収益認識基準の会計・税務上の取扱い⑤

収益認識基準の会計・税務上の取扱い⑤

1.はじめに

 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下、「収益認識基準」)及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、「収益認識適用指針」)が公表されたことを受けて、収益認識に係る法人税法の一部改正(以下、改正後の法人税法を「改正法人税法」)、及び法人税基本通達の一部改正(以下、改正後の法人税基本通達を「改正法基本通達」)が行われました。

 前4回にわたり、収益認識基準や改正法人税法及び改正法基本通達の概要から始まり、その会計・税務上の取扱いについて収益認識プロセスに沿ってみてきました。今回は「収益の計上時期」の決定部分につき、会計・税務上の取扱いをみていきたいと思います。

2.会計・税務上の取扱い【収益の計上時期】

 まず、「収益の計上時期」に係る論点とその概要を下記の表に示した後に、個別論点について詳細説明をしていきます。

収益認識プロセス(カテゴリー)別の会計・税務上の取扱いに係る論点

カテゴリー 論点項目 会計上の取扱い 税務上の取扱い(法人税)
収益の計上時期 ①収益計上時期の原則 履行義務の充足時 目的物の引渡し又は役務の提供の日に収益計上するのが原則であるが、それに「近接する日」に収益計上することも可。→基本的に会計と同様。
①-1 一定の期間にわたり充足される履行義務とされる場合 収益認識基準第38項の3要件のうち、いずれかを満たす場合 収益認識基準の3要件で判断することが、基本通達2-1-21の4《履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの》にて記載。∴会計と同様
①-2 一時点で充足される履行義務とされる場合 上記3要件を満たさない場合
(収益認識基準第40項にて5つの判断指標を記載)
上記3要件を満たさない場合
②棚卸資産の販売収益 原則として「支配」の移転時だが、国内取引に限り「代替的な取扱い」として、出荷基準や着荷基準が認められる。 会計と同様。
②-1 委託販売に係る収益 受託業者が顧客に商品を販売した時点 原則は会計と同様だが、引渡しの日に「近接する日」として「仕切精算書到達基準」も認められる。
②-2 検針日基準による収益計上 「代替的な取扱い」に含まれず、今後の検討課題とされている(収益認識適用指針188項)。 検針日基準も、引渡しの日に「近接する日」として認められる。
③ 工事進行基準による収益計上 一定期間にわたり履行義務が充足される場合に包括。但し、「工事契約会計基準」「工事契約適用指針」「ソフトウェア取引実務対応報告」は廃止。 改正なしで、適用可。
③-1 長期大規模工事(工期が1年以上、請負金額が10億円以上)に係る判断 あくまで、収益認識基準第38項の3要件を満たすか否かや進捗度の合理的な見積りができるか否かで判断。 形式的に工事進行基準が強制適用される点で、会計と相違。
③-2 長期大規模工事以外の判断 会計と同様。
④ 進捗度の見積り方法 アウトプット法及びインプット法 インプット法とその他の合理的と認められるものに基づいて計算した割合→会計と同様
④-1 進捗度を合理的に見積もることができない場合 原価の回収が見込まれる場合は「原価回収基準」、初期段階において見積もれない場合は、合理的に見積ることができる時から収益認識。 会計と同様。
⑤ 商品券等の発行収益 受け取った対価を契約負債計上し、履行義務を充足した時に契約負債を消滅して収益計上。 (原則)商品の引渡し等の日に収益計上。←会計と同様。
(特例)商品券の発行時に収益計上。
⑤-1 商品券の非行使部分の取扱い ①企業が将来において権利を得ると見込む場合
→権利行使パターンと比例的に収益計上。
②企業が将来において権利を得ると見込まない場合
→権利行使の可能性が極めて低くなった時に収益計上。
(原則)
①10年経過日に収益計上。
②10年経過前に以下の事実が生じた場合、当該事実発生日に収益計上。
・事業年度ごとに区分管理しない
・有効期限到来
・継続して適用している基準到来
(特例)会計と同様に権利行使パターンと比例的に収益計上可。
⑥ 知的財産のライセンス供与に係る収益 以下の⑥-1、⑥-2の区分に従って収益計上。 会計と同様。
⑥-1 知的財産にアクセスする権利を提供するものである場合(ex.フランチャイズ契約) 「一定の期間にわたり充足される履行義務」として、当該一定期間にわたり収益計上。
⑥-2 知的財産を使用する権利を提供するものである場合(ex.ソフトウェア、特許権、動画、音楽、映画、メディアコンテンツ) 「一時点で充足される履行義務」として、顧客が当該ライセンスを使用して便益を享受できるようになった時点で収益計上。
⑦ 返金不要な顧客からの支払の収益(ex.スポーツジムの入会金) 以下の⑦-1、⑦-2の区分に従って収益計上。 原則として、取引時に収益計上。但し、以下⑦-2参照。⑦-2の期間配分による収益計上には、役務提供との具体的な対応関係の存在が必要であり、会計よりも厳格な条件の下、容認。
⑦-1 支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるもの 独立した履行義務と認められれば、支払を受けたときに収益計上。 (原則)取引時に収益計上。(ex.単に会員資格を認めるもの)
⑦-2 支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものではない(将来の財又はサービスの移転に対するもの) 前払いとして将来の財又はサービス提供時に収益計上。 (例外)返金不要な支払が、契約期間における役務の提供と具体的な対応関係を持っている場合、継続適用を条件に、契約期間の経過に応じて収益計上。(ex.会員資格と共に利用料が割引)

