国税庁の新型コロナFAQの更新について~国境を跨ぐリモートワークに対する給与の課税関係~

国税庁の新型コロナFAQの更新について~国境を跨ぐリモートワークに対する給与の課税関係~

1.はじめに

 国税庁は10月23日に「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を更新しました。

 前回は更新された内容のうち、GoToキャンペーン事業における給付金の取扱い、及び医療費控除関連の項目について確認しました。

 今回は、コロナ禍で海外への移動が制限されたことによって生じるリモートワークにおける、給与の課税関係について見ていきたいと思います。

2.国境を跨ぐリモートワークに対する給与の取扱い

 新型コロナウイルスの影響で、日本から海外への赴任、海外からの人材の受け入れについて、様々影響が出ています。その結果、下記のような状況において、日本で海外企業の業務を行う、海外で日本企業の業務を行うといった国境を跨ぐリモートワークが生じています。

  • 海外赴任の断念
  • 海外駐在員の日本一時帰国
  • 海外から受け入れ予定であった人材の入国困難
  • 一時出国していた従業員の入国困難

 今回のFAQの更新では、こういった国境を跨ぐリモートワークに対する給与の課税関係を整理すべく、以下の4問が追加されました。

問 11. 《日本から出国できない場合の取扱い》
問 11-2.《海外の関連企業から受け入れる従業員を海外で業務に従事させる場合の取扱
い》
問 11-3.《一時出国していた従業員を日本に帰国させない場合の取扱い》
問 11-4.《海外に出向していた従業員を一時帰国させた場合の取扱い》

(1)居住者と非居住者

 海外が絡む給与を考える上では、まずその給与所得者が日本の「居住者」に該当するのか、「非居住者」に該当するのかの判断が必要です。居住者・非居住者は給与への課税を考える上で基礎となる区分で、どちらに該当するかによって課税対象となる所得の範囲が決まります。

 以下、「居住者」と「非居住者」の区分、及び各々の課税対象となる所得の範囲についてまとめました。

居住者・非居住者の区分と課税対象となる所得の範囲

定義 課税対象となる所得
居住者 日本国内に
①住所を有する個人
又は
②現在まで引き続き1年以上居所()を有する個人
全世界所得
(国内外で生じた全ての所得)
非居住者 居住者以外の個人 国内源泉所得

居所:「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。民法上に規定されている住所とは違う概念で、居所に該当するかの判断は、判例等を参考に様々な要素を考え併せて行われます。

(2)課税関係

次に、コロナ禍で国境を跨ぐリモートワークを行うことを余儀なくされたケースについて、FAQにて追加された問のケースに沿って、上記「居住者」「非居住者」の判定及び課税対象となる所得の範囲を考慮しつつ、順に見ていきたいと思います。

