中小企業に対する税制優遇措置について

1.はじめに

中小企業は日本の全企業数のうち99パーセント以上を占め、日本の経済と雇用を支えているといっても過言ではありません。よって国は中小企業を応援するため、様々な税制上の優遇措置を設けています。今回はこのような税制上の優遇措置を受けられる「中小企業者」及び「中小法人」の定義と、各々の具体的な優遇措置の内容を見ていきたいと思います。

2.租税特別措置法上の「中小企業者」の定義

租税特別措置法に規定する中小企業者とは以下の通りです。

      ①資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下の法人。但し、発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(*1)の所有に属している法人、もしくは発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が2以上の大規模法人の所有に属している法人を除く。
      ②資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人

*1資本金もしくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人

3.中小企業者が受けられる優遇措置について

①設備投資に対する特別償却・税額控除

経営力向上計画の認定(*2)を受けると、中小企業経営強化税制の適用により、法人税・所得税の即時償却又は税額控除の選択適用ができます。また経営力向上計画の認定を受けない場合であっても、中小企業投資促進税制又は商業・サービス業・農林水産業活性化税制に基づき、30%の特別償却、7%の税額控除の選択適用ができます。対象法人の規模や使用する税制措置によって、特別償却及び税額控除の割合は以下の通り定められています。

*2経営力向上計画の認定とは、中小企業者が人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力の向上をするために実施する計画を、経営力向上計画申請書をもって各事業分野の主務大臣に提出し、認定を受けることをいいます。

対象法人 中小企業経営強化税制 中小企業投資促進税制
特別償却 税額控除 特別償却 税額控除
個人事業主(従業員1,000人以下)
資本金3,000万円以下の法人
即時償却 10% 30% 7%
資本金3,000万円超
~1億円以下の法人
7% 適用なし

なお、これらの税制措置は平成31年3月31日までの適用期間となっています。

②30万円特例(少額減価償却資産の取得価額の損金算入)

中小企業者は、取得価額が30万円未満の減価償却資産(少額減価償却資産)を取得した際に、合計300万円まで即時損金算入が可能とされています。
なお、当該少額減価償却資産についての特例は平成32年3月31日までの適用となっています。

③その他の税制優遇措置

上記以外にも中小企業者には「固定資産税の特例」「雇用促進税制」「所得拡大促進税制」「研究開発税制」など様々な優遇措置があります。

4.法人税法上の「中小法人」の定義

法人税法に規定する中小法人とは、普通法人のうち、資本金又は出資金の額が1億円以下の法人又は資本もしくは出資を有しない法人のことを言います。但し、以下のものを除きます。

      ①相互会社
      ②大法人(*3)や相互会社等の100%子会社
      ③完全支配関係にある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人
      ④公益法人等又は協同組合等
      ⑤人格のない社団等

*3資本金又は出資金の額が5億円以上の法人

5.中小法人が受けられる優遇措置について

①軽減税率

法人税の税率は、平成30年4月1日以降に開始する事業年度は23.2%になります(従来の23.4%より変更)。但し、中小法人は年800万円以下の所得金額部分について、そもそも税率が19%に軽減されており、更に租税特別措置法によって15%に軽減されています(平成31年3月31日までに開始する事業年度分に適用可)。

②欠損金の繰越控除(50%制限免除)

欠損金(税務上の赤字)が生じた場合には、翌事業年度以降に繰り越して、将来の所得から控除することで法人税の負担を軽減できます。中小法人以外の法人については、繰越欠損金の控除に限度額があり、平成30年4月1日以降に開始する事業年度については欠損金控除前の所得金額に50%を乗じた金額となっています(平成29年4月1日から平成30年3月31日開始事業年度分については55%)。一方、中小法人についてはこういった控除限度額はなく、欠損金額の全額が控除対象となる点で優遇されています。

なお、平成30年度以降に開始する事業年度において生じた欠損金については、繰越期間が従来の9年から10年に延長されています。

③欠損金の繰戻還付制度

欠損金が生じた事業年度の前年に納税があった場合には、前期の納税額を限度に還付を受けることができます。還付金額は以下に示す式の通りです。

還付請求できる法人税の額=前期の法人税額×当期の欠損金額÷前期の所得金額

当該欠損金の繰戻還付制度は、平成31年3月31日までに終了する事業年度において適用となります。

④交際費800万までの損金算入

法人が支出した交際費等は、原則として全額損金不算入とされますが、中小法人は(1)800万円までの交際費等の全額損金算入と、(2)飲食接待費の50%の損金算入の選択適用が認められています((2)については中小法人以外の法人にも認められています)。当該交際費課税の特例は、平成32年3月31日までに終了する事業年度において適用となります。

⑤特定同族会社の留保金課税の適用除外

特定同族会社については、会社に留保した一定金額以上の所得に対しては、通常の法人税に加えて、特別税率による課税(留保金課税)が行われますが、中小法人については適用除外となっています。

⑥貸倒引当金の適用

法人税法上の貸倒引当金については、銀行、保険会社といった金融業を営む法人等を除いて全額損金不算入となりますが、中小法人は、引当金限度額を限度として引当計上可能となっています。

6.中小企業者と中小法人の判定結果が異なる場合

租税特別措置法上の「中小企業者」と法人税上の「中小法人」の定義は異なりますので、判定結果が異なるケースもあります。例えば、以下のようなケースが考えられます。
※いずれも、判定対象の法人自身は資本金1億円以下とする

      ①資本金が1億円超5億円未満の法人に、発行済株式の100%を所有されている場合
      中小企業者には該当しませんが、中小法人には該当します。
      ② 資本金が5億円以上の法人に、発行済株式の50%以上100%未満を保有されている場合
      中小企業者には該当しませんが、中小法人には該当します。
      ③ 資本金5億円以上の大法人(a)に100%所有されている資本金1億円以下の法人(b)の100%子会社(c)(資本金1億円以下)。
      この場合、(b)は中小企業者にも中小法人にも該当しません。一方、(c)は間接的に大法人(a)に完全支配されていることから中小法人には該当しませんが、直接保有されている親会社は資本金1億円以下で大規模法人ではないことから、中小企業者には該当することとなります。

7.おわりに

今回は、中小企業の税制上の優遇措置について代表的なものをご説明いたしました。「中小企業者」や「中小法人」に該当する場合には、様々な場面で使用できる税制措置が用意されています。利用できる税制措置を上手に活用することは、経営上大きなメリットになると思います。但し、各制度の適用要件や規定については税制改正により、変更することがありますので、毎年の税制改正時には各々の税制措置の変更点に十分に留意する必要があります。

執筆者
汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ税理士法人
代表社員 税理士 長谷川 祐哉
埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
企業会計を中心とする深い知識により、顧客との強固な関係を築くのに成功している。
グローバル企業や上場会社及び上場準備会社に関する税務を担当している。

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