① 収益計上時期の原則

 収益認識基準では、収益は、企業が約束した財又はサービスを顧客に移転することにより、履行義務を充足した時、又は充足するにつれて、認識されます。「企業が約束した財又はサービスを顧客に移転する」とは、顧客が財又はサービスに対する支配を獲得、又は獲得するにつれて生じるものとされています(収益認識基準35項)。「支配」とはその財又はサービスの使用を指図し、その財又はサービスから残りの便益のほとんどを享受する能力とされています(収益認識基準37項)。

 収益認識基準では、履行義務は「一定の期間」にわたり充足されるものと、「一時点」に充足されるものがあり、「一定の期間」にわたり充足される履行義務の要件として以下の3要件のいずれかを満たす場合としています(収益認識基準38項)。

一定の期間にわたり充足される履行義務の3要件

いずれかを満たす場合 (ⅰ) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること
(ⅱ) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産の支配すること
(ⅲ) 次の要件のいずれも満たすこと
①企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること
②企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を享受する強制力のある権利を有していること

 この場合、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、その進捗度に基づき、一定の期間にわたって収益認識します(収益認識基準41項)。

 上記要件を満たさない場合、履行義務は「一時点」に充足されるものとされ、財又はサービスに対する支配の移転時に収益認識をすることになります(収益認識基準39項)。

 法人税では、目的物の引渡し又は役務の提供の日に収益計上するのが原則であり(改正法人税法22条の2第1項)、それに「近接する日」に収益計上することも可能とされています(改正法人税法22条の2第2項)。即ち、基本的に会計と同様の考え方といえます。また一定の期間にわたり、収益認識するケースも収益認識基準の3要件で判断することも示されており(改正法基本通達2-1-21の4)、この点も会計と同様の取扱いがなされています。

② 棚卸資産の販売収益

 収益認識基準では、棚卸資産の販売は、一般に「一時点」で充足される履行義務とされ、商品又は製品を顧客に引き渡した時点で収益計上することが原則といえます。これは「検収基準」などを想定しているといえます。よって、従来の「割賦基準」は廃止されています。但し、国内取引に限り、出荷時から検収時までの期間が通常の期間内である場合は「代替的な取扱い」として「出荷基準」「着荷基準」も認められています。

 法人税では、目的物の引渡しの日に収益計上することを原則としつつ、収益認識基準で認められている「出荷基準」「着荷基準」についても容認し、かつ、継続適用を条件に、委託販売における「仕切精算書到達基準」や、ガス・水道・電気事業者における「検針日基準」についても、引渡しの日に「近接する日」として認めています。

