マイナンバーカードの現状と今後

1.はじめに

 2015年10月にマイナンバー制度が導入され、2016年1月からマイナンバーカードの交付が開始されてから4年が経過しました。しかしながら、マイナンバーカードの普及率は人口の約15%弱(2019年11月現在。総務省HP)、即ち7人に1人程度の割合に留まっています。一方、国では、2023年3月末までに、ほとんどの住民がマイナンバーカードを保有することを目指し、2021年3月からは、マイナンバーカードの健康保険証としての利用の仕組みを本格運用するなど、マイナンバーカードの利便性、保有メリットの向上、利活用シーンの拡大を図り、率先して取得促進策を推進していくことが予定されています。今回はマイナンバーカードの概要から、現状、今後の動向について順に見ていきたいと思います。

2.マイナンバーカードの概要

 マイナンバーカードとは、本人の申請により交付されるプラスチック製のICチップ付きカードで、氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー(個人番号)が記載された顔写真付のカードです。

 マイナンバーカードは、本人確認のための身分証明書として利用できるほか、自治体サービス、e-Tax等の電子証明書を利用した電子申請等に利用できます。ここに電子証明書とは、①署名用電子証明書と②利用者証明用電子証明書の2種類があり、利用局面や何を証明するものなのかを以下にまとめてみました。

電子申請書

利用局面 何を照明? 15歳未満の方への取扱い
署名用電子証明書 e-Taxの確定申告等、文書を伴う電子申請等 「作成・送信した電子文書が、あなたが作成した真正なものであり、あなたが送信したものであること」を証明 実印に相当するため、住民基本台帳カードにおける取扱いと同様に原則として発行不可
利用者証明用電子証明書 マイナポータルへのログイン、コンビニ交付サービス等 「ログイン等した者が、あなたであること」を証明 法定代理人がパスワードを設定することで発行可能

 マイナンバーカードの有効期間は、発行の日から10回目の誕生日までとされており、署名用電子証明書及び利用者証明用電子証明書の有効期間は、発行の日から5回目の誕生日までとされています。但し、20歳未満の方のマイナンバーカードの有効期間は、容姿の変動が大きいことから、顔写真を考慮して5回目の誕生日とされています。

3.マイナンバーカードの現状

 上述通り、マイナンバーカードは、身分証明書として利用できる他、各種行政手続きのオンライン申請、e-Tax等の電子申請、コンビニなどで住民票、印鑑登録証明書などの公的証明書の取得に利用できます。しかし、これらのメリットだけでは、日常生活における必要性は乏しく、それゆえにカード取得率が低いともいわれています。現状では国民側のメリットよりも行政側の事務効率化といったメリットの方が大きいといえるかもしれません。

4.マイナンバーカードの今後の動向

 今後、マイナンバーカードの利便性、保有メリットの向上、利活用シーンを拡大するために、国は以下の表に示した通り、様々な施策を計画しています。

項目 主な内容
デジタル・ハローワーク・サービスの推進 教育訓練給付金の電子申請の推進、各種申請書類の簡素化、2022年以降マイナンバーカードのハローワークカードとしての利用、2021年1月以降ハローワークインターネットサービスにて、職業紹介・職業訓練受講の履歴確認、マイナポータルとの連携などオンラインサービスを充実
デジタル・キャンパスの推進 大学等における職員証・学生証へのマイナンバーカードの活用、事務処理の効率化、マイナンバーカードの教員免許管理への活用
納税手続のデジタル化の推進 年末調整・確定申告手続に必要となるデータの一括取得、各種申告書への入力・添付の自動化
建設キャリアアップシステムとの連携 マイナンバーカードでの建設キャリアアップシステムの利用、登録情報の自動入力等、建設キャリアアップシステムとマイナポータルとの連携
各種カード、手帳等との一体化等によるデジタル化の推進 健康保険証利用の他、お薬手帳、ハローワークカード、ジョブ・カード、教員免許状等との一体化、運転経歴証明書、障害者手帳等のマイナンバーカードとの一体化検討、民間サービスにおける社員証や診察券等への活用
公的サービスでの利用拡大の推進 高齢者向けの公共交通サービスにおける資格確認や精算、検診結果や予防接種情報等の母子保健情報を閲覧できるサービスでの本人確認、大規模音楽・スポーツイベント等でのボランティアの入場管理における本人確認、旅券発給申請における戸籍情報の添付省略等
マイナンバーカード読み取り対応スマートフォンの拡大 通信事業者や端末メーカー等に対する働きかけにより、いつでもどこでもスマートフォンを用いて公的個人認証サービスを利用できる環境の整備

参考:デジタルガバメント閣僚会議 マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/egov/

5.納税手続のデジタル化

 上記「3. 納税手続のデジタル化の推進」について、少し掘り下げてみてみます。既にマイナンバーカードを利用した電子申告を行っている方もいると思いますが、今後は更に申告手続等の効率化が図られます。

納税手続のデジタル化の推進

e-Tax等の自動入力情報の拡大 年末調整・確定申告手続に必要な情報(保険料控除証明書、住宅ローン残高証明書、医療費情報、寄付金受領証明書、収入関係情報等)について、マイナポータルにて一括入手し、各種申告書へ自動入力できる仕組みを構築し、2020年10月より開始し、順次入力情報を拡大予定。
確定申告等に関するマイナポータルのお知らせ機能の積極的活用 確定申告等に関する情報や各種説明会の開催案内等について、マイナポータルから閲覧可能とする。
電子納税証明書の利用拡大 マイナンバーカードを用いて自宅等で納税証明書の出力を可能とする仕組み整備、電子的納税証明書の金融機関における利用拡大

参考:デジタルガバメント閣僚会議 マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/egov/

6.おわりに

 今回はマイナンバーカードについて、概要や現状、今後の動向についてみてみました。今後数年間で、行政手続きを始めとした各種サービスのデジタル化は急速に進んでいくでしょう。今年9月からはマイナンバーカードを活用した消費活性化策(マイナポイント)も始まります。今まで不要と思っていたマイナンバーカードも、持つと便利➡持たないと損をする➡必要不可欠となる時代が間近にきているかもしれません。その一方で、マイナンバーカードに取り込まれる個人情報も着実に拡大していくことが予想されます。自分の情報は自分で管理し、守ることが今まで以上に重要になるでしょう。また、IT化に伴い、各種制度・手続は随時変更になることが予想されることから、情報収集には常に気を配る必要があります。今回のコラムがその際の一つの参考としていただければ幸いです。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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