マイナンバー制度について③

1.はじめに

前回は、マイナンバー制度が導入された際の人事部への影響についてご説明しました。
導入後に大きな影響が考えられる部署としては、毎月の給与や年末調整等、自社内の従業員の管理を行う人事部があげられますが、マイナンバーは自社内のものだけを管理すればいいというものではありません。
今回は管理部・経理部でマイナンバーの管理が求められる書類等についてご説明いたします。

2.マイナンバーの収集範囲について

マイナンバー制度が導入されることによって、給与等を担当する人事部は社内の管理体制の強化や行政の手続書類への記載等、業務負担は大きくなると言えるでしょう。
しかし、マイナンバーについては 源泉徴収票や支払調書等の法定調書 への記載も求められているため、経理部でも管理方法等の周知をしておく必要があります。
管理方法について社内で徹底させるという点については前回ご説明した通りですが、法定調書へもマイナンバーの記載が必要になることで、業務委託契約をしている社外の個人事業主等の方からも集めなくていけません。
前回の内容の通り、マイナンバーの収集の際には本人確認や番号の真正性を証明するものが必要となります。
こちらは従業員であろうと、社外の方であろうと変わりはありません。
しかし、なかには免許証等の身分証明書の提示を拒否する方も出てくる可能性があります。
その場合には正しいマイナンバーの収集がされず、正しい事務処理が行われない等の事態が発生する恐れがあります。
また、場合によっては、意図的に誤った番号を教えられる可能性も否定できません。
事務処理のミス等を防ぐためにも、事前に社外の方にも本人確認の必要性等について、理解をいただくことが重要になるでしょう。

3.業務上の留意点等

マイナンバーの記載が必要な書類として、以下のような税務署や区役所、年金事務所等へ提出する書類があげられます。

 (1)扶養控除申告書等
 (2)法定調書
 (3)給与支払報告書
 (4)雇用保険
 (5)健康保険等

上記の書類はそれぞれマイナンバーの記載が必要となる時期が変わってきますが、雇用保険の「雇用被保険者資格取得・喪失届」につきましては平成28年1月1日提出分からマイナンバーの記載が必要になりますので、新入社員や退職者のうち対象となる従業員がいる場合には注意が必要になります。
特に、退職者のマイナンバーは、収集する前に退職される可能性がありますので、確実に収集するよう業務フローを確立させましょう。
また、法定調書へもマイナンバーの記載が求められますが、経理部の方々が注意をしておかなければいけない点は以下の部分になるかと思います。
法定調書は種類が多く60種類程になりますが、多くの会社が主に取り扱うものは以下のものです。

 (1)給与所得の源泉徴収票
 (2)退職所得の源泉徴収票
 (3)報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
 (4)配当、剰余金の分配および基金利息の支払調書
 (5)株式等の譲渡の対価等の支払調書
 (6)不動産使用料の支払調書
 (7)不動産譲受対価の支払調書
 (8)不動産斡旋料の支払調書

これらの法定調書については、全てにマイナンバーを記載して税務署に提出をすることが求められています。
源泉徴収票は従業員が対象となりますので社内管理を徹底していれば問題はありませんが、その他の法定調書については、外部の方が対象となりますので管理方法や利用目的等を明確にし、かつ、社内で厳格に管理をすることが重要になります。
なお、源泉徴収票や支払調書のうち、税務署に提出するものについてはマイナンバーの記載が求められていますが、本人へ提出するものについての記載は求められていません。

4.おわりに

今回は、管理部・経理部が作成する書類等に着目してマイナンバー制度導入による影響をご説明しました。
 社内の従業員だけでなく、外部の方のマイナンバーの管理や利用目的等についても明確に し、取り決めた業務フローを守っていくことが会社の信用のためにも必要不可欠です。
管理方法ももちろんのこと、いざ本人確認をしようとして提示を拒否されたときの対策についても、事前に検討する必要があります。
次回は3回に渡ってご説明をしてきましたマイナンバー制度について、広い視点から見た現状の問題点等について検討をしていきます。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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