令和6年税制改正大綱のポイント② ~所得税・消費税~

1.はじめに

 前回は令和6年税制改正大綱の中から、法人税に関連するポイントをご紹介しました。今回は消費税や個人所得税に関連する改正論点をご紹介したいと思います。

 まずは消費税からご紹介していきます。

2.インボイス制度の円滑な実施に向けた所要の措置

 インボイス制度が開始されたため、納税者や税理士の事務負担が増大します。そのため、令和6年度の税制改正においても追加で、より円滑な申告が行われるよう、所要の措置がとられています。

① インボイス不要取引に係る帳簿記載事項の省略

 帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる、自動販売機及び自動サービス機による税込3万円未満の少額の課税仕入れについては帳簿への仕入先の住所等の記載は不要となります。

② 消費税の経理処理方法の明確化

 簡易課税制度又はインボイス制度における2割特例を適用する事業者が税抜経理方式を採用している場合について、令和5年10月1日以後に国内において行う課税仕入れに係る支払対価の額に、110分の10(軽減税率対象の場合は108分の8)を乗じた金額を仮払消費税等とすることが認められます。

3.プラットフォーム課税の導入

 デジタルサービス市場が拡大していますが、プラットフォームを介して国外事業者が行う役務提供については国税局の調査・徴収が困難とされていました。こうした租税回避に対し、諸外国でも導入されているプラットフォーム課税が日本でも導入されます。

 以前よりスマートフォンアプリ等を販売する事業者が国内にある場合は消費税が納められていましたが、海外に拠点がある場合は適切に納税されていないケースが問題となっていました。そこで海外事業者がアプリストア等のプラットフォームを介して日本の消費者にアプリを販売した場合、プラットフォームを運営している企業が販売をしたとみなして消費税の納税義務を課すという新たな制度です。

4.国外事業者の事業者免税制度の特例の見直し

 現行の事業者免税制度では、基準期間における国内の課税売上高が1,000万円以下の事業者については消費税の納税義務が免除されていますが、本来の趣旨に沿わない形で国外事業者により行われている事業者免税点制度を利用した租税回避を防止するため、下記の事業者免税点制度における特例の見直しが講じられます。

① 特定期間の特例

 基準期間(前々事業年度)の課税売上が1,000万円を超えていなくても、特定期間(全事業年度の前半6か月)における課税売上高又は給与等支払額が1,000万円を超えている場合は、納税義務が免除されないという特例措置があります。特例措置判定に際して、国外法人は給与等支払額の判定対象外となります。

② 新設法人の特例

 資本金1,000万円以上の新設法人に対する納税義務の免除の特例について、基準期間を有する場合も、外国法人は国内における事業の開始時に本特例の適用の判定を行います。

③ 特定新規設立法人の特例

 資本金1,000万円未満の特定新規設立法人に対する納税義務の免除の特例について、本特例の対象となる特定新規設立法人の範囲の見直しが行われます。国外分を含む収入金額が50億円超である事業者が、「直接又は間接に支配する法人」を設立した場合はその法人を加える他、上記②と同様の判定を行うこととなります。

 上記に加え、その課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者については、簡易課税制度及びインボイス制度における2割特例(インボイス制度を機に免税事業者から適格請求書発行事業者として課税事業者になった者について、仕入税額控除の金額を売上税額の8割に相当する金額とすることができる、つまり売上額の2割を納税する制度)の適用は認められません。

5.ストックオプション税制の利便性の向上

 スタートアップ企業の成長を税制面から後押しするため、税制適格ストックオプションの利便性や要件緩和が実施されます。

①下記の要件を満たすストックオプションを上場前に権利行使する場合、証券会社への株式の保管委託が不要となる、つまり自社での管理が可能となるため非上場会社で活用しやすくなります。

・権利行使により交付される株式が譲渡制限株式であること
・ストックオプションを発行した会社自身により当該譲渡制限株式の管理がされること

②年間の権利行使限度額の大幅な引き上げ

 行使限度額が現行の1,200万円から以下の通りに引き上げられます。

・設立5年未満 ⇒ 2,400万円
・設立5年以上20年未満である非上場会社 ⇒ 3,600万円
・設立5年以上20年未満であり上場5年未満の上場会社 ⇒ 3,600万円

 上場後5年以上の上場会社や設立から20年以上の非上場会社及び上場会社については現行の1,200万円が限度額となります。

③社外高度人材への付与要件の緩和・認定手続の軽減又は撤廃

 付与対象とされる外部の協力者の範囲が拡大されます。

・認定対象企業の要件のうち、ベンチャーキャピタル等からの出資を受ける時点での「資本金の額が5億円未満且つ従業員の数が900人以下」という要件が撤廃されます。
・適用対象者となる社外高度人材の要件のうち、国家資格を有する専門家等(国家資格保有者、博士の学位保有者、高度専門職の在留資格をもつ在留者)の実務要件が撤廃されます。また、上場企業の役員の経験は3年以上から1年以上に短縮されます。さらに教授及び准教授や上場会社の重要な使用人として1年以上実務経験のある者も追加されます。

6.所得税・個人住民税の定額減税

 デフレマインド払拭のため、一時的な措置として、令和6年度分の所得税及び個人住民税の定額減税が実施されます。

減税額:納税者及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、住民税1万円
対象者は:令和6年分の所得税・住民税に係る合計所得金額が1,805万円以下の者

 減税の時期としては、令和6年6月の源泉徴収税額から順次控除されます。6月に控除しきれない場合は翌月以降、順次控除されていきます。

7.おわりに

 前回から2回にわたり令和6年度税制改正大綱のポイントをご紹介しました。

 令和6年度の改正に関して、広く影響があると考えられるのは経理に関してはインボイス制度の特例の改正、個人に関しては定額減税かと推測されます。インボイス制度については混乱が引き続き発生すると考えられるため、取扱いに迷うことがあれば国税庁のFAQのページをチェックする等、しばらくは注意する必要があるかと思います。

 なお、今後の国会における改正法案審議が実施されていく過程で、一部項目の修正等が行われる可能性があることにご留意ください。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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