2022年10月、最低賃金改定! 日本企業の労働生産性を高めるには

公開日:2022.10.05
更新日:2023.9.20

日本の最低賃金はなぜ低いのか?

2022年の最低賃金の上げ幅は過去最大の31円ですが、国際的にみればきわめて低水準に留まっています。本稿では、各国の労働生産性とICT導入率を通して、その要因を考察します。

2022年の最賃引上げ高は過去最大

時給の下限となる最低賃金は、毎年、公益代表/労使代表で構成される最低賃金審議会で議論のうえ、都道府県労働局長が決定します。

審議会は2022年の最低賃金として、全国平均で31円を引き上げて961円とする目安を示しました。前年比3.3%増、食料品を主とする物価高の影響を受けて、過去最大の上げ幅となります。

とはいえ、日本の最低賃金は国際水準でみれば依然低水準に留まっており、最低賃金が最も高いとされるオーストラリア(21.38豪ドル/約1,984円)は当然として、その他の先進国と比較しても大きく見劣りします(表1)。

表1 各国の最低賃金
オーストラリア 21.38豪ドル(約1,984円)
イギリス 8.91ポンド(約1,442円)
ドイツ 10.45ユーロ(約1,425円)
フランス 10.25ユーロ(約1,398円)
アメリカ 7.25米ドル(約966円)
日本 961円
韓国 9,160ウォン(約940円)
(出典:厚生労働省「諸外国の最低賃金の状況・報告書について」)

アメリカの最低賃金7.25米ドル(約966円)は一見して日本と同水準にみえますが、実際は州や都市別に最低賃金が定められており、実効最低賃金は11.80米ドル(約1,572円)。チップ文化が浸透している背景もあり、単純比較はできないでしょう。

日本の労働生産性は?

最低賃金もさることながら、日本の賃金上昇率は長年停滞しており、その主たる原因は労働生産性の低さにあるとされています。

労働生産性の計算式

GDP(国内総生産;Gross Domestic Product)はその国で創出された付加価値の総和であり、付加価値とは生産過程で新たに加えられた価値のことで、総生産額からコスト(原材料費など)を差し引いたもの、すなわち人件費・利子・利潤・税金の合計になります。

それを就業者数で割って算出されるのが、労働生産性です。

2020 年の日本の1人当たり労働生産性は78,655米ドル。西欧諸国のなかでも水準が低いイギリス(94,763米ドル)やスペイン(94,552米ドル)にも大きく水を空けられており、アメリカ(141,370米ドル)の56%に相当する数字です(図2)。

結果、OECD(経済協力開発機構) 加盟先進38カ国中28位と、不名誉な順位に甘んじています。


労働生産性はICT導入率と連動している

アイルランドの経済成長、その要因は?

アメリカや北欧諸国を軒並み押さえ、労働生産性世界一に輝くアイルランド。国土は約7万平方キロメートルで人口は490万人と、けっして規模の大きな国ではありません。面積約8万3千平方キロメートル、人口516万人の北海道より一回り小さいぐらいです。

にもかかわらず、労働生産性は日本の2.6倍と、突出して高い数値を示しています。

もともとイギリス最初の植民地であり、独立後も1970年代まではけっして豊かとはいえなかったアイルランド。それがなぜ、労働生産性とGDPで世界トップクラスにまで上り詰めたのでしょうか? いまこそ私たちは、この小さな国の躍進から、謙虚に学ぶ必要があります。

台頭するIT大国

結論からいえば、アイルランドの急速な経済成長は、1980年代中盤以降のITの成長と足並みを揃えています。

12.5%という破格の法人税の低さと高い教育水準が呼び水となって、GAFMA(Google・Apple・Facebook・Microsoft・Amazon)を筆頭に多くの大手IT企業がアイルランドに欧州拠点を築きました。

実質的に世界のIT産業の中枢となったことで、高度なIT人材を育成する土壌が自然と整います。いまでは、国家戦略としてAIに注力しており、欧州で最もAI従事者人口が多い国とされています。

アイルランドだけでなく、労働生産性上位国に名を連ねるスイス、さらにデンマークやスウェーデン、ノルウェー、フィンランドなどの北欧諸国も、国家としての規模は大きくありませんが、デジタル競争力ランキングで上位を占めるIT大国ばかり(表2)。

やや乱暴な言い方をすれば、労働生産性の格差はICT導入率の格差であると結論づけることができます。

表2 デジタル競争力ランキング2020
順位 国
1 アメリカ
2 シンガポール
3 デンマーク
4 スウェーデン
5 香港
6 スイス
7 オランダ
8 韓国
9 ノルウェー
10 フィンランド
(出典:総務省「令和3年版情報通信白書」)

日本のICT導入の現状は?

