直感的なタブレット操作で煩雑な記録業務を改善、介護情報を把握・共有できるトータルケアを実現

養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム「明範荘」 様

社会福祉法人 貞徳会さまが経営する、養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム「明範荘」
貞徳会さまの理念である「慈悲」「頌徳」の精神に基づき、ノーマライゼーション(生活の質・安全な暮らし・心のバリアーの除去)の実現を目指す施設として、ユニットケアを推進するとともに、介護職員への職場内外での研修など、スキルやモチベーションを高める取り組みも積極的に行われています。

2014年4月、新たにオープンした特別養護老人ホーム「川名山荘」において、iPadによる介護記録を可能にした最新のソリューション「総合記録シート(「絆」高齢者介護システム)」が採用されました。

介護施設の現場で使用する業務システムの根本的な見直しから始まり、「総合記録シート」を軸にした新たな福祉現場の記録形態を作り上げた経緯、そして今回の導入がさまざまな場面で与えた影響についてもお聞きしました。

導入施設名 ガーデンハウス明範荘
特別養護老人ホーム川名山荘
経営主体 社会福祉法人 貞徳会
理事長 矢留 眞人
事業 社会福祉法による第一種社会福祉事業
社会福祉法による第二種社会福祉事業
ウェブサイト 明範荘:http://www.meihansou.or.jp/
(別画面にて開きます)

直感的なタブレット操作で煩雑な記録業務を改善、介護情報を把握・共有できるトータルケアを実現

導入前の課題

  • 新施設の開設を機に業務システムを再検討
  • 介護の流れに沿った記録を行ない、利用者の体調把握や情報の共有を強化する

導入の背景

『業務の流れにマッチしたシステムを求めて、比較検討に時間をかけました』

-「絆」総合記録シートの導入をご検討いただくにあたり、重視されたポイントは何でしたか?-

もともと明範荘では内田洋行ITソリューションズ(以下、ITS)の「絆(高齢者介護システム)」を使っていましたが、そのまま引き続き川名山荘でも「絆」を導入していこうと最初から決めていたわけではありませんでした。
というのも、この仕事にとって非常に重要である「記録を一元化し、多職種で共有する」という部分において、「絆」の記録に関する機能が結局運用できずにいたのです。記録の共有がコンピュータシステムを使わなければ実現が難しい部分であるにもかかわらず運用できなかったのは、「絆」のデータ入力方法に、当施設の業務の流れとの兼ね合いにおいて問題があったのです。


明範荘 副施設長 矢留 仁道様
川名山荘 荘長 大城 洋二様

「絆」で介護記録の入力を行う場合、業務の流れに沿って記録していこうとすると、「絆」のシステム上、それぞれ異なる画面を呼び出して食事の介助や入浴などを記録する必要があり、入力作業が煩雑になります。そのため、システムを使用する介護士の皆さんも「手書きのほうが早い」と感じており、実際に明範荘では現場で手書きしたメモを事務室に戻ってきてパソコンの前に座り入力していく、という手順を踏んでいました。

このようなやり方は残業時間が増えるうえに、行なった業務を的確に把握していないと入力漏れも出てきてしまいます。その結果、職員の負担感ばかり増して、また不完全なデータではメリットも見いだせなくなり、パソコンの記録は行われなくなってしまいました。

明範荘でこのような状況を課題に感じていたので、川名山荘ではオープン前から業務システムを根本的に見直し、「絆」も含めた各社の製品を一から比較検討して、業務の流れに沿った情報入力が出来るシステムを模索することにしたのです。

導入のポイント

『決め手はiPad対応、画面=帳票の直感的でシンプルな仕組みを見て決定しました』

-他社製品と比較した結果、絆の「総合記録シート」が採用された理由は? -


実は、川名山荘オープンの一年前の時点(2013年の4月頃)の段階では、他社製品でいこうとほぼ決めていたのです。他社製品の記録システムでこれなら運用できるのではないだろうかと割と気に入ったものがあったので…。

