外形標準課税について

1.はじめに

 会社は法人税を始めとして、法人住民税、法人事業税、消費税、所得税、印紙税などと様々な税金を納める必要があります。今回はその中でも法人事業税、とりわけ「外形標準課税」について、具体的なケースを踏まえつつ、見ていきたいと思います。

2.外形標準課税の概要

 法人事業税は大きく「所得割」「付加価値割」「資本割」の3つから構成されています。そのうち、外形標準課税とは、主に資本金等や、従業員数、事業所の面積などの「事業活動規模」を基に計算される「付加価値割」及び「資本割」部分をいいます。

 企業は企業活動を行うにあたって、地方自治体から様々な公共・行政サービスを享受しており、当該サービスの対価として企業に課される税金が今回のテーマである法人事業税ですが、外形標準課税導入前の法人事業税は原則として法人の所得のみを課税標準としたものでした。よってどんな大企業であっても赤字であれば、事業税の支払が免除されていたことが、かねてから問題視されていました。赤字企業であっても企業として存続している限り、地方行政サービスを受けていることには変わりなく、法人事業税は法人の事業活動規模に従った基準により課されるべきとの考えから、外形標準課税が導入されました。

3.外形標準課税の対象法人

 外形標準課税の対象法人は、所得に課税される法人で事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人です。但し、公共法人等、特別法人、人格のない社団等、みなし課税法人、投資法人、特定目的会社、一般社団法人及び一般財団法人は除きます。

 上述の通り、外形標準課税の対象法人となるか否かは、事業年度終了日現在における資本金又は出資金の額で判断されることから、期中の増資や減資等はその判断に勘案されません。

 また当該判断は、「資本金」のみで1億円を超えているか否かでなされることから、資本金等の額(資本金+資本準備金などの金額、下記5参照)はその判断に影響を与えません。

4.付加価値割

 付加価値割の課税標準は「付加価値額」=「収益配分額」±「単年度損益」となります。ここに「収益配分額」とは「報酬給与額(給与・賞与・手当・退職金等の合計額)」、「純支払利子(支払利子から受取利子を差し引いた額)」、「純支払賃借料(支払賃借料から受取賃借料を差し引いた額)」の合計で計算されます。単年度損益に欠損金が生じた場合は、「収益配分額」から「単年度損益」を差し引くこととなります。

 以下、「収益配分額」の構成要素である「報酬給与額」、「純支払利子」、「純支払賃借料」について、いくつかの具体的なケースも交えてみていきます。

(1)報酬給与額

 報酬給与額は、雇用関係等に基づき労務の提供の対価として支払われるものであり、法人税で損金に算入され、かつ、所得税で給与所得又は退職所得とされる性質のものといえます。

①未払給与

 事業年度末に未払給与として計上された金額も、法人税の所得の計算上、債務確定により損金となる場合は、当該事業年度の報酬給与額に含まれます。

②仕掛品に給与が含まれる場合

 棚卸資産、有価証券、固定資産又は繰延資産については、支出した事業年度において課税標準に算入します。よって期末時点で仕掛品などの棚卸資産に含まれる給与や利子及び賃借料等についても、法人税の損金事業年度ではなく、実際に支出される事業年度において課税標準に算入することとなります。

③賞与引当金・退職給付引当金

 報酬給与額は法人税の所得の計算上損金の額に算入されるものが対象となります。よって賞与引当金や退職給付引当金などを繰り入れた段階では、会計上は費用であっても法人税においては債務未確定であれば損金にならず、各々の引当金を取崩して支給した時に損金となり、報酬給与額に含まれます。

④社宅

 建物を借り上げて従業員に社宅として賃貸し、所得税で給与課税されている場合であっても、借り上げ社宅に係る賃借料は支払賃借料又は受取賃借料となり、報酬給与額には含まれません。

 一方、自社所有の建物を社宅として使用している場合は、借上げ物件の社宅と異なり、支払賃借料との調整がないため、法人税で損金算入され、かつ、所得税で給与課税されている部分については報酬給与額に含めます。なお、従業員からの社宅負担金の受取額は受取賃借料に含めます。

⑤出向者

 出向元法人が出向者に対して支給した給与のうち、出向先法人から受け取った給与負担金がある場合は、給与負担金分は報酬給与額から控除できます。一方、当該給与負担金は実質負担者である出向先法人の報酬給与額となります。例えば、出向元法人から出向者に対して50万円の給与が支給され、出向先法人から出向元法人に給与負担金50万円の支払いがある場合、各法人での報酬給与額は出向元法人0円(50万円-50万円)、出向先法人50万円となります。