裏づけるように、労働生産性が低迷する日本では、ICT導入率もけっして高いとはいえません(図3)。

日米のICT投資額を比較してみましょう。

アメリカでは1989年時点で1,476億米ドル、その後もおおむね増加傾向が続き2017年には6,551億米ドルと4倍以上に増加しています。

一方、わが国では1989年時点の14.3兆円から2017年でも16.3兆円と微増に留まっています。これは、イギリスやフランスと比較しても低い水準です。

各国企業のICT導入率

労働生産性の格差の拡大は、明確にこれまでのICTへの投資額と連動しており、当然ながら、日本国内においてもICT導入に積極的だった企業ほど生産性が拡大し、そうでない企業は相対的に生産性を落としており、経済格差が拡がる一因になっています。

日本のICT導入の遅れの原因については、諸説あります。優れた製造業を中心に経済成長してきた経緯から、ICT導入のインセンティブが生まれにくかったこと。IT技術者を軽視する風潮、あるいは新しい技術に対して保守的な企業体質。日本企業特有の年功序列式の給与体系が専門技術者の育成にそぐわなかったことも挙げられます。こうした要因が複雑に絡み合い、困難な状況にあったことは間違いないでしょう。

ですが、今後、労働人口が減少するのが確実であるなか、これまでの経済規模を維持するには、より少ない労働力で労働生産性を高めていく以外の道はありません。それを可能にするのは、ITの導入と、それを基盤にしたまだ見ぬイノベーションだけでしょう。

DXのススメ

表3 PISAテスト国際比較(2018年調査)
順位 読解 数学 科学
1 エストニア 日本 エストニア
2 カナダ 韓国 日本
3 フィンランド エストニア フィンランド
4 アイルランド オランダ 韓国
5 韓国 ポーランド カナダ
6 ポーランド スイス ポーランド
7 スウェーデン カナダ ニュージーランド
8 ニュージーランド デンマーク スロベニア
9 アメリカ スロベニア イギリス
10 イギリス ベルギー オランダ
11 日本 フィンランド ドイツ
(出典:文部科学省「OECD 生徒の学習到達度調査PISA」)

PISA(Programme for International Student Assessment)テストというものをご存知でしょうか? 義務教育が終わる15歳を対象にしたテストで、読解リテラシー、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3つの分野で学習到達度を測り、国際比較するというものです。

2018年の結果をみると、日本の学生は読解リテラシーでは37カ国中11位に留まるものの、数学的リテラシーでは1位、科学的リテラシーでは2位と好成績を残しています。日本の若者のポテンシャルについては、国際的にも上位にあるという見方が大勢です。

ICT活用の出遅れにより、労働生産性については国際的に低い順位に甘んじてはいますが、優れた人材を抱えているぶん、ICTの活用次第で今後の伸びしろが大きいともいえるでしょう。

ただ、さかんにICT導入/DX化をスローガンにしても、具体的にどこから手をつければいいのかは難しい問題です。企業の規模や業種、抱えている課題によって、答えがまるで違ってくるからです。

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また、今回の賃上げに頭を悩ませている事業者様向けに、中小企業庁が賃上げを支援する補助金を用意しています。同補助金に関しては、別の記事でまとめていますので、ご関心のある事業者様はこちらもご覧いただければ幸いです。

参考記事:事業再構築補助金2023年最新情報 ひと足早く変更点を総まとめ

【参考】
・厚生労働省「諸外国の最低賃金の状況・報告書について」
・公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」
・総務省「令和3年 情報通信白書」
・総務省「令和元年 情報通信白書」
・総務省「平成30年 情報通信白書」
・文部科学省「OECD 生徒の学習到達度調査 PISA」

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