新NISAの開始に備えて① ~資産運用をわかりやすく~

新NISAの開始に備えて① ~資産運用をわかりやすく~

1.はじめに

 2024年1月からNISAが新たな制度としてリスタートします。2014年1月から始まったNISA制度の利用者は年々増加し、2022年3月時点で一般NISAは1,090万口座、つみたてNISAは783万口座となっています。

 NISAは簡単にいうと、国が定めた投資信託の運用益に対する税制優遇制度です。投資というとハードルが高く感じる方もいらっしゃるかと思いますが、NISAは資産形成する手段としては非常に有用な手段です。

 そこで今回から2回にわたって、そもそも資産形成の中での投資信託及びNISAの位置づけ、メリット・デメリット、2024年1月より新しく始まる新NISA制度との違いなどを解説していきたいと思います。

2.資産形成が注目される背景

 まず初めに、資産形成が注目される背景からお話ししたいと思います。

 資産形成の手段としては、大きく“資産運用”と“貯蓄”に分かれます(貯蓄を資産運用の一つとする考え方もあります)。ひと昔前までは資産運用は経済的にゆとりがある人が行うものというイメージが強く、一般的には資産形成は貯蓄で行われていました。それでも金利が高かった時代は一定程度の資産の増加が望めました。また、老後のための資産形成としては年金制度も大きな頼りの一つとできました。

 しかし、超低金利時代が到来し、年金も当てにはできないと考える人が多くなりました。また給与は他の先進国に比して低い状態が続いており、通常の給与所得や貯蓄のみで、老後も見据えた資産形成を行うのは厳しい状況になりつつあります。こうした背景のもと、更に複雑化する社会情勢から見ても、将来を見据えた資産形成ニーズが高まっています。

3.資産運用の種類

 資産運用にしても貯蓄にしても、資産形成の際には「お金を使ってお金を増やす」というのがベースの考え方です。銀行貯蓄の場合には、お金を預けることで、金利という形でお金を増やしますが、他の資産運用でも、特定の方法でお金を預けるなどすることで、その預けた額等の諸条件に則ってお金を増やします。

 資産運用には様々な手段がありますので、例としていくつかあげてみます。

債権投資

 国や企業がお金を借りる際に発行する債券に対して投資します。国債や社債等の種類がありますが、いずれも基本的には利子を受け取ることができ、償還日に元本が返済されます。債権の発行元が破綻すると元本や利息の支払いを受けることができないというリスクがあります。

株式投資

 株式会社が資金調達する有価証券を売買するのが株式投資です。購入した会社の株価が上昇した場合は大きな利益が得られることもあります。また、配当金や株主優待を受けられる場合もあります。しかし、株価が下がる可能性も高く、損をしないためには社会情勢や市場動向、企業業績を分析する力が求められます。

投資信託

 投資家から集めた資金を運用のプロが株式や債券などに投資して運用する金融商品です。投資信託は複数の株式や債券に分散投資したものが一つの商品となっているので、リスクが分散されます。

保険

 貯蓄性のある生命保険は資産運用の手段の一つとなります。また、学資保険や個人年金保険など、目的にあった運用を行えることや、保険によっては生命保険料控除として税制面で優遇措置を受けられます。ただし満期より前に解約すると元本割れや違約金発生のリスクがあります。

iDeCo

 私的年金制度の一つです。iDeCoへの掛金は投資信託を中心として運用されます。掛金は全額所得控除の対象となるため所得税を節税でき、運用益には課税されません。また、年金として受け取る時も退職金や年金として税負担が軽減されます。一方、老後資金を備えるための制度なので原則60歳までは引き出すことができません。

不動産投資

 マンションなどの賃貸物件に投資し、毎月の家賃収入を得るのが不動産投資です。手元資金がそれほどなくても、不動産投資を目的としたローンで金融機関が投資資金を貸してくれることもあります。そして入居者がいる限りは毎月家賃収入を得ることができるため、給与や年金以外の収入を確保することができます。しかし、空室ができてしまえば収入は0になりますし、災害等による修繕費が発生するリスク等、考慮しなければならいないリスクは多いといえます。

 このほかにもFXや金投資など様々な投資商品がありますが、投資の場合は基本的にどの手段を選んでも元本割れのリスクは避けられません。リスクとリターンの関係を考えて判断しなければなりませんが、総合的に勘案して初心者でもはじめやすい運用手段は投資信託といえるでしょう。その理由を、メリット・デメリットを通してみていきたいと思います。

