今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入

今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入

「物流の2024年問題」や原油価格高騰に代表されるように、社会環境の変化から物流業界ではさまざまな課題が山積みとなっています。物流の効率化を図るには、ロジスティクスへの取り組みが不可欠。サプライチェーンマネジメントの導入、部門間の連携の重要性について、SCMソリューションデザイン代表、魚住和宏氏にご解説いただきました。

1.物流をとりまく社会環境

地域紛争と分断が渦巻く世界

 ロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・パレスチナ戦争はどのような形で終わるのかが大きな命題になっています。

 アメリカでは2024年に大統領選挙が行われますが、トランプ氏が当選した場合、世界の分断が進むなど世界情勢に大きな影響を及ぼすと思います。

スライド01

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

 中国では、若年層失業率が20%を超えるなど経済は不調に陥っています。本来は外資の導入による経済の活性化をすべきだと思いますが、習近平政権の政策は真逆です。

 ブラジル、北朝鮮、ミャンマーなどもさまざまな問題を抱えており、世界の問題に対処できるキーマンはインドのモディ首相ではないかと思います。

高止まりする原油価格

 原油価格は2020年以降70~100ドルぐらいと非常に高いレベルで推移しており、この状況はまだまだ続くでしょうし、天然ガスの高騰も続くと思われます。そのため風力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギーへのシフトが必須だと思います。

スライド02

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

深刻化するドライバー不足

 ドライバーは、2028年には30万人近く不足すると予測されています。ドライバーの年齢層も50~60代の層がかなり増えています。ただ、国土交通省の統計で、トラックの実車率は40%というデータがあり、この実車率を60~70%に上げるだけでもドライバー不足をかなり解消できると思います。

スライド

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

急速に減少する労働力人口

 日本の総人口は2011年がピークで1億2,750万人ほどで、2022年は約266万人減となっています。一方生産年齢人口はピーク時に比べ約1,400万人の減少となっています。この生産年齢人口の減少の大きさが、逼迫(ひっぱく)した労働力不足の背景となっています。高齢者や女性を労働市場に引き入れることが労働力不足解消の1つの方法だと思います。

スライド03

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

貨物自動車運送事業者の変化

 1990年に物流二法の改正による規制緩和が行われ、運送事業に参入する事業者が増え平成18年ごろにはピークの6万2,000社ほどになりました。しかし過当競争により賃金は上がらず、ドライバー不足という事態になりました。

スライド04

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

進行する貨物の小口化

 eコマースの普及により宅配便の取り扱い個数が飛躍的に増えており、2022年度では約50億個です。この原因には物流の非効率が挙げられると思います。貨物の運び方が大きな課題になっており、ラストワンマイルを自転車で運ぶというようなことも必要になってくるのではないかと思います。

スライド05

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

物流の「2024年問題」とは?

 2019年4月に働き方改革関連法が施行され、運送業においても2024年4月から適用されます。時間外労働時間の上限が年間960時間となるためドライバーの運行管理がより難しくなると思います。

 物流の効率化のため、納品頻度を下げること、納品ロットの見直し、内航海運での輸送、鉄道輸送の推進が必要です。内航海運業界には船員不足、鉄道輸送ではダイヤの問題などがありますが、これをいかに使いこなすかという点が重要です。

 倉庫拠点の立地をより効率的にすること、配送距離、配送ルートの見直し、また包装をできるだけコンパクトにすること、包装材質の見直しも必要です。

スライド06
スライド07

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

物流の三悪

 物流の三悪として、付帯作業、長時間待機、納品時間指定を挙げました。

スライド08

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

 運行約款上はドライバーの仕事は軒先渡しで終わりです。しかし業態によってはドライバーが付帯作業をする現状があります。そのためドライバーの滞在時間が長くなり、作業効率が悪くなるのです。このような習慣は一日も早くやめるべきです。

 2つ目は長時間待機です。ドライバーが納品先で荷下ろし開始まで長時間待たされることがあります。これはキャパシティを超えたオーダーが原因です。根本的には多頻度小口配送のため検品作業に時間がかかるのです。この解決方法は隔日納品や定曜日納品で納品頻度を下げ、配送ロットを引き上げること、あるいは運送業者が時間を選べる予約システムを使うことです。

 3つ目は時間指定です。ピンポイントでの時間指定は実車率の著しい低下につながりますので、ぜひやめていただきたい。宅配便の場合は2時間ぐらいのゾーンで時間指定がありますが、ピンポイントでの対応はできないと思います。

スライド09
スライド10
スライド11

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

 時間指定がない場合は、1台で10カ所以上回ることが可能です。午前中や午後指定がある場合は、配送できる件数が限られてしまいます。さらに同一エリアで同じ時刻指定がある場合は、非常に非効率になります。これは即刻やめるべきだと思います。

2.物流・ロジスティクス・SCMとは?

