令和8年度税制改正大綱① ~所得税~

令和8年度税制改正大綱① ~所得税~

1.はじめに

 毎年8月頃、各省庁からの税制改正要望が提出され、12月に税制調査会による審議を経て、「税制改正大綱」として公表されます。

 高市早苗首相は「責任ある積極財政」を掲げる一方で、2025年11月の衆議院予算員会で「戦略的に財政出動を行うことで、税率を上げずとも税収が増えていく姿をつくっていきたい」と述べています。

 令和8年度税制改正ではどのような改正が行われるのか、今回から2回にわたり解説します。第1回目となる今回は、個人所得税の改正点のうち、より多くの方に影響する3つの論点をご紹介します。

2.“年収の壁”の引き上げ

 令和8年度の改正で最も注目されている点は、基礎控除等の限度額、いわゆる「年収の壁」が引き上げられたことです。所得税は、所得金額から基礎控除等を差し引いた課税所得に対して課税されます。今回はその基礎控除等が引き上げられたので、個人の納税額に直接影響を及ぼす可能性があります。

 いわゆる「年収の壁」とは、本則に基づく①基礎控除と、給与所得者にのみ適用される②給与所得控除の最低保障額の2つから構成され、それぞれ本則による恒久的な措置と特例による時限的な措置が設けられています。

①基礎控除

 基礎控除は本則に基づく控除額が、合計所得金額が2,350万円以下の区分で現行より4万円の引き上げられました(2,350万円超については変更なし)。

 また、特例による時限措置として、令和8年度・9年度に関しては各所得に応じて以下の金額が控除されます。

単位:万円
合計所得金額 令和8年度 令和9年度
現行 改正後 現行 改正後
132万円以下 37 42 37 42
132万円超~
336万円
30 42 0 42
336万円超~
489万円以下
10 42 0 42
489万円超~
655万円以下
5 5 0 5

 これにより、合計所得が489万円以下の場合、基礎控除は104万円となります。

②給与所得控除の最低保障額

 給与所得控除の最低保障額は65万円から4万円引き上げられ、69万円となりました。これに加え、特例措置として令和8年度9年度は、さらに5万円が上乗せされ、74万円となります。

 この結果、令和8年および9年度は、合計所得が489万円以下の場合、①104万円+②74万円=合計178万円が「年収の壁」となります。令和10年度以降については、消費者物価指数の上昇に応じて改正が行われるとされています。

 また、これらの基礎控除および給与所得控除の改正に伴い、各人的控除の所得要件が見直されていますので、該当する可能性がある場合は内容を確認しておく必要があります。

3.住宅ローン控除

 住宅ローン控除は、2025年末入居分までの時限措置でしたが、5年間延長され、2030年末入居分までの適用されることとなりました。さらに、これまで中古住宅は新築に比べて控除期間が3年短く、借入限度額も低いという不利な点がありましたが、省エネ性能の高い中古物件については、今回の改正でその差が大幅に縮小しました。これにより、省エネ性能の高い中古物件の需要が高まる可能性があります。

 この改正により、令和8年以降の入居分について控除額は以下のとおりになります。

新築・買取再販

区分 現行
(R6・7 年入居)
改正後
(R8~9 年入居)
改正後
(R10~12 年入居)
控除率 0.7%
借入限度額 / 控除期間
認定住宅(長期優良・低炭素等)※1 4,500 万円 / 13年 4,500 万円 4,500 万円
ZEH 水準省エネ住宅※1 3,500 万円 / 13年 3,500 万円 3,500 万円
省エネ基準適合住宅※1 3,000 万円 / 13年 2,000 万円 / 13年 適用対象外 ※2
省エネ基準適合住宅である※1
買取再販住宅認定住宅
3,000 万円 / 13年 2,000 万円 / 13年 2,000 万円 / 13年
その他の買取再販住宅 2,000 万円 / 10年 2,000 万円 / 10年 2,000 万円 / 10年

※1 特例対象個人の上乗せ措置あり
※2 令和9年12月31日以前に建築確認を受けたもの、又は登記簿上の建築日付が令和10年6月30日以前であるものを令和10年から令和12年の間に居住の用に供した場合は対象(借入限度額2,000万円、控除期間10年)

中古住宅

区分 現行
(R6・7 年入居)
改正後
(R8~9 年入居)
改正後
(R10~12 年入居)
控除率 0.7%
借入限度額 / 控除期間
認定住宅(長期優良・低炭素等) 3,000 万円 / 10年 3,500 万円 / 13年
ZEH 水準省エネ住宅 3,000 万円 / 10年 3,500 万円 / 13年
省エネ基準適合住宅 3,000 万円 / 10年 2,000 万円 / 13年
その他の住宅 2,000 万円 / 10年 2,000 万円 / 10年

4.NISAの対象枠拡大

 NISA(少額投資非課税制度)はさらなる普及と利便性向上を目指し、大きな拡充が決定しました。特に、未成年者への適用拡大と対象商品の拡大が大きな変更点となります。また、つみたて投資枠の対象となる公募株式投資信託について、指定指数に連動しない公募株式投資信託の要件が、「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」へ変更されました。これにより、債権中心のバランスファンド等も投資可能となる見込みです。

NISAの主な改正ポイント

項目 現行(2025年まで) 改正後(2026年以降) 改正のポイント
対象年齢 18歳以上 0歳から利用可能 未成年者の資産形成を支援
18歳未満の投資枠 なし
(※旧ジュニアNISAは終了)
つみたて投資枠:年間60万円 「こどもNISA」としての実質的拡充
非課税保有限度額 1,800万円(18歳以上) 18歳未満は最大600万円 18歳到達時に一般枠へ統合可能
対象商品の拡大 株式・株式投信が中心 債券型投信などの追加 リスクを抑えた運用の選択肢増加
払出し制限
(未成年)
原則12歳以降は払出し可 教育資金としての使い勝手を向上

この結果、NISA制度の概要は以下のとおりになります。

つみたて投資枠 成長投資枠
項目 18歳未満(新設)※1 18歳以上 18歳以上
年間投資上限 60万円 120万円 240万円
非課税保有限度額 600万円 1,800万円(総枠) うち1,200万円まで
投資方法 積立のみ 積立のみ 積立・スポット購入可
主な対象商品 長期・積立・分散に適した一定の投資信託 長期・積立・分散に適した一定の投資信託 株式・上場信託・REIT等
払出しの制限 原則12歳以降は可能 ※1 制限なし(いつでも可) 制限なし(いつでも可)

5.おわりに

 今回は、令和8年度税制改正大綱のうち、個人所得税の納税額に影響が大きい改正点をご紹介しました。今後国会に提出される法案等の審議状況によっては、本コラムに記載した内容と異なる制度が成立する可能性もございます。適用・実行に際しては、専門家とご相談の上、ご対応いただけますようお願いいたします。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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