データから見る特定技能外国人と建設業分野以外の活用について

データから見る特定技能外国人と建設業分野以外の活用について

1.はじめに

 建設業界においては、長らく担い手不足や技術者の高齢化が課題とされてきましたが、視野を広げると、人手不足が深刻な業界が他にも数多くあります。例えば、特定技能外国人の受入分野はその代表例の一つです。今回は、特定技能外国人に関するデータや、建設業界以外の分野における外国人の活用に着目し、貴社における外国人活用を検討する際の一助となる情報をご紹介します。

2.特定技能制度の現況について

 出入国在留管理庁によると、令和7年12月時点における特定技能外国人数は全体で390,296人であり、増加率は16.1%となっております。一見すると順調な伸び率のように感じられますが、少子高齢化による労働力不足に悩んでいる国は日本だけではありません。韓国、台湾も同様です。韓国と台湾の合計特殊出生率は日本を下回っており、両国とも国内の労働力不足に直面しています。そうした中で、円安や日本語習得が難しさなども影響し、日本が就労先として選ばれない国になりつつあります。これを裏付けるように、特定技能外国人の増加率はやや低下しています。

 次に特定技能1号の状況を数字で見ていきましょう。特定技能外国人としてもっとも在留者の多い国籍はベトナムで41.5%です。次いでインドネシア(22.6%)、ミャンマー(11.6%)、フィリピン(9.3%)、中国(5.6%)となっております。では、どの分野で多くの特定技能外国人を受入れているのでしょうか。1位は飲食料品製造業分野で93,393人、2位は介護分野で67,871人、3位は工業製品製造業分野で56,736人、4位が建設業分野で49,323人、5位は外食業分野で43,869人です。これ以降は、以下の順位となっています。

6位 農業分野 37,952人
7位 造船・舶用工業分野 11,204人
8位 ビル・クリーニング分野 8,395人
9位 漁業分野 4,590人
10位 自動車整備分野 4,560人
11位 航空分野 2,260人
12位 宿泊分野 1,968人
13位 自動車運送業分野 151人
14位 鉄道分野 54人
15位 木材産業分野 15人
16位 林業分野 0人

 特定技能外国人は無制限に受け入れられるわけではなく、受け入れ人数の上限が定期的に設定されています。外食分野については受け入れ人数の上限が見えてきたため、2026年4月13日以降の申請が停止となりました。

 次に特定技能外国人が多い都道府県を見ていくと、1位は愛知県で29,854人、2位は大阪府の25,471人、3位は東京都の25,451人、4位は埼玉県の24,518人、5位は千葉県の23,560人となっており、以降は神奈川県、茨城県、北海道、福岡県、兵庫県と続きます。関東が意外と多い点が印象的です。愛知県は自動車関連産業が盛んなため想像しやすいものの、関東にまんべんなく広く在留している状況を意外と感じた方も多いのではないでしょうか。かつては、特定技能人材というと、農業や漁業などの第一次産業での就業をイメージされることもありましたが、現在は対象分野が広がり、都心部での就労も目立つようになりました。

3.特定技能外国人の声

 特定技能外国人1号は家族を連れてくることはできません。また、日本語能力も必ずしも高いとは限らず、異なる文化の中でのには、受入企業によるサポートが不可欠です。さらに、文化や思想等の理解はもちろんのこと、特定技能制度をそのものを正しく理解し、適切に管理することも求められます。特定技能ガイドブック(出典:出入国在留管理庁)には、日本で懸命に働く特定技能外国人の声が掲載されていますので、その一部を抜粋してご紹介します。

【介護分野】

・EPA 介護福祉士候補者として過ごした4年間で、日本の介護士として働きたいという気持ちが高まり、また、介護福祉士国家試験にもあと7点ということから、再チャレンジしたいと思っていました。
・早期に介護福祉士試験に合格し、インドネシアで、日本で介護士を目指す人たちに、講師をしたり、介護の良さを伝えていきたいです。

【工業製品製造業分野①】

・日本人は皆優しく、会社のイベントも多く、仕事もプライベートも充実して います。
・日本に来るまではとても不安でしたが、先輩や上司が丁寧に教えてくれたので、今では頼りにされていてうれしいです。

【工業製品製造業分野②】

・日本に来たころは苦労ばかりでしたが、仕事をして自分が強くなり、家族を助けていることに気づくことができました。仕事に慣れてきた今、次の目標は、より速く良い製品を作れるようになることです。
・日本人の考え方やマナー、サービス等も学んでベトナムに持ち帰りたいです。日本に来て、自分が思っていた能力以上のことができるようになって成長できたと感じます。

【建設分野】

・初めて技能実習生として日本に来た時は、仕事も生活も覚えることが多くて大変でした。
・再入国してからは日本の風習、文化にも慣れてきてリラックスして生活ができるようになってきました。

3.受入企業の声

 今度は、一般社団法人全国農業会議所の「農業分野における特定技能外国人受入れの優良事例集(令和6年版)」に掲載されている事例の一部を抜粋してご紹介します。

受入効果について

・平成 29 年から受入れを開始して、売上は倍になっている。
・栽培面積や作物は変わっていないが、他の農家さんに栽培してもらった長ネギの収穫や、冬季の玉ねぎの 1次加工など通年で作業できることが、規模拡大につながっている。長ネギは収穫が作業として一番大変で、高齢化により農家さんが減っていく中、実習生も含め多くの従業員が就業していることで、栽培農家からの作業委託の依頼が増えている。
・職場の活性化にも効果があり、年齢差がある日本人従業員も若い実習生や、特定技能外国人に対して孫のように接してくれており、コミュニケーションも上手くとれている。

今後の採用の増員について

・今後も採用は増やしていきたい。また在職する技能実習生が希望したら、採用していきたい。
・転職など人の移動は悪い事だとは思っていない。外国人材が良い会社へ転職できることだから、 逆に当社に来てもらえるチャンスだと思っている。現在のところ、当社を辞めているのは、母国に帰る希望の者だけで、他所の農家さんから当社へ移ってくれた人材も多い。

共生社会に向けた取り組み

・かつては草取りなどあって参加していたが、現在は特に地域での共同作業はない。
・この地域で外国人材を雇用しているのは当社だけであり、近隣の方々は「みんなに食べさせて」とお米を持ってきたり、暖かく接していただいている。
・地域の学校の体育館で、当社のバスケットボールチーム(モンゴル人中心の多国籍)が、高校生のチームと試合をするなど、交流している。

4.おわりに

 このように、各分野はいずれも人手不足に悩まされていますが、外国人人材はどの分野においても増加傾向にあり、採用や定着に向けた各分野の取り組みは非常に参考になります。技能実習制度に代わる育成就労制度も来年からスタートする予定であり、特定技能外国人を受け入れるための環境は今後さらに整っていくと考えられます。人手不足の解消を目指す日本と、日本で働きたいと考える外国人が、ともに共生できる社会が形成されることを切に願います。


執筆者
RSM汐留パートナーズ行政書士法人
行政書士
景井 俊丞

2007年2月、行政書士・司法書士・土地家屋調査士の合同事務所に入所。建設業、宅建業などの許認可に携わるとともに申請取次行政書士として外国人の在留資格に係る申請を年間300件超以上を行う。独立を経て2019年1月にBIG4の行政書士法人にシニアとして入社。外国人の在留資格に関する品質管理や取次、社内教育を行うとともに、許認可を担当。在留資格においてはオリンピック、ラグビーワールドカップ関連を担当。2020年11月にRSM汐留パートナーズ行政書士法人に加入。2021年7月、RSM汐留パートナーズ行政書士法人代表社員に就任。行政書士。

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