問 11.《日本から出国できない場合の取扱い》
ケース 外国法人に転職したが、日本から出国できず、当面は国内住所地にて外国法人の業務に従事(在宅勤務)
 ➡外国法人の業務(日本からのリモートワーク)
給与所得者 国内に住所を有する個人であり、「居住者」
給与支払者 外国法人(日本に拠点なし)
課税関係 確定申告
根拠 国内で支払われないため源泉徴収不要だが、居住者は全世界所得が課税対象であることから、確定申告が必要。
問 11-2.《海外の関連企業から受け入れる従業員を海外で業務に従事させる場合の取扱い》
ケース 海外の関連企業から受け入れた従業員が、海外にて日本の業務に従事
 ➡内国法人の業務(海外からのリモートワーク)
給与所得者 日本国内に住所等を有していないので、「非居住者」
給与支払者 内国法人
課税関係 所得税課税なし
根拠 非居住者が海外で行う勤務に対する給与は、国内源泉所得に該当しない。
留意点 非居住者の役員に対する報酬は、一定の場合を除き、国内源泉所得として課税対象となり、源泉徴収が必要。
問 11-3.《一時出国していた従業員を日本に帰国させない場合の取扱い》
ケース 海外現地法人に短期派遣(3カ月)していた従業員が、派遣期間終了後も日本に帰国できず、海外にて日本の業務に従事
 ➡内国法人の業務(海外からのリモートワーク)
給与所得者 一時的に海外に滞在しているものの、国内に住所を有しているため、「居住者」
給与支払者 内国法人
課税関係 源泉徴収
根拠 居住者に国内で支払われる給与については、源泉徴収が必要。
問 11-4.《海外に出向していた従業員を一時帰国させた場合の取扱い》
ケース 海外現地法人に短期派遣(3カ月)していた従業員が、派遣期間終了後も日本に帰国できず、海外にて日本の業務に従事
 ➡内国法人の業務(海外からのリモートワーク)
給与所得者 一時帰国中であり、日本国内に住所等を有していないため、「非居住者」
給与支払者 内国法人(留守宅手当) 外国法人(日本に拠点無し)
課税関係 源泉徴収 原則、確定申告
根拠 非居住者が国内で行う勤務に対する給与は、国内源泉所得に該当し、国内で支払われるため、源泉徴収が必要。 非居住者が国内で行う勤務に対する給与は、国内源泉所得に該当するが、国内で支払われないため、源泉徴収不要。但し、外国法人から国内源泉所得である給与の支払を受けた者は、原則、確定申告が必要。
留意点 給与所得者の居住地国と日本との間に租税条約等があり、日本滞在期間が183日以内等の「短期滞在者免税」の要件を満たせば課税なし。

 このように、海外が関連する給与所得の課税関係を判断する上で重要なポイントをまとめると、下記の3つになります。

海外リモートワークの課税関係判定のポイント

  1. 給与所得者が「居住者」であるか「非居住者」であるか
  2. 当該勤務が日本国内において行われるものか国外において行われるものか
  3. 給与支払いが国内払いか国外払いか

 当該判断ポイントを加味した上で、国境を跨ぐリモートワークに対する給与の課税関係を以下のように簡単にまとめました。

国境を跨ぐリモートワークに対する給与の課税関係

居住者or
非居住者
勤務形態 給与支払者 課税関係 対応するFAQ問 ケース
居住者 内国法人の業務
(海外からのリモートワーク)
内国法人 源泉徴収 11-3 一時出国していた従業員が日本に帰国できず、海外にて日本の業務に従事
外国法人の業務
(日本からのリモートワーク)
外国法人
(日本に拠点なし)
確定申告 11 日本から出国できず、日本にて海外の業務に従事
非居住者 内国法人の業務
(海外からのリモートワーク)
内国法人 所得税課税なし
※役員の場合、源泉徴収が必要
11-2 海外から受け入れた従業員が、海外にて日本の業務に従事
外国法人の業務
(日本からのリモートワーク)
内国法人
(留守宅手当)
源泉徴収 11-4 海外に出向していた従業員が、一時帰国し、日本にて海外の業務に従事
外国法人
(日本に拠点なし)
原則、確定申告
※「短期滞在者免税」の要件を満たせば課税なし

3.おわりに

 前回から2回にわたり、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」の更新内容について見てみました。

 新型コロナウイルスの影響で、海外勤務予定で日本から出国できない人、日本勤務予定で日本に入国できない人、一時帰国中で日本から出国できない人、一時出国中で日本に帰国できない人、及びこうした従業員を持つ会社は、今回追加されたFAQの内容を今一度確認することをお勧めします。

 国境を跨ぐリモートワークは、海外出向者等、一部の人及び会社のみ関係する内容と思われがちですが、コロナ禍の中でもグローバル化は着実に進んでおり、今後益々人の移動を不要とする海外赴任や外国人雇用が増えていくことも想定されます。当コラムが、海外が絡む所得税の課税関係の基礎知識として、参考となれば幸いです。

執筆者
汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ税理士法人
代表社員 税理士 長谷川 祐哉
埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
企業会計を中心とする深い知識により、顧客との強固な関係を築くのに成功している。
グローバル企業や上場会社及び上場準備会社に関する税務を担当している。

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