ところがそれをITSさんに伝えたところ、その年の夏ごろに「総合記録シート」というものが完成した、というお話がありました。
「全国高齢者ケア研究会」の監修でトータルケアに対応したシステムとして以前から開発していたものが、ちょうどこのタイミングで完成したということだったのですが、こちらとしてはオープンの約半年前というタイミングのあまりに急な話だったため、いまさら簡単に考えを変えるわけにいかないと、かなり慎重な姿勢をとりました。

ただ、今回は本気で業務の根本的な見直しを行なうという強い意思があったので、とにかく先入観は捨ててフラットな状態で一番良いものに決めようと思い、もう一度「絆」を含めて検討したのです。

「総合記録シート」の採用を決めたもっとも大きな要因は、iPadによる入力操作です。タブレットは介護の現場に持ち込んで使えるので、行なった業務を場所を選ばずにすぐに入力できます。
これを使えば今までの「後から手書きメモを見て入力する」というやりかたにはならないだろうと確信しました。

導入を予定していた他社製品ではタブレット入力はまだ実現していなかったので、非常に重要なポイントとしてITSさんと何度も話し合いを重ねました。
システム選定を決定するには本当に切羽詰ったギリギリのタイミングではありましたが、イメージしていた業務の流れにマッチするかどうかを慎重に判断していきました。

「総合記録シート」のシステム面での特長で一番良いと感じたのは、入力画面のインターフェイスと出力する帳票とが、ほぼイコールであることでした。
帳票とほとんど同じ画面がiPadに表示されており、紙に鉛筆で書き込むのと同じような感覚で入力したい部分をタップして書き込んでいくという、非常に直感的な入力方法になっていることが、このシステムの大きな利点だと感じました。

この直感的であるというのは、現場で職員が使うことを考えたときにとても大事なことなんです。行なった業務を順番に入力していけばシートが埋まり、入力漏れが無いかどうかも一目でわかりますし、項目によっては用意された選択肢を選べば良いだけなので、むしろ紙に書くよりよっぽど簡単ですよね。

特に詳しい説明をしなくてもすぐに使用できるという、iPadの設計思想がそのまま当てはまるような直感的で違和感のないシステムになっていることが、最終的に採用を決定した大きな決め手になっています。
高齢者施設はどうしても従業員の入れ替わりの激しい職種なので、習得に時間がかかるようなものはなかなか採用できません。
シンプルで理解しやすい仕組みになっていて新しく採用した職員が明日からすぐに使えるようになっていて、福祉施設で導入するシステムとしては大変理想的でした。



導入後の効果

『先進的で分かりやすい操作方法が自然に受け入れられ、職員募集のアピール効果も絶大』

-直感的な操作を重視された理由は?-


介護記録は、入力してそれで終わりではなく、蓄積された記録をまとめて活用し共有することが重要だと考えています。長い目で見て、正確な情報を記録していくには、素早く直感的に入力できるiPadを使うことがもっとも適していると考えました。
また、情報をまとめて出力する帳票も非常にシンプルで、一週間単位でコンパクトにまとまっており、水分摂取の把握や排泄日数が開いていないかなどの基本的なチェック項目の一定期間内の経過が分かるようになっています。これは、泉田 照雄先生(全国高齢者ケア研究会研究委員長)の「総合的な把握を重視する」という考え方も活かされているし、「総合記録シート」とiPadとの親和性は素晴らしいと思います。

ケアプランに沿って「いつ何を行なったか」を時間で追い、細やかな配慮で日々の生活を充実させるというのももちろん重要な視点なのですが、現場の看護師や栄養士にとっては、必要なデータをピックアップして比較し、必要な対策を立てることができる「総合記録シート」のほうが使いやすいのです。

これと同じ入力業務を、パソコンでマウスを使って…というのではまったく変わってくるんですよ。入力する場所を指で触って入力する、というタブレットならではの直感的な操作があったからこそ有効利用できていると思います。
どんなに多機能なシステムを導入しても、使う側にとって「分かりにくい」「覚えることがたくさんある」と感じてしまう部分があるだけで面倒に感じてしまい、使うことが億劫になります。そうなると「紙に書いた資料のほうが簡単で便利だ」という方向に行ってしまいますが、私は紙のものはすべて無くしてしまいたいという想いですから、なんとしても紙に書くよりも便利だと感じられるものを導入したかったのです。

