年末調整について

1.はじめに

 今年も年末調整の時期がやってきました。そこで今回は年末調整の概要といった基本から、2018年分の変更点をメインに、見ていきたいと思います。

2.年末調整の概要

 年末調整とは、1年間の給与総額が確定する年末に、その年に納めるべき税額を必要な控除を加味した上、正しく計算し、それまでに源泉徴収した税額との過不足額を徴収又は還付し精算する手続をいいます。

①対象となる人

 年末調整は、原則として給与支払者に給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(以下、「扶養控除等(異動)申告書」)を提出している人全てが対象となります。下表に年末調整の対象となる人とならない人をまとめます。

年末調整を行う時 年末調整の対象となる人 年末調整の対象とならない人
12月 ・1年を通じて勤務している人
・年の途中まで就職し、年末まで勤務している人
・主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
・災害減免法の規定により、本年分の給与に対する源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予又は還付を受けた人
・非居住者
・日雇労働者
年の中途(退職時・非居住者となった時) ・死亡により退職した人
・著しい心身の障害のため退職し、本年中に再就職ができないと見込まれる人
・12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
・パートタイマーとして働いている人などが退職し、本年中に支払を受ける給与総額が103万円以下である人
・年の中途で海外転勤などにより、非居住者となった人

②対象となる給与

 年末調整の対象となる給与はその年の1月1日から12月31日までに支払うことが確定した給与です。よって実際に支払ったかどうかに関係なく未払の給与も12月末までに確定したものであれば、その年の年末調整の対象となります。逆に、前年に未払になっている給与を今年になって支払っても、その年の年末調整の対象となる給与には含まれません。

 一方、給与支給日が翌月の場合など、給与の支払確定日が翌月となる場合、12月勤務分の給与は翌年1月に確定、支給されることとなり、本年の年末調整の対象とはなりません。

③配偶者控除又は配偶者特別控除

 配偶者控除とは、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に行うことができる所得控除のことをいいます。また、配偶者特別控除とは、配偶者に38万円を超える所得があるため、配偶者控除を受けられないが、一定の場合に配偶者の所得金額に応じて受けられる所得控除のことをいいます。なお、配偶者控除及び配偶者特別控除における控除対象配偶者については、「3.平成30年分の主な変更点 ③配偶者控除及び配偶者特別控除の適用範囲」にて、後述します。

3.年末調整の平成30年分の主な変更点

①控除申告書が2枚に

 平成29年分の「給与所得者の配偶者特別控除申告書」が平成30年分からは「給与所得者の配偶者控除等申告書」に改められました。これに伴い、平成29年分の「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」(兼用様式)については、平成30年分は、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2種類の様式となっています。

②控除証明書の電子的交付が可能

 平成30年分より、保険料控除申告書に添付すべき生命保険料控除及び地震保険料控除に関する証明書の範囲に、電磁的記録印刷書面(電子証明書に記録された情報の内容と、その内容が記録された二次元コードが付された出力書面)が加えられました。

③配偶者控除及び配偶者特別控除の適用範囲

 平成30年分より、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用範囲が変更となりました。具体的には①合計所得金額が1,000万円を超える所得者は、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用を受けることができなくなり(従来:給与所得者の合計所得金額の制限無)、②対象となる配偶者の合計所得金額が38万円以下である場合に配偶者控除、38万円超123万円以下の場合に配偶者特別控除が受けられることとなりました(従来:配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得は38万円超76万円未満)。

4.年末調整の平成30年以前より継続の変更点

①国外居住親族に係る扶養控除等

 非居住者である親族(以下、「国外居住親族」)に係る扶養控除、配偶者控除、障害者控除又は配偶者特別控除(以下「扶養控除等」)の適用を受ける居住者は、その国外居住親族に係る親族関係書類(*1)や送金関係書類(*2)を源泉徴収義務者に提出又は提示する必要があります。

※1:親族関係書類とは戸籍の附表やパスポートの写しなど、国外居住親族が居住者の親族であることを証するものをいいます。
※2:送金関係書類とは金融機関やクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、居住者がその年において国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。

②復興特別所得税

 所得税の源泉徴収義務者は、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する際は、復興特別所得税を併せて徴収し、国に納付しなければなりません。このため、年末調整において年税額を計算する際にも、復興特別所得税を含めた年税額(以下、「年調年税額」)を算出する必要があります。復興特別所得税額は、所得税額の2.1%相当額とされていることから、年調年税額は算出所得税額から住宅借入金等特別控除額を控除した後の税額に102.1%を乗じて算出することとなります。

5.年末調整のその他事項

①中途就職者の年末調整

 年の中途で就職した人が、就職前に他の会社で給与を受け取っていた場合に、前の会社で扶養控除等(異動)申告書を提出していれば、前の会社の給与も含めて年末調整することとなります。よって、その人が前の会社から交付を受けた「給与所得の源泉徴収票」などで支払を受けた給与金額や徴収された所得税額等を確認する必要があります。

②年末調整後に扶養者の人数等が異動したとき

 年末調整後に、控除対象扶養親族の数が異動した場合、異動事項の申告を受け、その異動後の控除対象扶養親族の数などを基にして年末調整のやり直しをすることができます。この年末調整のやり直しができるのは、「給与所得の源泉徴収票」を受給者に交付することとなる翌年1月末日までです。但し、徴収不足税額がある場合の年末調整のやり直しについては、その異動があった年の翌年1月末日以降であっても行う必要があります。

③年末調整後に追加の給与支払いがあったとき

 年末調整後に本年中に本年分の給与を追加して支払うこととなった場合には、この追加支給額を先の年末調整の対象となった給与の総額に加えて年末調整のやり直しをすることになります。しかし、翌年になってから給与の改定が行われ、本年にまで遡って支給されることになった場合の新旧給与の差額は、その給与の改定が行われた年分の所得となりますから、本年分の年末調整をやり直す必要はありません。

④2年目以降の住宅ローン控除申請

 住宅借入金等特別控除の適用が受けられる場合、控除を受ける最初の年分については、確定申告をする必要がありますが、2年目以後は、年末調整でこの特別控除の適用を受けることができます。この場合、税務署から送付される「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」と金融機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を勤務先に提出する必要があります。

⑤2箇所給与

 会社の役員を兼務したり、会社員や契約社員とパートを掛け持ちしたりするなど、2か所以上の会社から給与をもらっている人は、原則として確定申告が必要となります。この場合には、その人に支払う給与が主たる給与になるか、従たる給与になるか、確認をすることが必要です。主たる給与とは、扶養控除等(異動)申告書を提出している人に支払う給与をいいます。従たる給与とは、それ以外の給与をいいます。主たる給与については年末調整がなされますが、従たる給与については年末調整できませんので、所得者本人が2つの収入を合算し総額で確定申告することにより、所得税及び復興特別所得税の精算を行う必要があります。

6.おわりに

 今回は年末調整について今年分の変更点を交えながら、特に留意すべき点を意識してご説明しました。配偶者控除及び配偶者特別控除については、今年度からの変更により影響を受ける方も多いかと思います。今一度、必要な控除内容を確認しつつ、年末調整時に役立てて頂ければと思います。

執筆者 前川 研吾
汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ株式会社 代表取締役
公認会計士(日米)・税理士 前川 研吾

北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。税理士としてグループの税務業務を統括する。
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