元を大事にする傾向が出てくるだろうし、実際に地元にこだわるスーパー等も出てきています。
そんな中で、良いものであれば高価でも売れていく状況はあるんですが、それでも買ってくれるまで待つだけではなく、こちらから情報を発信していく営業力が大事になっていきますから。

現場からもiPadを使いながら「もっとこうしたい」「こうしたほうが良くなる」という意見が出てきており、現場参加で改善を進めることが出来ています。現場と事務の問題点や不満点が共有できていると実感しますね。
いま2~3人で1台のiPadを使っているんですが、最近は少し欲が出てきて、1人で1台持ちたいという声も出てきています。iPadはパソコンに比べ単価も安いので、費用対効果が出るなら考えていきたいです。

今回は内部の改善でしたから、今後は外への情報発信や売上の拡大へと考えていく中で、必要な部分にうまくピンポイントでITを当てはめて導入して利用価値を出していくことが重要だと思います。
今回も、業務をすべてiPadに置き換えようとはせず、売上伝票の発行という一部分に導入したことで分かりやすい効果が出たわけですから。なら次は、同じデータを使って出荷伝票や納品書、送り状に利用すればどうか、という考え方が出来るし、コスト面で有効なら導入していく、というふうに考えて行けば無理なく進めていけます。
なんでも出来るから入れておこうとか、最初から大きなものを導入しようという考え方ではうまくいかなかったときに大変ですからね。身軽な形で導入して、あとから足していけるところがITの本来の利点であるはず。

「青果卸の業界」「ITの業界」と壁を作らずに、難しく考えずなんでも話し合っていくことでお互いに得るものがあると思います。
日頃どんなことを思っているか、業務の事でもそれ以外の事でも普段から話していることが案外大事になってくるものです。「自分の業界には関係ない話だ」と頭から否定せずに、今より良くなるために何をすればいいかを考えて、「こうすればうまく行くかもしれない」ということが見つかれば、それはチャンスですから。
そうやってなにか思いついた時には、それを実現するために何が必要かをITSさんが一緒になって考えてくれますからね。

だからITSさんとは、これからも何気ないお話ができる関係を続けていきたいですね。その中でお互いに成長できるチャンスを見つけられれば良いと思うし、一緒に歩んでいけるような関係でありたいと思っています。


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