物流・ロジスティクス・SCMの違い

 物流は、輸配送、保管、荷役あるいは流通加工といった業務の総称です。企業では物流部門において、物流の効率化に取り組んでいると思いますが、物流部門の努力だけではどうにもなりません。そこで私はこのロジスティクスへの取り組みを強く推奨しています。

 ロジスティクスとは、調達、生産、販売、物流の全体を同期化することなのです。無駄なものを調達しない、作らない、保管しないことで効率化を目指すことがロジスティクスです。この狙いは、原材料、製品、中間品などの棚卸資産をできるだけ最適化することです。その結果、保管量、物流費の減少もありますが、一番はキャッシュフローの創出が起こるのです。

 ここで重要なのは、部門間の連携です。当然物流部門だけではなく、販売部門、生産部門との連携がポイントになります。

 その次にサプライチェーンマネジメントです。サプライヤー、エンドユーザー、小売業、その他企業を含めた供給網であるサプライチェーン全体の効率化ということです。これを推し進めるには経済合理性が働く取引制度の構築が必要です。例えば、小口の注文にはペナルティ、大口の注文にはインセンティブを付けることで、大口の発注が増えるといったようなことです。物流あるいはロジスティクスの効率化につながるような制度の導入がこのサプライチェーンマネジメントで重要なことです。

スライド12

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

物流・ロジスティクスとSCM(サプライチェーンマネジメント)

 ロジスティクスは、原材料の調達、生産、在庫管理、販売、物流という企業の活動を指します。さらにサプライヤー、エンドユーザーを含め効率化する経営手法をサプライチェーンマネジメントといいます。

 見落としがちですが、原材料が入ってくる時に調達物流があり、倉庫から生産現場に入る段階で場内物流が発生します。このようにさまざまな場面に物流があります。この全体の物流を物流部門は管理しなければなりません。ここが非常に重要なのです。

スライド13

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?

 SCMとは調達、生産、販売、物流の効率化ということです。まずサプライヤー管理が重要です。生産では品質管理、生産と販売のバンランス管理、そして販売・マーケティングがあり、物流という流れなります。

スライド14

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

サプライチェーンの全体像

 海外の原材料メーカーから港湾倉庫、生産ラインを経て工場の倉庫、物流センターから流通に入り、小売業を通じて消費者に渡るというサプライチェーン全体の非常に長い流れがあります。ここで原材料の在庫管理を忘れがちで、さまざまなところに無理・無駄が発生します。

スライド15

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

流通と物流

 流通とは、生産と消費の間にある3つの障害を取り除く機能と言われています。社会的立場の違いによる障害を埋める商取引、物理的に離れている障害を埋める輸送活動、時間的なずれを埋める保管活動があります。流通とは商取引の取引流通と輸送などの物的流通に分かれます。

 物的流通は、輸配送、保管、荷役だけでなく在庫管理、情報処理、包装、流通加工までの全体を設計、コスト管理することが重要です。

スライド16

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

3.物流の諸機能

保管

 保管とは、製品、原材料、半製品、部品などの最適な量を一定期間倉庫に保有することです。倉庫には一般倉庫、冷凍・冷蔵倉庫、危険物倉庫の種類があり、管理のポイントは適切な温湿度、出荷能力と保管能力のバランスが取れた設計です。

 立体自動倉庫は天井まで使用可能で、保管効率が高く、クレーン作業による省力化にも効果的です。しかし初期投資が大きく、メンテナンスコストは毎年初期投資の2%ぐらいかかります。

 ネステナーはかなり強度ですので、固定ラックのように使用することも可能で、使わない時は畳むことができます。季節的な波動が大きな商品を保管する場合に便利です。

スライド18

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

荷役

 荷役では、ピッキングカート、フォークリフト、パレットなど荷役機器を適切に使うことが重要です。フォークリフトは座って操作するタイプと立って操作するタイプがあり、後者は小回りが利き、通路の幅を節約できます。

