「課税対象利益を基礎とする税金」とは?法人税等に関する会計基準の改正ポイント

「課税対象利益を基礎とする税金」とは?法人税等に関する会計基準の改正ポイント

1.はじめに

 2026年7月7日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、改正企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」をはじめ、税効果会計に係る会計基準の適用指針、グループ通算制度に関する実務対応報告、キャッシュ・フロー計算書に関する実務指針などの一連の改正を公表しました。今回の改正は、単に特定の税金の表示方法を変更するだけのものではありません。

 法人税等に関する会計基準の対象となる税金について、従来の「税目を個別に列挙する考え方」から、「課税対象利益を基礎とする税金」という原則的な考え方へ軸足を移した点に大きな特徴があります。これに伴い、基準の名称も従来の「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」から「法人税等に関する会計基準」へ変更されています。

 実務上、特に注目されるのが住民税(均等割)の取扱いです。これまで税引前当期純利益の後に「法人税、住民税及び事業税」などとして表示されていた均等割は、改正後、「法人税等」には含めず、その内容に応じた適切な表示区分に計上することになります。納付税額自体が変わらなくても、各段階利益の表示に影響するほか、貸借対照表やキャッシュ・フロー計算書、さらには管理会計にも影響が及ぶ可能性があるため、実務上重要な改正といえるでしょう。本記事では、改正の概要や背景、改正による会計上の影響について解説します。

2.改正の概要

 今回公表された主な会計基準等には、改正企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」、改正企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」、改正実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」、改正移管指針第6号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」などがあります。あわせて、実務上の参考情報として、補足文書「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて」も公表されています。

 最も大きな変更は、会計基準の適用対象となる税金を特定する方法です。改正前は、法人税、地方法人税、住民税、事業税、特別法人事業税といった具体的な税目を基準上で示し、それぞれの税法を参照しながら適用範囲を定める構成でした。改正後は、まず「法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金」を原則的な適用対象として定めています。そのうえで、課税対象利益を基礎としない税金のうち、従来から基準で扱ってきた住民税の均等割、事業税の付加価値割・資本割、受取利息や受取配当金等に課される源泉所得税等などについて、別途取扱いを設けています。

 適用時期は、2028年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首からです。一方、公表日である2026年7月7日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することも認められています。したがって、3月決算会社が早期適用する場合、最も早い通常の事業年度は2027年4月1日に開始する年度となります。

3.「課税対象利益を基礎とする税金」という考え方

 今回の改正を理解するうえで中心となるのが、「課税対象利益」と「課税対象利益を基礎とする税金」という二つの定義です。課税対象利益とは、課税当局の定めに従って算定された特定の事業年度の利益であり、その利益を対象として税金が課されるものをいいます。また、課税対象利益を基礎とする税金とは、課税対象利益を基礎として、課税当局の定めに従って算定された税金及びその付加税をいいます。これらの定義については、国際的な会計基準における法人所得税の考え方も参考にされています。

 ポイントは、税金の名称ではなく、「何を基礎として課税されるか」という税金の性質に着目することです。法人税や事業税の所得割は、所得を基礎として計算されるため、この概念に該当します。住民税の法人税割は法人税額を課税標準としていますが、法人税自体が課税対象利益を基礎として算定されることから、その付加税として同じ範囲に含まれます。防衛特別法人税についても、基準法人税額を基礎として算定されることから、補足文書では、課税対象利益を基礎とする税金として整理されています。

 一方、住民税の均等割は所得を直接の課税標準とする税金ではありません。また、外形標準課税における事業税の付加価値割や資本割も、それぞれ付加価値額や資本金等の額を課税標準としているため、「課税対象利益を基礎とする税金」には該当しません。ただし、これらの税金が会計基準の適用範囲から完全に外れるわけではありません。従来の実務との連続性を考慮して、会計処理と表示について個別の定めが設けられています。

4.改正の背景

 従来の法人税等に関する会計基準では、適用対象となる税金が具体的な税目と税法への参照によって定められていました。この方式は対象範囲が分かりやすい一方で、新しい税金が創設されるたびに、その税金の会計基準をどのように位置付け、当期税金や税効果会計をどのように取り扱うかについて検討し、必要に応じて会計基準の改正が求められるという課題がありました。特に、税制改正から会計基準の適用までの期間が短い場合、会計基準側でも短期間で改正を行う必要が生じます。こうした課題が、今回の見直しの背景となっています。

 加えて、具体的にどの税金が「課税対象利益を基礎とする税金」に該当するかや、法定実効税率をどのように算定するかといった、税制改正に応じて更新される可能性のある実務情報については補足文書に切り分けられました。これにより、個別税制の創設・廃止には補足文書を機動的に更新し、会計基準本体は原則的な枠組みを維持するという設計になっています。

5.会計上の影響

 最も代表的な影響は、住民税(均等割)の損益計算書上の表示です。改正前は、税引前当期純利益の後に「法人税、住民税及び事業税」等として表示していました。改正後は「法人税等」には含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示します。例えば販売費及び一般管理費に表示する場合、それまで税引前利益の後に計上されていた金額が営業費用に含まれることになります。その結果、営業利益、経常利益及び税引前利益はいずれもその分だけ減少します。一方、同じ金額だけ「法人税等」が減少するため、その他の条件に変化がない場合には、当期純利益そのものは基本的に変わりません。したがって、今回の改正は税負担額の変更ではなく、利益のどの段階に税負担を反映するかという表示の変更として理解することが重要です。

 ただし、「法人税等」から外れた税額を必ず販売費及び一般管理費に計上するという意味ではありません。基準では「その内容に応じた適切な表示区分」に表示するとされており、企業は税金の性質や事業実態を踏まえて表示区分を判断する必要があります。事業税の付加価値割・資本割についても、改正前は原則として販売費及び一般管理費として表示する取扱いでしたが、改正後は住民税の均等割と同様に、内容に応じた適切な区分という考え方に統一されています。特に住民税均等割については、表示先によって営業利益や経常利益への影響が異なる可能性があるため、自社における表示方針を事前に整理しておくことが重要です。

6.まとめ

 今回の改正は、住民税均等割の表示変更だけを見れば個別的な改正に見えますが、本質は、法人税等に関する会計基準の適用範囲を「税目名」ではなく、「課税対象利益を基礎とする税金」という原則によって整理し直したことにあります。これにより、新たな税金の創設や既存税制の変更があった場合でも、その税金の課税標準や計算構造を確認することによって、会計上の位置付けを判断しやすくなります。また、必要に応じて補足文書を更新することで、機動的に対応できる枠組みとなりました。

 企業側では、強制適用が始まる2028年4月1日以後開始年度を待って形式的に対応するのではなく、早い段階で自社が負担している税目を棚卸しし、課税対象利益を基礎とする税金かどうかを区分しておくことが重要です。そのうえで、住民税均等割などについて、損益計算書・貸借対照表上の表示、キャッシュ・フロー計算書の集計方法、勘定科目マスタへの影響を確認しておく必要があります。今回の改正は、会計基準自体が税率や納税義務を変更するものではありません。しかし、企業の利益の見え方に影響し得ることから、早期に準備を進めることが実務対応のポイントになるでしょう。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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