今、働き方改革で注目されているRPAとは

ユーザックシステム株式会社
取締役マーケティング本部長
小ノ島 尚博氏

今、働き方改革で注目されているRPAとは

 働き方改革を進める企業がなぜRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に注目するのか。RPAについてわかりやすく解説するとともに、食品、商社、金融、サービスなどの先進的な導入事例、RPAソリューション、導入の進め方についてご紹介します。

会社紹介:ユーザックシステム株式会社とは

約600社にRPAを導入

 最初に当社のプロフィールを紹介します。1971年の創業で、東京と大阪に拠点があります。業務パッケージの「名人シリーズ」を開発・販売、内田洋行、内田洋行ITソリューションズと一緒にビジネスを進めています。本日のテーマの業務の自動化ソフトに関しては2004年に「Autoブラウザ名人」を、2010年に「Autoメール名人」を発売、これまでに約600社にRPAを導入しました。2017年には食品業界の働き方改革に貢献度が高かったということで、「Autoブラウザ名人」が日本食糧新聞社さまから賞を頂戴しました。富士キメラ総研のRPA関連ツールの市場調査の結果、2016年、ブラウザ操作の自動化部門で「Autoブラウザ名人」のシェアが第1 位になりました。

働き⽅改⾰とRPA

なぜ働き方改革なのか ~人手不足で労働生産性の低い日本~

 日本の生産年齢人口は、どんどん減っています。人口は、この20年間で527万人増えましたが、生産年齢人口は650万人減少しました。米国、イギリス、ドイツなど他の先進国の生産年齢人口は増えています。
 ひとりあたりの年間総実労働時間は年々減っていますが、パートタイムの比率が高く、正社員の労働時間は、ほぼ横ばいです。ひとりあたり労働生産性も米国、フランス、ドイツ、イギリスに比べると、かなり劣っています。つまり、日本は圧倒的に人手不足であるのに労働生産性は低いわけです。





なぜ働き方改革なのか(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

「働き方改革実行計画」とRPA

 そこで、安倍総理が議長に就任し、2016年9月、働き方改革実現会議がスタートしました。2017年3月、「働き方改革実行計画」を発表、処遇の改善、制約の克服、キャリアの構築という3つの課題を提示しました。私が見るところ、重要なのは2点です。1つは労働生産性の向上で、本日の演題でもある業務の自動化も含まれます。2つは雇用の創出です。
 日本では情報化・システム化を進めてきましたが、まだまだ手作業の部分も多い。それを自動化することで労働時間を短縮し、業務品質や労働意欲を向上させようというものです。RPAという言葉が使われるようになったのが2016年で、働き方改革実現会議の動きとタイミングが合い、RPAに大きな注目が集まるようになりました。

働き方改革 2つのアプローチ(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

RPAとは

定型的な業務をソフトウェアロボットで自動化

 RPAとは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略で、定型的な業務をソフトウェアロボットで自動化することをいいます。従来の情報システムではデータ入力は手作業で、コンピューターに入ってから基幹システムや財務会計ソフトなどが動いていました。箱の中の処理を行っていたわけです。対して、RPA は箱の外の業務、キーボードやマウス操作そのものを自動化しました。
 通常、ロボットというと、すぐにPepperのような機械(ハードウェア)をイメージしますが、ソフトウェアロボットという新しいジャンルが登場しました。ハードウェアのロボットも工場のFAなどは、あらかじめプログラムされた通り動き、組み立てや溶接、塗装などを行っています。Pepperなどのコミュニケーションロボットはプログラミングされているものの、柔軟に非定型の会話にも対応できます。それと同様、ソフトウェアロボットにも定型業務が得意なもの(RPAマクロ型) 、非定型業務が得意なもの(RPA AI型) があります。

RPAとは(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

RPAが向いている業務

 RPAが得意としている業務は繰り返し行う業務、大量のデータを処理する業務、ルールに基づいた業務です。言い換えれば、人がやりたくない仕事、人がやるとミスばかり起こすので、やらないほうがいい仕事です。

人とRPAの比較

 人とRPAを比較すると、人の勤務時間は、おおよそ週5日、1日8時間勤務として週40時間程度。RPAは休みなく24時間×週7日間、つまり168 時間働き続けます。平均的な事務職の賃金が年間252万円、RPAなら当社製品の場合、1年間のライセンス料は28万円です。なによりいいのはRPA は休まないし、文句もいわないし、ミスもしないことです(笑)。ほかにも、いろいろと潜在的なメリットがあります。



手作業で繰り返されるパソコン操作を自動化

 当社のRPAソリューションの特徴はブラウザの操作やウィンドウズアプリの操作、Eメールを使った定型業務、エクセルデータの入・出力、データ変換といった業務を自動化したことです。

開発しやすい自動記録とスクリプト編集

 特徴的なのは自動化のシステムのつくり方です。「Autoブラウザ名人」はパソコンのブラウザを操作したものを自動的に記録。自動化の精度を高めるためにスクリプト編集できるようになっています。「Autoメール名人」はアイコンをつなげるだけで処理フローを設定できます。

他システムとの連携と運用管理の充実

 当社の場合、業務ソフトの開発を行ってきましたから、データ変換もツールとして提供し、複数のパソコンで動いているRPAを管理できるスケジュール管理の機能も用意しました。自動化のシステムが動いていくと途中経過がわかりにくくなりますが、処理の結果やエラーになったときの画面のハードコピー、スクリーンショットを管理者にメールで通知する便利な機能も付け加えました。