4.投資信託のメリット・デメリット

メリット

 まず投資信託の最大のメリットは分散投資であるという点です。投資信託を含むほとんど全ての資金運用では元本割れのリスクはあります。しかし、そのリスクを最小限に抑えるために分散投資が有効なのです。

 例えば単一の事業しか行っていない会社がその事業で失敗してしまえば会社としても失敗となってしまいますが、複数の事業を行っている会社であればA事業が失敗してもB事業やC事業でカバーすることができたりします。

 それと同様に、投資信託では、投資したお金を特定の一社に投資するのではなく、自動的に分散して投資を行えます。

 それに加えて投資信託の場合は、その分散投資先についても投資のプロに任せることができるため、初心者でも知識は必要ありません。また、多数の投資家からの資金をプロが投資する構造であるため、投資家1人の投資額は少額でも始められます。

デメリット

 前述したように投資信託も元本割れのリスクはあります。また、運用信託報酬などの手数料がかかる点もデメリットの一つです。手数料については金融機関や商品によって異なるので投資する際は、それらを考慮しなければなりません。

5.NISAのメリット・デメリット

 ここからはNISAのメリットについてご紹介します。これらのメリット・デメリットについては現行NISAでも新NISAでも同様です。

メリット

 NISAのメリットの内、代表的なものは利益が非課税となる点です。投資信託で得た利益は通常、株式や債券投資と同様に、譲渡所得として所得税が課税されます。しかし、NISA口座で投資した投資信託から得た利益は課税されません。税率は20.315%(2023年9月現在 分離課税選択の場合)ですので大きな影響といえるでしょう。特につみたてNISAのように長期で運用する場合、利益を得られる可能性は高くなるため非課税のメリットは非常に大きいです。投資に資金をまわすのであれば、間違いなく第一選択肢となるでしょう。

 また、つみたてNISAでは一定金額を定期的に購入し続けるため、時間という観点からもリスク分散できます。定額を買い続ける、つまり価格が安いときには多く、価格が高いときには少なく買うことになるため、積立期間が長ければ長いほど購入価額が平均化されリスクが分散されます。

デメリット

 一方、デメリットとしては、前項で述べたように、やはり投資である以上、運用がうまくいかなかった場合やコロナショックの様な事態が発生した場合には元本割れのリスクはあります。

 また通常の証券口座では、ある証券口座から損失が生じて、他の口座で利益が生じた場合、損益を相殺させることができます。しかし、NISA口座から生じた損失と他の証券口座で生じた利益は相殺させることができず、他の投資で利益が出た場合には課税されてしまいます。

 これは、NISAの他に証券投資を行っている、又は行う予定がある方は最も留意すべきデメリットです。例えばA証券口座で2,000の売却益、B証券口座で1,000の売却損が出たとします。この場合、両方とも通常の証券口座であった場合、2,000+(-1,000)=1,000に対して課税されますが、B証券口座がNISA口座であった場合、損益通算することができず2,000に対して課税されるということです。

 また、長期運用を目的としたつみたてNISAに関していうと、保有商品をいつでも売却することはできますが、元々長期運用をすることで運用益を得ることを目的とした設計なので短期で売却する場合は運用益を得られる可能性は低くなります。つまり短期で利用する可能性のある資金は実質的にNISAへの投資には向かないため、長期的に毎年いくらなら運用にまわすことができるかと考えることが大切です。

6.おわりに

 投資は始めるまではハードルが高い部分もあるかもしれません。しかし、投資信託であれば初心者でも比較的容易に始めることができます。そして投資信託を始めるのであれば、NISAを利用しないのはもったいないともいえるかもしれません。

 デメリットを加味する必要はありますが、NISAの他に投資を行わないのであればデメリットは非常に少ないといえます。年代やライフプランによって、投資すべきタイミングや金額は異なります。そして、先行きが不透明な時代において遠い先の将来までを計画し資産形成することは難しいですが、不透明だからこそリスク分散する考え方が重要となります。

 次回は現行NISAと新NISAを具体的にみていきます。すでにNISAを始めている方にも確認いただきたい点がありますので、ぜひチェックしていただきたいと思います。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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