 一方、出向先法人が出向元法人に出向期間に対応する退職給与負担金相当額を支出している場合は、その退職給与負担金相当額は出向先法人の報酬給与額に含めません。退職給与等については、直接従業員に支払う者である出向元法人が実際に当該出向者に退職給与等を支払う事業年度において、支払った退職金額にて報酬給与額に含めることとなります。

(2)純支払利子

 純支払利子は、事業年度において法人が支払う、又は受け取る利子のうち、法人税の所得計算上、損金又は益金算入されるものをいいます。

①租税にかかる利子税・延滞税

 申告期限の延長に係る利子税及び延滞金(約定利息としての性質を有するもの)については、法人税において損金算入されるため、支払利子の対象となります。一方、不申告や納期限後の納付に係る延滞金(遅延利息としての性質を有するもの)については、法人税において損金算入されないため、支払利子には含まれません。

②資産除去債務に係る利息費用

 資産除去債務に係る利息費用は、将来発生する資産の除去に係る費用を見積計上したものであり、現実にその対象となる元本や債権者が存在するものではないことから、法人税の所得計算上も損金の額に算入されず、法人が支払う負債の利子に該当しないため、支払利子とはなりません。

(3)純支払賃借料

  純支払賃借料は、土地又は家屋を連続1月以上使用又は収益する権利の対価として受払いされる金額のうち、法人税の所得計算上、損金又は益金算入されるものをいいます。

①荷物の保管料

 荷物の保管契約を結び保管料を支払っている場合、賃貸借契約のように対象となる場所を自由に使用できるわけでなくとも、契約等において1月以上荷物を預け、一定の土地又は家屋を使用又は収益していると認められる場合には、純支払賃借料に含まれます。

②共益費

 土地又は家屋の賃貸借契約や請求書等により、共益費などが賃借料と明確に区分されている場合には、当該共益費等は支払賃借料及び受取賃借料には含まれません。

5.資本割

 資本割の課税標準は「資本金等の額」となります。「資本金等の額」とは、法人税法に規定する資本金等の額(又は連結個別資本金等の額)に無償増減資がある場合の加減算をした金額と、資本金及び資本準備金の合算額又は出資金の金額とを比較して大きい金額をいいます。よって一般に「資本金」及び「資本準備金」に組織再編等、自己株式取得、資本の払戻し等の一定の調整を行った金額と考えられます。

6.その他

(1)課税標準の区分計算をする法人(電気供給業等)

 外形標準課税の対象法人は原則として所得に課税される法人であります。ここに収入金額課税事業と所得等課税事業を合わせて行う法人においては、どのように取り扱うのでしょうか。

 まず外形標準の対象となるか否かの判断は、あくまで事業年度終了日現在の全社ベースの資本金の額により行うこととなります。そして外形標準課税対象法人となる場合は、法人事業税は、所得割額、付加価値割額、資本割額及び収入割額の合算額となります。各々の課税標準は、原則として収入金額課税事業及び所得等課税事業に区分経理して算定された金額を基礎としますが、両事業に係る共通経費などは、両事業の売上金額等最も妥当と認められる基準によって按分します。資本割については、資本金等の額に事業年度末における全従業員数に占める収入金額課税事業以外の事業に係る従業員の割合を乗じて得た金額を課税標準とします。

(2)中間申告について

 外形標準課税の対象法人は、法人税において中間申告義務がなくとも、事業年度の期間が6月を超えるときは法人事業税について中間申告の義務があります。予定申告又は仮決算に基づく中間申告のどちらの方法によるかは法人の選択となりますが、連結法人については予定申告の方法のみとなります。

7.おわりに

 今回は法人事業税の中でも、外形標準課税にスポットを当ててご説明しました。会社の所得の有無に関係なく、事業活動規模に従って課される外形標準課税は地方行政サービスの対価という意味で合理的なものといえます。昨今の法人税率の引き下げに伴い、外形標準課税については拡大が図られています。今後の税改正に留意しつつ、制度理解の際の参考として頂ければと思います。

執筆者 前川 研吾
汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ株式会社 代表取締役
公認会計士(日米)・税理士 前川 研吾

北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。税理士としてグループの税務業務を統括する。
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