入国前結核スクリーニング

入国前結核スクリーニング

1.はじめに

 在留資格「特定技能」が創設されて以来、建設現場における外国人の活躍の場は日々広がりを見せています。令和6年12月現在、特定技能の建設分野で在留している外国人の数は38,365人にのぼり、これは統計が出ている特定技能の12分野中で4番目に多い数字です。また、特定技能1号の在留者を国籍別に見ると、上位からベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、中国、ネパールの順となっています。このように、建設現場には多種多様な国籍の外国人材の活用が欠かせないものとなりつつあります。そうした中、外国人材を海外から受け入れるにあたり新たな制度として、「入国前結核スクリーニング」が導入されることになりました。

2.背景・必要性

 出入国在留管理庁、外務省及び厚生労働省が発出している「入国前結核スクリーニングの実施に関するガイドライン」によると、

我が国における結核患者の発生状況としては、り患率(人口10万人あたりの新規発病患者数)及び患者数ともに年々減少傾向にあるが、いまだに国内で年間約10,000人が発症し、約1,500人が死亡している。近年、我が国においては外国生まれの患者数が増加傾向にあり、令和5年の新登録結核患者数(10,096人)のうち外国生まれの患者数は1,619人となっている。特に、り患率の高い国の出生者が日本滞在中に結核を発病する例が見受けられる。
このような我が国における結核患者の発生状況に鑑みて、特に我が国における結核患者数が多い国から我が国に渡航して中長期間在留しようとする者に対し、結核を発病していないことを求める入国前結核スクリーニングを導入し、結核を発病していないことを証明できない者の入国を認めないこととする。

 とされており、このような背景及び必要性から本制度が運用されることとなりました。

3.対象国及び対象者

 対象国はフィリピン、ベトナム、インドネシア、ネパール、ミャンマー、中国の6か国であり、これらの国籍保有者が対象となります。この国籍に見覚えがある方も多いのではないでしょうか。実は「1.はじめに」でご紹介した特定技能1号在留者の上位国に該当しています特定技能外国人は当面の間対象外とされておりますが、本制度は将来的に建設業界にも関連する重大な事項になりかねないということです。 対象者は上記対象国の国籍を保有し、中長期在留者として並びにデジタルノマドビザ及びその配偶者として我が国に入国・在留しようとする者です。

4.実施方法及び審査方法

 入国希望者は対象国にある指定検診医療機関で、医師の診察及び胸部レントゲン検査を受ける必要があります。ここでいう指定検診医療機関とは日本政府が指定した医療機関を指します。当該検査で結核を発病していないと判断された者は、指定検診医療機関から結核非発病証明書が交付されます。

 この結核非発病証明書を日本で行う在留資格認定証明書交付申請時に提出します。原則、在留資格認定証明書交付申請時に結核非発病証明書を提出しない者については、在留資格認定証明書が交付されません。ただし、やむを得ない事情があり、かつ、査証申請時には結核非発病証明書の提出が見込まれるものに限っては、個別に判断されます。

 結核非発病証明書の有効期間は180日間とされており、在留資格認定証明書の申請時のみ有効期限内の結核非発病証明書を提出すれば足ります。ただし、申請者が活動性結核ではないと判断されても、以下のいずれかに該当する場合は、次の者に発行する結核非発病証明書の有効期限は180日間ではなく、90日間となります。

1)申請人の同居者に、胸部レントゲン検査日から遡って2か月以内に感染性の活動性肺結核と診断されたものがいる場合
2)胸部レントゲン検査日から 2 か月以内に感染性の活動性肺結核と診断された者と、密閉された 同じ空間、住居、その他の囲まれた環境を長期間(数日間以上)共有していた者

5.入国前結核スクリーニング開始時期

 入国前結核スクリーニングは、調整がついた対象国から順次開始される予定です。現時点でのスケジュールは以下の通りです。

健診受付開始 結核非発病証明書提出義務付け
フィリピン
ネパール
令和7年3月24日予定 令和7年6月23日予定
ベトナム 令和7年5月26日予定 令和7年9月1日予定
インドネシア
ミャンマー
中国
開始に向け調整中
(※開始が決定され次第公表予定)
左に同じ

出典:出入国在留管理庁・外務省・厚生労働省 入国前結核スクリーニングの実施に関するガイドライン

6.おわりに

 入国前結核スクリーニングは特定技能1号在留外国人の国籍上位国が対象となります。そのため、建設分野における特定技能外国人にも大きな影響を及ぼすことが予見され、雇用する事業主は本制度を理解し必要な手続きを行う必要があります。本制度及び特定技能外国人に関するご質問等がございましたら是非お気軽にお問い合わせください。

近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ行政書士法人
申請取次行政書士
池田 孝太

大学卒業後、事業会社を経て、2017年汐留パートナーズグループに入社。法務事業部においてクライアントに対するリーガル面でのサポートを行う。その後国際コンサルティング事業部にて、多くの外国法人の日本進出、日本での許認可取得、イミグレーション(在留資格)関連業務に従事。外国法人の日本進出案件に関して豊富な知識と経験を有し、また、外国人の在留資格に関する業務についても精通している。様々な許認可に関する業務にも対応可能。申請取次行政書士。

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