セキュリティ対策評価制度とは?2026年開始予定、企業の対応を解説

公開日:2026.6.22
更新日:2026.6.23

あなたの企業は対策を始められていますか?

セキュリティ対策評価制度とは、サプライチェーン全体のサイバーセキュリティ強化を目的に、経済産業省が主導する新しい制度のことです。企業が自社のセキュリティ対策レベルを客観的に示し、取引先からの信頼性を高めるための指標として創設されました。本記事では、本制度の概要、企業が準備できることについて、わかりやすく解説します。

セキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)とは

セキュリティ対策評価制度とは、サプライチェーン全体のサイバーセキュリティ水準を底上げするために経産省が主導する新しい枠組みです。2026年度中の本格運用開始を目指して整備が進められています。

この制度は、企業のセキュリティ対策状況を客観的な指標で評価し、★星の数で可視化する仕組みです。これまで取引先ごとに異なっていた複雑なチェックシートを統一し、自社の対策レベルをわかりやすく外部へ証明できるようにします。

運用の開始に先立ち、評価機関の公募や試行運用が順次進められています。企業は取引への影響を考慮し、早期に内容を把握し対策を始めることが重要です。


サプライチェーン全体でセキュリティを強化する目的

近年、サイバー攻撃は高度化し、取引先の中小企業を足がかりとするサプライチェーン攻撃が増加しています。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威」では、第2位に「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」がランクインしており、セキュリティ対策が手薄な関連企業を足がかりに、標的とする大企業を攻撃する手口が脅威となっています。

こういった攻撃手口が拡がっていることから、企業単体ではなく、取引先を含めた全体での対策強化が求められています。

表1 情報セキュリティ脅威度ランキング
1位 ランサムウェアによる被害
2位 サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
3位 AIの利用をめぐるサイバーリスク
4位 システムの脆弱性を悪用した攻撃
5位 機密情報等を狙った標的型攻撃
IPA 「情報セキュリティ10大脅威 2026」を基に作成

セキュリティ対策評価制度の仕組み

本制度は、企業のサイバーセキュリティ対策の実施状況を共通の基準に基づいて評価・可視化する仕組みです。これまで各社ごとに異なっていたチェック基準を整理し、「どの程度の対策ができているか」を統一的な物差しで示せる点が大きな特徴です。

星(★)による段階評価

評価は、対策の成熟度や対応できるリスクの範囲に応じて、★3~★5を中心とした段階評価を行うことが想定されています。★の数が増えるほど、より高度で包括的なセキュリティ対策が実施されていることを意味します。

★1、★2については、独立行政法人情報推進機構(IPA)が公開している「SECURITY ACTION」で提案している取り組みが該当する位置づけとして整理されています。

★5に関しては、ISMS適合性評価制度や★3・4との整合性も踏まえ、今後、対策事項の検討が進む予定です。

評価レベル 想定される脅威 求められる主な対策 評価方法
★3 •広く認知された脆弱性等を悪用する一般的なサイバー攻撃 ・既知の脆弱性対策(ランサムウェア、フィッシング)
・基本的なIT管理(資産管理、パッチ管理)
・組織体制整備、従業員教育
・継続的な運用
専門家確認付き自己評価
★4 •供給停止等によりサプライチェーンに大きな影響をもたらす企業への攻撃
•機密情報等、情報漏えいにより大きな影響をもたらす資産への攻撃
・侵入防止+侵害後対応(被害拡大防止)
・ログ監視、脆弱性管理
・インシデント対応体制
・取引先・委託先の管理
・組織全体での運用体制
第三者評価
★5[検討中] •未知の攻撃も含めた、高度なサイバー攻撃 ・未知の攻撃への対応
・経営視点のセキュリティマネジメント
・継続的リスク分析・改善
・高度監視・脅威情報活用
・迅速な復旧体制(レジリエンス強化)
第三者評価

★3の評価基準

★3は、サプライチェーンに関わるすべての企業にとっての出発点であり、最低限満たすべきセキュリティ対策レベルと位置付けられています。

このレベルでは、既知の脆弱性や一般的なサイバー攻撃(ランサムウェア、フィッシングなど)への対応を前提とし、基本的な組織体制の整備やIT管理の徹底が求められます。単にセキュリティ製品を導入するだけでなく、パッチ管理や資産管理、従業員教育などが継続的に運用されていることが重要です。