-川名山荘で実際に「総合記録シート」を導入されて、いかがでしたか?-

2013年末に、明範荘で限定的に導入し、念入りに時間をかけて業務にフィットさせるための試行錯誤を行なったうえで、川名山荘への本格的な導入を決めました。
その時点で、iPadによる記録入力は施設の大きな売りになると考えて、職員募集の広告に大きく取り上げました。新しい施設で新しいことをやるというポジティブな印象を与えることは、大きなアピール効果がありましたね。
特に学生向けの説明会を行なったときには、若い就活生の皆さんの反応が良く、辛く大変なイメージが強い福祉の現場で、先進的な事をやっているというインパクトがとても大きかったようです。現場への見学にも前向きな学生さんが多かったですね。
現場のいろいろな取り組みを細かく説明するよりも、「iPadを使っている」と一言伝えるだけで前向きなイメージを与えます。そもそも、今回は業務の改善を大前提に取り組んだので、それが良い形で様々な場所で伝わっていっているのだと思っています。

実際にiPadを使った入力を行なっている職員の反応はごく自然なもので、このシステムのせいで躓いたり抵抗を感じているという話は聞きません。違和感なく受け入れているのではないかと思います。

心配と期待が半々という状況でしたが、蓋をあけてみれば非常に上手くいっているようです。職員は20代~50代と幅広いのですが、年配の人でも今はスマートフォンを持っているし、フリック入力などにも抵抗が少ないようですね。
もちろん実際に使ってみた感想を聞くと、いろいろと要望は出てきますが、これは「総合記録シート」を使っていくことを前提にしたうえで出てくる前向きな要望ですから、大事に受け止めていきたいと思います。

今後の展開

『優れたITを、より意味のある形で導入するための検証と工夫を続けていく』

-貴施設の業務改善にあたり、今後はどのようなIT活用をお考えですか?-

今回、川名山荘の導入前に明範荘で仮導入を行ない、様々なテストを行ないましたが、その際に事業日報など紙で記録していたものも連携させたいと考えていたので、特記事項の項目を日報用の項目に使ったりと、ほとんどの入力業務をシームレスで行なえるようになりました。他にも職員へのシステムの説明資料を自分で作成したりと、積極的に取り組んだことが導入後のスムーズな利用に活きていると感じます。
システム面が優れているのはもちろんですが、自分たちでいろいろな工夫をして環境にフィットさせていったので、納得した状態で稼働開始することができたし、事前に様々な状況を想定できたので、大きな問題も起こらず使えていますね。
これなら明範荘でも、ほとんど問題なく本格導入できそうです。ITを導入するとはこういうことなのではないでしょうか。

「絆」は非常に自由度が高いシステムなので、法改正など必要に応じてさまざまな機能追加や改善が行なわれてきた結果、メニューの構成が多階層になっているところもあって覚えることが多いと感じます。福祉に関わる業務の様々な場面に対応できる分、初めて導入する施設では習得に充分な期間が必要でしょう。
そんな中で今回の「総合記録シート」はiPadという入力口の追加といった位置づけなので、導入の目的や必要性が分かりやすくシンプルで、システムの複雑さを軽減してくれる意味で有効なソリューションですね。それに、デスクトップPCから入力したデータとの連携も出来ますから、多機能な「絆」の良い部分を引き出していると思います。


利用者の状況や体調を把握するために、情報を共有し必要な部分を引き出してチェックできますから、介助業務を行なう職員への指導や相談等も、より的確で意味のあるものになっています。

2013年夏の時点ではほとんど決めていた、他社製品で想定していたやりかたを全部棄ててまで、「総合記録シート」の導入を決めましたが、あの判断は間違いなかったと思っています。




2014年7月取材(記載内容は取材時の情報を元に構成されています。各種データや組織名、役職などは変更されている場合があります。)

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