組織再編税制について

組織再編税制について

1.はじめに

 新型コロナウイルスの影響が長引き、先行き不透明な状況が続く中、経営戦略の見直しが迫られている企業は多いのではないでしょうか。その中で、経営資源の有効活用や事業強化のため、会社組織の拡大や縮小を目的として、会社内外の企業を対象として行われる「組織再編」を検討する企業も増加していると思われます。

 組織再編には、合併、会社分割、株式交換、 株式移転など、様々な手法があり、多種多様な法律が複雑に関係しています。よって組織再編を検討する際には各種法律を考慮した総合的な観点からスキームを検討することが必要です。

 今回は組織再編の税務面に着目し、組織再編税制の最重要ポイントともいえる、税制適格要件について見ていきたいと思います。

2.組織再編税制とは

 組織再編税制とは、その名の通り、組織再編行為に関わる課税について包括的に定めた税制度であり、平成13年度に導入されました。

 一般に、資産を移転する際には、移転資産の譲渡損益に課税するのが原則です。それゆえ、組織再編においても、原則として移転する資産・負債は時価評価され、課税されることとなります。しかし合併や会社分割などを含むすべての組織再編において時価評価に伴う課税がなされた場合、多額の税金が発生し、課税が足かせとなって適切な組織再編行為が阻害される恐れがあります。

 これに対処すべく組織再編税制が設けられ、一定の要件(税制適格要件)を満たす組織再編については、資産・負債を簿価で引き継ぎ、課税関係を継続させ、課税が生じないよう優遇措置が取られています。

 このような組織再編税制の税制適格に対する取扱いは、組織再編の前後で経済実態に実質的な変更がない、即ち、移転資産に対する支配が再編後も継続していると認められる場合には、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べるべきという考え方に基づいています。

3.「適格組織再編」と「非適格組織再編」

 組織再編税制では税制適格要件を満たすか否かで、課税関係が異なります。即ち、税制適格要件を満たす組織再編(適格組織再編)においては、資産や負債を帳簿価額で引き継ぐことが可能となるため、課税が生じないことになります。一方、税制適格要件を満たさない組織再編(非適格組織再編)においては、資産や負債を時価で引き継ぐことから、譲渡損益が生じ、課税が発生することになります。

組織再編の分類 移転資産・負債の評価 移転時の課税
適格組織再編 帳簿価額 生じない
非適格組織再編 時価 生じる

4.税制適格要件の内容

 税制適格要件は、組織再編を実施する会社間の資本関係に応じて異なります。即ち、資本関係に応じて以下の3パターンに分けられ、各々異なる適格要件が定められています。

 ① 完全支配関係(100%グループ内再編)
 ② 支配関係(50%超グループ内再編)
 ③ 共同事業(持分割合が50%以下の法人間再編)

 この点、①→③と資本関係が薄くなるにつれて要件が多くなり、また要件適応に係る判断も複雑化し、税制適格へのハードルは高くなります。上記3パターンに分けた上で税制適格要件の内容を以下にまとめました。この表から、資本関係が最も薄い③共同事業においては、より多くの要件が必要とされていることがわかります。なお、下表にて必要と記載された要件は全てクリアしなければ、適格組織再編とは認められません。

税制適格要件 ①完全支配関係 ②支配関係 ③共同事業
100%支配関係の継続 必要
50%超支配関係の継続 必要
金銭等の支払いがない 必要 必要 必要
主要な資産・負債の移転 不要 必要 必要
移転事業従業員の概ね80%が移転先事業に従事 不要 必要 必要
移転事業の継続 不要 必要 必要
事業の関連性があること 不要 不要 必要
発行株式の80%以上が継続保有 不要 不要 必要
事業規模が概ね5倍以内、又は特定役員への就任 不要 不要 必要

※上表では、合併、会社分割などといった組織再編のスキーム毎にケース分けをしていないため、税制適格要件について一般化して内容と言い回しとしている。

5.おわりに

 今回は組織再編税制の中で税制適格要件について、掘り下げました。

 組織再編税制は細かく複雑な規定が多く、わずかな再編手順の違いで税務上の取扱いが大きく異なることがあるため、時として組織再編のスキームを左右します。加えて、頻繁に税制改正がなされる分野であることにも留意が必要です。

 適格・非適格の判定結果は、一義的には移転する資産・負債の評価方法と、それに伴う課税関係に影響を及ぼすことになりますが、それ以外にも、繰越欠損金の引継制限・使用制限、特定資産譲渡等損失の損金算入制限といった実務上の重要論点への影響にも配慮することが重要です。

 様々な法律が複雑に関係する組織再編ですが、税務的視点はスキームを考えるうえで、極めて重要な部分といえます。当コラムを組織再編税制の概要理解に役立てていただければ幸いです。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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