 省人化のためにはパレットが有効ですが、サイズが標準化できていません。日本では1.1×1.1メートルが一般的で、食品業界では0.9×1.1が多く、グローバルで多いのは1.0×1.2です。

 手作業も多いので10キロ程度をマックスにしたほうがいいです。ピースピッキングの作業は過酷ですので、自動化ロボットの導入をお勧めします。

 シートパレットという紙状、プラスチック製のパレットは、フォークリフトにアタッチメントを付けて使用します。このシートパレットによりスペースロスを削減できます。

スライド19

スライド20

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

包装

 かつては個装が中心で、中箱の入り数、外装が決まり、そこからパレットパターンを設計していたため、パレットに隙間ができていました。それをパレットパターンの容積効率を80%以上にし、外装を決め、入り数、個数を設計するという設計思想に変えます。パレットへの積載率を上げることで保管効率が上がり、輸送費の削減になるのです。

スライド21

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

輸送

 輸送モードには小型、中型、大型のトラック輸送があります。4トントラックにおける人件費の割合は約47%と結構高いです。

スライド28

スライド29

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

 フェリー、RORO船による内航海運があります。船はあまり揺れないため、輸送品質が高く、CO2排出量がトラックに比べて4分の1と環境に優しい利点があります。

スライド28

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

 鉄道輸送は、12フィート、31フィートコンテナがあります。31フィートコンテナはトラックとほぼ同じ容積を積むことができます。

スライド29

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

運賃体系

 まずチャーター運賃があります。特別積み合わせ運賃はキロ当たりの金額です。宅配便運賃は個数によります。また引越運賃があります。これらは物流二法に定められています。

 チャーター運賃は、距離と車種によって運賃が決められていますので、積載効率を上げることで割安になります。

スライド30

スライド31

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

 特積運賃というサービスは全国どこへでも運ぶサービスで、荷主から集荷、自社のターミナル、運ぶ、次のターミナル、トラックで荷主へ運ぶという仕組みです。

 重量と距離で運賃が決められています。時間が変わって1トンを二度出しても1荷口1トンとしか勘定されないので、1回に2トン出すほうが安く運べます。

 特積運賃は、小口ほど割高で、200キロ以上では割安です。しかし、容積換算重量という考え方があり、軽いものでも決して有利ではありません。

スライド32

スライド33

スライド34

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

 宅配便の運賃は高いですが、1個単位で確実に早く運んでもらえることが一番のメリットです。

4.ロジスティクス・SCM導入に向けて

ロジスティクスの三要素を知る

 まず出荷動向に関する情報の把握を販売・マーケティング部門が行います。その情報に同期化させて商品を生産します。これは原材料調達、生産部門の役割です。そして物流・ロジスティクス部門が商品を保管し、顧客に届けます。特に大事なことは出荷動向に関する情報のタイムリーな提供です。ここが販売・マーケティング部門になかなか理解されないので、その解決が非常に重要です。また、それぞれの部門を一体化してロジスティクス部とすることをお勧めしたいです。

スライド36

スライド37

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

「部門間連携」強化に必要なこと

 販売・マーケティング部門、生産部門、物流部門が非常に密接に連携しなければなりません。また包装や最小単位などの数の管理、パレットの積み付け数などを行う開発部門、そして財務部門、情報システム部門などがお互いの業務をよく知り、助け合うことでロジスティクスが回ります。

 SCM・ロジスティクスで最も重要なことは、部門間連携です。

スライド38

講演資料:「今こそ求められる物流の効率化とSCM・ロジスティクスの導入」より

魚住氏
 講師ご紹介 
SCMソリューションデザイン
代表 魚住 和宏 氏

【本セミナーレポートに関する免責事項】
当サイトへの情報・資料の掲載には注意を払っておりますが、
最新性、有用性等その他一切の事項についていかなる保証をするものではありません。
また、当サイトに掲載している情報には、第三者が提供している情報が含まれていますが、
これらは皆さまの便宜のために提供しているものであり、
当サイトに掲載した情報によって万一閲覧者が被ったいかなる損害についても、
当社および当社に情報を提供している第三者は一切の責任を負うものではありません。

また第三者が提供している情報が含まれている性質上、
掲載内容に関するお問い合わせに対応できない場合もございますので予めご了承ください。

プライバシーマーク