実現したい自動化処理の概要

 営業が携帯電話で件名に在庫照会、本文に商品コードだけを入れて送信すると、在庫情報がパッと返ってきたら、うれしいですよね。どういうふうに「Autoメール名人」で設定すればいいのか、ご説明します。最初にメールを受けとると、そのメールを解析するステップがあり、件名に「在庫照会」があれば処理が流れ、なかったら終了する設定にします。次に本文を見て、JANコードが1行目に書かれていたら、あらかじめ決められた在庫のデータベースを参照し、JANコード、製品名、ケース在庫数、バラ在庫数を引っ張ってきます。そしてメール本文に、その情報を貼りつけて送信するというイメージです。プログラムの知識がなくても、簡単に設定できます。

RPA導⼊事例

サッポロビール:POSデータのダウンロード

 ここから、いくつかの導入事例を紹介します。サッポロビールは食品メーカーでは割合に多いパターンです。小売業からPOSデータの提供を受け、分析して小売業にフィードバックして、いろいろな提案を行っています。ある小売チェーンは7つの業種に分かれ、20ある商品カテゴリーごとにダウンロードを細かく指示しないといけませんでした。従来は処理が1日で終わらず、一部のカテゴリーしかダウンロードして分析できなかった。RPAを使うことで年間5,700時間分の自動化を達成、金額にして約1,100万円の削減効果が出ました。

事例1:サッポロビール様(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

信州ハム:WebEDI受注データのダウンロード

 得意先ごとに発注サイトの画面は異なるので、それぞれのオペレーションを覚えなければなりませんでした。ダウンロードしたファイルを基幹システムと連携させるためにファイルレイアウトの変換も必要でした。365日作業しなければならず、情報システムの管理職は土日も出勤していました。そこでRPAを導入し、受注データのダウンロード、データ変換を自動化したところ、100社の200種類のスクリプトに対応できるようになりました。管理者はiPhoneで稼働状況を確認できるので、土日はストレスなく休めるようになったと伺っています。

事例2:信州ハム様(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

ツインバード工業:メールによる受注処理

 得意先からの受注データがエクセルなどに入力され、メールの添付ファイルとして送られてきます。場合によってはパスワードが別メールで送信されてきます。解凍してエクセルシートを印刷し、基幹システムに入力。一部の得意先には納期を入力して、また送信する、こうした処理がたくさんありました。メールの見落とし、基幹システムの入力ミスなどの不具合も発生しやすい。そのプロセスを自動化したことで年間約480時間の削減に成功しました。ファクスで来る注文も得意先と相談し、一部はメールに移行、自動化できました。

事例3:ツインバード工業様(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

埼玉県魚市場:食品スーパーのオンライン受注処理

 食品メーカー(荷主)に代わって受注し、出荷する業務を手作業で行っていました。荷主ごとにログイン、印刷して基幹システムと連携していました。導入後は1日2時間分の工数が削減できて、残業がなくなった、本当の意味の働き方改革になっていると話されていました。

事例4:埼玉県魚市場様(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

ギンポーパック:営業担当者による得意先別の在庫管理

 食品スーパーの食品トレイをつくっている会社です。在庫管理の責任が各営業担当にあり、商品が減ったら生産を指示しなければいけないので、営業活動に時間が割けなかったり、どうしても欠品を出てしまったりということがありました。在庫情報や出荷状況を出先から見られるようになっていましたが、営業担当者が出先・出張先から見るのは不可能に近い。クレームや過剰在庫につながっていました。

 そこで、毎朝9時に在庫情報と連携したBI分析システムからチェックするべき商品がピックアップされ、在庫数や出荷予定、製造依頼情報をプッシュ型のメールで営業担当に配信することにしました。アクションが非常に速くなり、適正在庫を保つことができるようになりました。

事例4:ギンポーパック様(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

アムハード小西:出荷に関する問合せ業務

 得意先は工務店や現場監督で、Webで注文が入ってきます。工事の進捗に合わせて商品が欲しいので、出荷状況の連絡のやりとりが頻繁にあり、問合せがあるたびに物流に確認して得意先に電話連絡していました。4拠点の20名が、そうした処理に携わり、約半日を、その業務に費やしていました。

 「Autoメール名人」と送り状発行システムを組み合わせました。送り状を発行したときの問い合わせ番号を自動的に「Autoメール名人」に渡して、得意先にメールで通知するようにしたところ、大幅に工数が削減できました。

事例4:アムハード小西様(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

RPA導⼊に失敗しない7つのチェックポイント

 最後に、RPA 導入に失敗しないためには、どのようにしたらいいか、ポイントをご紹介します。

 まず手作業の業務を一度棚卸しして、どこにどういう処理があるのか、業務フローを整理することです。その上で、本当にその仕事が必要かどうか、見直します。業務を引き継いだが、だれが、その資料を見ているかわからない資料をつくっているケースもありました。この段階で結構仕事が減ります。残った業務をRPAで自動化できるか・できないかという判断をします。

 RPAを導入する際、うまくいくシナリオだけを想定してはいけません。アクセスしたが、注文データがなかったときはエラーになって止まってしまうなどの不具合が生じるかもしれません。あらかじめ、いろいろな条件を想定しておく必要があります。

 RPAには、さまざまなものがあります。自社にどういうものが合っているのか、自分のところで開発できそうか、海外のものもありますので、日本語に対応しているかどうか、自分たちの業務が本当に自動化できるのかどうか、見きわめなければなりません。

 当社の製品は年間ライセンス料が安いので、効果の出やすい業務から導入し、RPAがどんなものか、一回体験してみてもいいかもしれません。「いけそうだな」と思ったら、本格的に種々の業務に展開していけばいいわけです。



RPA導⼊に失敗しない7つのチェックポイント(講演資料:今、働き方改革で注目されているRPAとはより)

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