評価は、企業自身による自己評価をベースとしつつ、セキュリティ専門家による確認を経て実施されます。

★4の評価基準

★4は、サプライチェーンにおいて重要な役割を担う企業や、機密情報を扱う企業などに求められる、より高度なセキュリティ対策レベルです。

このレベルでは、外部からの侵入を防ぐだけでなく、万が一侵害された場合の被害拡大防止や迅速な対応まで含めた「総合的なセキュリティ対策」が求められます。具体的には、ログ監視や脆弱性管理、インシデント対応体制の構築、さらには取引先・委託先のセキュリティ管理など、組織全体での運用体制の確立が必要になります。

★4以上の評価については、第三者評価の導入が想定されており、より客観的かつ信頼性の高い評価となります。

★5の評価基準

※ ISMS適合性評価制度や★3・4との整合性も踏まえ、対策事項を今後検討

★5は、本制度における最上位の評価であり、未知の攻撃や高度なサイバー脅威にも対応できる体制を備えた企業が目指すべき到達点とされています。

このレベルでは、単なるIT対策にとどまらず、経営視点でリスクを把握・管理する「セキュリティマネジメント」が重視されます。継続的なリスク分析や改善活動に加え、国際的なガイドラインやベストプラクティスに基づいた運用体制の構築が求められます。例えば、高度な監視体制の整備や脅威情報の活用、インシデント発生時の迅速な復旧体制など、組織全体のレジリエンス(回復力)を高める取り組みが含まれます。

なお、★5については後続フェーズで導入される方向で検討されています。評価基準や具体的な要件については、現在整理されている段階です。

企業がセキュリティ対策評価制度に対応するメリット

SCS評価制度に対応する大きなメリットの一つは、サプライチェーンにおける従来の課題であった「セキュリティ対策の見えにくさ」と「対応負担の大きさ」を同時に解消できる点にあります。委託元・委託先それぞれが抱えていた問題を、共通の評価基準によって整理し、効率的かつ実効性の高いセキュリティ運用を実現できる仕組みといえます。

委託元企業のメリット:セキュリティ状況の可視化と判断のしやすさ

従来、委託元企業にとっては、取引先がどの程度のセキュリティ対策を講じているのかを客観的に把握することが難しく、個別にチェックリストを作成・配布して評価せざるを得ない状況がありました。しかし、この方法では対策の実効性や基準の妥当性を担保することが難しく、判断にばらつきが生じるという課題がありました。

SCS評価制度を活用することで、統一された基準に基づいた評価結果を参照できるようになり、委託先のセキュリティレベルを客観的に把握できるようになります。その結果、取引先選定やリスク判断をより合理的に行うことが可能になります。

委託先企業のメリット:対応負担の軽減と効率化

一方、委託先企業においては、取引先ごとに異なるチェックシートや要求事項への対応が必要となり、セキュリティ対応が大きな業務負担となっていました。特にサプライチェーンが複雑化する中で、複数の企業からの異なる要求に応えることは非効率であり、運用面での課題となっていました。

本制度では評価基準が共通化されるため、一度基準に沿って対策を整備すれば、複数の取引先に対して同じ評価結果を提示できるようになります。これにより、個別対応の手間が大幅に削減され、効率的なセキュリティ運用が実現します。

このように、SCS評価制度は委託元・委託先双方の課題を解消し、サプライチェーン全体の透明性効率性を高める仕組みとして、大きな意義を持つ制度といえます。

企業が準備できること

SCS評価制度への対策にあたっては、自社の現状を把握し、段階的に対策を進めていくことが必要です。ここでは、取り組みの3ステップを解説します。

1. 自社のセキュリティ状況を把握する

まず最初に行うべきは、自社のセキュリティ対策がどのレベルにあるのかを正確に把握することです。

現状を把握せずに対策を進めても、必要なポイントが抜け漏れたり、過剰な投資につながる可能性があります。SCS評価制度では、資産管理・アクセス制御・脆弱性対策・インシデント対応など、複数の観点から対策状況が評価されます。そのため、自社のIT資産や運用体制、ルール整備状況などを棚卸しし、どこまで対応できているかを整理することが出発点となります。

