令和8年度税制改正大綱② ~法人税~

令和8年度税制改正大綱② ~法人税~

1.はじめに

 令和8年度税制改正について、前回から2回にわたり、ポイントを解説しています。第1回目となる前回は、個人所得税の注目ポイントをご紹介しました。今回は、法人課税に関する注目すべき改正ポイントをご紹介します。

2.設備投資促進税制

 成長投資による強い経済の実現に向け、「高付加価値化」に資する大規模な設備投資を強力に支援する制度として、新たに創設されました。青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法の改正法施工の日から令和11年3月31日までの間に経済産業大臣の確認を受け、当該確認の日から5年以内に対象資産を取得し、事業の用に供した場合に、税額控除7%(建物・建物附属設備・構築物については4%)または即時償却を選択適用できる制度です(税額控除を選択した場合は、当期法人税の20%が上限です。一定の要件の下、控除しきれなかった金額は最大3年間繰り越すことが可能とされています)。

 以下のように多様な設備が対象として認められています。

【対象資産】
資産区分 1台・1基あたりの取得価額 税額控除率 補足事項
機械装置 160万円以上 7% 製造ライン、加工設備など
工具・器具備品 120万円以上 7% 測定工具、検査工具、電子計算機など
※1台40万円以上かつ、一事業年度合計120万円以上でも可
建物 1,000万円以上 4% 工場、店舗、倉庫など(※本店、寄宿舎等は除く)
建物附属設備・構築物 120万円以上 4% 電気設備、給排水設備、ドック、舗装など
※附属設備は1つ60万円以上かつ一事業年度合計120万円以上でも可
ソフトウェア 70万円以上 7% 生産管理、基幹業務システム、AI活用ソフトなど

 このように対象設備は幅広いものの、適用を受けるためには下記の要件を満たす必要があり、大規模な設備投資を支援する姿勢が顕著に表れているといえます。

①生産性向上設備等の取得価額の合計額が35億円以上(中小企業者等については5億円以上)であること
②投資計画における年平均の投資利益率が15%以上となる見込まれること
③投資計画に、その実現に必要な資金調達手段が記載されていること
④投資計画が取締役会等の適切な機関による意思決定に基づくものであること
⑤上記のほか、生産性向上設備等の導入が当該法人の設備投資を増加させるものであること等、所定の要件を満たすこと

 また、中小企業者等以外の法人については、当事業年度の所得>前事業年度の所得となる場合に限り、以下の要件も満たす必要があります。

資本金が10億円以上かつ常時使用する従業員の数が1,000人以上
又は
常時使用する従業員の数が2,000人以上
左記以外
継続雇用者給与増加割合 前年比2%以上 前年比1%以上
国内設備投資額 当期償却費総額の40%を超えること 当期償却費総額の30%を超えること

3.研究開発税制の見直し
~戦略技術領域型の創設~

 新たに、AIや半導体など国家戦略上重要な分野に投資する企業に対し、従来の枠組みを大きく上回る税額控除率を適用する制度です。

 青色申告書を提出する法人が、産業技術力強化法の重点開発計画(仮)について認可を受けることが要件となります。

 概要は以下の通りです。

内容
税額控除率 重点産業技術試験研究費の40% (特別重点産業技術試験研究費の場合は 50%)
控除上限 法人税額の 10%
繰越期間 控除しきれない分は 3年間繰り越し可能
※繰越税額控除の適用を受けようとする事業年度において試験研究費の額が前期の試験研究費の額を超える場合に限る

 また、重点産業技術試験研究費とは、以下の分野に係る研究開発のうち、一定の基準に該当することについて確認を受けたものをいいます。

・AI・先端ロボット
・量子
・半導体・通信
・バイオ・ヘルスケア
・フュージョンエネルギー
・宇宙

4.研究開発税制の見直し
~一般試験研究費の額に係る控除率・控除税額の見直し~

 一般試験研究費に係る税額控除は、ベースの25%に変更はないものの、そのベースを増減させる変動部分に関しては、より厳しい条件へ改正されます。

項目 現行制度(令和8年度末まで) 改正案(令和9年度以降)
原則(ベース) 調整前法人税額の 25% 同左(25%で維持)
上限が上乗せされる条件 試験研究費の増加率が 4%超 試験研究費の増加率が 7%超
上限が減額される条件 試験研究費の減少率が 4%超 試験研究費の減少率が 1%超
実際の控除上限の範囲 20% ~ 30% 20% ~ 30%

 これまでは試験研究費を4%増やせば上限が引き上がり始めましたが、改正後は7%以上増やさなければ上乗せを受けられなくなります。一方で、これまでは4%を超えて減少した場合に減額されていましたが、改正後はわずか1%を超える減少で上限が引き下げられ始めます。つまり、企業にはより継続的かつ積極的な投資が求められる仕組みとなっています。

 なお、試験研究費が平均売上金額の10%を超える場合などに適用される上限上乗せの特例については、適用期限が3年間延長されます。

5.賃上げ促進税制の見直し

 今回の改正は、これまでの「賃上げを促すための減税」から、「賃上げが当たり前の環境下での制度整理」へとシフトした内容といえます。

企業区分 改正内容のポイント 廃止時期
大企業 制度そのものが廃止されます。 令和8年3月31日
中堅企業 令和8年度は要件を強化した上で、翌年に廃止されます。※1 令和9年3月31日
中小企業 現行制度を維持しつつ、教育訓練費の上乗せは廃止されます。 未定

※1中堅企業(従業員2,000人以下)の控除割合は以下のように改正されます。

給与等の増加割合 改正前 改正後
3% 10%
4% 25% 10%
5% 15%
6% 25%

6.おわりに

 令和8年度税制改正大綱では、法人税について、全体としては従来より支援対象が狭まった一方、設備投資促進税制をはじめ、対象となる場合の支援は手厚くなるなど、”メリハリ”のある税制改正となっています。

 なお、今回の改正内容は2025年12月公表の「税制改正大綱」に基づくものであり、今後発表される最終法案等で内容が変更される可能性があるため、実務上の対策を検討する際には留意が必要です。

参考文献

・税理士法人山田&パートナーズ「速報 2026年度(令和8年度)税制改正解説
・自由民主党 日本維新の会「令和8年度税制改正大綱
・財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要
・アンパサンド税理士法人/アンパサンド株式会社「超速報!令和8年度(2026年度)税制改正大綱を徹底解説!
・税理士法人AOIみらい / あおいコンサルタンツグループ株式会社「【速報】2026年度(令和8年度)税制改正大綱を解説(2026.01.21 更新)
・金融庁「令和8(2026)年度税制改正について

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

メールマガジン購読のお申込みはコチラから
プライバシーマーク