③ 工事進行基準による収益計上

 収益認識基準では、役務の提供は、一般に「一定の期間」わたり充足される履行義務に該当することが多いといえますが、工事契約はその典型例といえます。工事契約に係る収益は、従来から一定の条件を満たす場合には、原則として工事進行基準の適用が求められていましたが、この工事進行基準は履行義務の充足に係る進捗度を見積り、その進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識するという収益認識基準における「一定の期間にわたり充足される履行義務」の考え方そのものといえます。よって工事進行基準は一定期間にわたり履行義務が充足される場合に包括された上で、存続しているといえます。但し、収益認識基準の適用に伴い、「工事契約会計基準」「工事契約適用指針」「ソフトウェア取引実務対応報告」は、廃止されています。

 法人税では、工事進行基準に関しての改正はなされておらず、従来通り適用可能とされており、基本的に会計と同様の考え方といえます。但し、長期大規模工事(工期が1年以上、請負金額が10億円以上)については、法人税上は強制的に工事進行基準が適用される点で、会計と相違しています。即ち、会計では、あくまで、上述の収益認識基準第38項の3要件や進捗度の合理的な見積りの可否によって、工事進行基準の適用が判断されることから、長期大規模工事について形式的な条件で工事進行基準が強制適用される法人税と異なっています。

④ 進捗度の見積り方法

 収益認識基準では、一定の期間にわたり履行義務が充足される場合には、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、その進捗度に基づき一定の期間にわたって収益認識します(収益認識基準41項)。よって、「進捗度の見積り」が収益計上にあたってのポイントとなります。ここで基準では進捗度の見積り方法として以下の2つの方法を示しており、その方法を決定するにあたっては、財又はサービスの性質を考慮するとされています(収益認識適用指針15項)。

進捗度の見積り方法

内容 使用される指標
アウトプット法(収益認識適用指針17項) 現在までに移転した財又はサービスの顧客にとっての価値を直接的に見積るものであり、現在までに移転した財又はサービスと契約において約束した残りの財又はサービスとの比率に基づき、収益を認識するもの 現在までに履行を完了した部分の調査、達成した成果の評価、達成したマイルストーン、経過期間、生産単位数、引渡単位数等
インプット法(収益認識適用指針20項) 現在までに移転した財又はサービスの顧客にとっての価値を直接的に見積るものであり、現在までに移転した財又はサービスと契約において約束した残りの財又はサービスとの比率に基づき、収益を認識するもの 消費した資源、発生した労働時間、発生したコスト、経過期間、機械使用時間等

 なお、進捗度を合理的に見積もることができない場合、収益認識基準では以下の方法を採用することができるとしています。

進捗度を合理的に見積もることができない場合

採用できる方法
履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合 原価回収基準:回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識する方法(収益認識基準45項)
契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができない場合(進捗度を合理的に見積ることができない理由が契約の初期段階であることに起因 代替的な取扱い:契約の初期段階に収益を認識せず、進捗度を合理的に見積ることができる時から収益を認識(収益認識適用指針99項

 法人税においても、進捗度の見積り方法について、基本的に会計と同様であり(改正法基本通達2-1-21の6)、進捗度を合理的に見積ることができない場合の対応も会計と同様の処理が認められています(改正法基本通達2-1-21の5(注)2,3)。

3.おわりに

 今回は、収益認識プロセスの中の「収益の計上時期」の決定部分のうち、①収益の計上時期の原則、②棚卸資産の販売収益、③工事進行基準による収益計上、④進捗度の見積り方法までの部分をご説明しました。次回は「収益の計上時期」の残りの論点について見てきたいと思います。

執筆者
汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ税理士法人
代表社員 税理士 長谷川 祐哉
埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
企業会計を中心とする深い知識により、顧客との強固な関係を築くのに成功している。
グローバル企業や上場会社及び上場準備会社に関する税務を担当している。

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