また、チェックシートや診断サービスなどを活用することで、不足している対策や優先的に取り組むべき課題を明確にすることも有効です。


2. 目標とする評価レベルを決める

次に、自社がどの評価レベル(★)を目指すのかを決定します。

これは企業の規模や業種、取り扱う情報の重要性、そしてサプライチェーン上での役割によって異なります。例えば、一般的な企業であればまずは★3の取得を目標とし、基本的な対策の整備を進めるケースが多い一方、重要な取引先を持つ企業や中核的な役割を担う企業では、★4レベルの対応が求められることも想定されます。

また、発注元企業から特定の評価レベルを求められる場合もあるため、自社の意思だけでなく「取引要件」も踏まえて現実的な目標設定を行うことが重要です。


3. 目標達成に向けたセキュリティ対策の計画・実行

目標レベルを定めたら、その達成に向けた具体的な対策を計画し、段階的に実行していきます。SCS評価制度では、単なるツール導入ではなく、

・組織体制の整備(責任者の明確化、ルール策定)
・IT資産やアカウントの管理
・脆弱性対策やログ監視
・インシデント発生時の対応手順の整備

といった「運用面」も含めた対策が求められます。


また、対策は一度実施すれば終わりではなく、継続的に見直し・改善していくことが前提となります。評価制度への対応を通じて、自社のセキュリティ運用を標準化し、改善サイクル(PDCA)を回していくことが重要です。

対象組織と適用範囲

セキュリティ対策評価制度の対象となるのは、企業規模や業種を問わず、情報システムを活用して事業活動を行うあらゆる組織です。特に、個人情報や気密情報を扱う企業、サプライチェーンの一端を担う事業者、あるいは取引先や社会的信頼に直結するサービスを提供する組織は、積極的な対応が求められます。

また、本制度は単にIT部門に限らず、経営層から現場部門に至るまで組織全体の関与を前提としており、ガバナンス、リスク管理、技術的対策、運用体制など多角的な領域に適用されます。さらに、クラウドサービスの利用外部委託の拡大に伴い、自社のみならず委託先や関連会社を含めた情報セキュリティ管理体制も評価対象となる点が特徴です。

このように、本制度は単一のシステムや部門に閉じるものではなく、組織を横断した包括的な適用範囲を持つことで、実効性の高いセキュリティ対策の実現を目指しています。

具体的なスケジュール

経済産業省が公表しているスケジュールによると、本制度は2026年(令和8年)度末に本格開始される予定で、評価機関の選定や試行運用が段階的に進められています。

制度の詳細は今後更新される可能性があるため、IPAなどの公式サイトで最新の公表情報を定期的に確認することが重要です。

まとめ

サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度は、企業のセキュリティ対策状況を可視化し、取引全体の安全性を高めることを目的とした重要な枠組みです。これまで見えにくかった取引先の対策レベルを共通の基準で把握することで、企業間の信頼性向上や、より合理的な取引判断につなげることが期待されています。


また、本制度は単なるIT対策の強化にとどまらず、組織全体でセキュリティに取り組む体制づくりや、継続的な改善活動を促す点にも大きな意義があります。特にサプライチェーンの一端を担う企業にとっては、自社の対策レベルを客観的に示す手段となり、競争力の強化にもつながる可能性があります。

まずは基本的な対策の整備から着手し、自社の立場や取引要件に応じた目標レベルを設定することで、無理のない形で準備を進めていくことが求められます。

本制度への対応をきっかけに、セキュリティ対策を「コスト」ではなく「信頼を高める投資」として捉え、企業価値の向上につなげていくことが今後ますます重要になるでしょう。

よくある質問

Q.セキュリティ対策評価制度はすべての企業に義務付けられていますか?
A.義務ではなく任意の制度として設計されています。ただし、取引先(特に発注元企業)から取得や準拠を求められるケースが想定されており、実質的に対応が必要となる場合があります。
Q.中小企業でも対応する必要はありますか?
A.サプライチェーンの一部を担う中小企業は重要な対象とされています。リソースが限られる企業でも取り組みやすいよう、段階的な評価基準や支援策が用意されています。

【参考】
・経済産業省「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針(案)
・独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「SECURITY ACTIONとは?
・独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026

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