RPAによる働き方改革

田中氏

株式会社日本能率協会コンサルティング
ビジネスプロセスデザインセンター
チーフ・コンサルタント
田中 良憲 氏

RPAによる働き方改革

 我が国は現在、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
 この情勢の最中、政府が打ち出した「働き方改革」に取り組む企業が急増、直近調査では「すでに取り組んだ、あるいは推進中」企業は7割以上になっています。一方で「改革効果も従業員満足度も得られた」回答は3割を切るようです。「働き方改革」の目的は、「生産性向上(時間減×成果物アップ)」です。
 このたび真の生産性向上実現に向けて、RPA(Robotic Process Automation)を用いて、仕事量を軽減する進め方をご紹介します。

 目次 

世の中の働き方改革活動の実態
 -データで見る企業の働き方改革の状況
 -何かがおかしい「働き方改革」・・・何故か不満が先行する活動
働き方改革と”RPAの概要”
 -私たちの仕事・職場タイプと、仕事の無駄の構造
 -RPA概要・特徴、進め方
IoT/ICT普及で起こる伸びそうなビジネス
 -働き方改革推進の課題
 -RPA活用の見極め、効果範囲の広げ方

Ⅰ.世の中の働き方改革活動の実態

採用難、定着難、生産性低下という長時間労働リスクが発生

 昨今、猫も杓子も働き方改革という言葉が氾濫しています。この「働き方」と言う言葉はよくわからない概念でして、例えば働き方やワークスタイルが変わると、どのように経営成果に結びつくかということをロジカルに説明することは非常に困難です。

 しかしながら、現代企業における長時間労働は、少子高齢化・労働人口減少により、採用難、定着難、生産性低下というリスクを生じさせています。採用難な人手不足を生み、人手不足が長時間労働につながり、長時間労働はモチベーションを低下させ、生産性低下と定着難を招くという、だれにとっても働きにくい負のサイクルが回っています。

「3Kから新3Kへ」といわれるように、「きつい・汚い・危険」から「きつい・帰れない・給料が安い」へと変化しており、この「帰れない」を是正しなくては採用もおぼつきません。

 定着難について、離職率3割という数字は実は昔と変わっていません。ただ、辞める理由が変化していて、離職理由のナンバーワンは長時間労働です。あらためて長時間労働、休み方改革に着手する必要があります。

講演資料:RPAによる働き方改革より

働き方改革の取り組み結果

 世の中の「働き方改革」の取り組み状況を調べました。2015年、上場企業238社にアンケートをとった結果、「(働き方改革を)推進中」の企業は34%でしたが、2017年には73%に激増しました。

 働き方改革の効果の実感としては「効果が感じられた」という企業は49%ですが、「従業員の満足も得られた」は28%にとどまりました。企業は成果があがりましたが、70%以上の従業員は恩恵を感じていません。

講演資料:RPAによる働き方改革より

「働き方改革」を実感していない理由

 これは個人アンケートでも一目瞭然で、「働き方改革を実感していない」が圧倒的に多く、企業も個人もどちらも悩んでいます。

 長時間労働につながる職場慣行としては「業務の属人化」が多く、これを是正するためのキーワードがRPAです。

講演資料:RPAによる働き方改革より

Ⅱ.働き方改革と”RPAの概要”

働き方改革活動の3つのフレーム

 働き方改革は「制度ルール(仕組み・ルールでの解決)」「環境ツール(働く環境・技術・ハードウエアでの解決)」「意識風土(運動論・マインド)」の三位一体で進めないと改革は進みません。

 環境ツールとは経営・組織目的達成に貢献する執務フロアづくり、ファシリティの用意、めざしたい情報共有を目的としたICT環境の用意、紙にしばられないツールの用意などを意味します。今日のテーマであるRPAは、まさにここにあたります。

 あわせて、やる気にさせる評価制度・ルール、意識風土の改革が必要です。これが一番のネックです。やはり日本のビジネスパーソンは働くことが大好きで、働くことを美徳とするところがあります。何かしらの強力なマネジメント改革をしないと働き方改革や時短の成果は出ません。

講演資料:RPAによる働き方改革より

長時間勤務やアウトプット不足の原因

 働き方改革をお手伝いさせていただいた職場の問題をまとめると次の5点になります。

 1つは個人に割りつけられる業務量が多いことです。正確にいうと、全員が忙しいのではなく、業務ノウハウが共有されていないため、スキルのある1人の担当者に業務が偏っています。これをいかに平準化していくかが大きな課題です。

 2つは作業の追加、手戻り、やり過ぎの発生です。指示があいまいで、やるべきアクションが決まっていないため、やり直しが頻発します。特に課題対応型の場合、パフォーマンスロスにつながります。

 3つは仕事の発生時間をコントロールできないことです。やらなくてもいいタイミングで仕事を実施したり、後工程を考慮しないで依頼を出したり。結果的に遅くまでやることになります。

 4つは今日の論点ではありませんが、情報共有のタイミングやルール、方法論があいまいなことです。

 5つは職場マネジメントポリシーの行き過ぎです。長時間働く人を美徳とするのもそうですし、対面コミュニケーションや情報共有の形式などにこだわります。そうした本質的ではない、こだわりが結果的に長時間労働を生みます。

RPAとは何か

 環境・ツールからの働き方改革アプローチの一手段としてRPAが注目されていると、先ほど申し上げました。
RPA(Robotic Process Automation)とは認知技術を活用した主にホワイトカラー業務の効率化・自動化の仕組みのひとつです。人の代わりに業務を補完する仮想知的労働者(Digital Labor)とも呼ばれています。ロボティックというキーワードが使われていますが、リアルなロボットではなく、ソフトウェアやソリューションを指します。

講演資料:RPAによる働き方改革より

RPAの業務領域

 これまで人がやらざるを得なかった大量のデータ処理などはBPO(Business Process Outsourcing)や派遣社員、外注業者を使って対応していました。この業務を定型・非定型含めて内製化するのがRPAです。

 業務量のボリュームを減らしますから、時短の実現、品質・コンプライアンス水準向上も可能になります。スピーディーに処理ができるので生産性も向上。副次的な効果として、時短で空いた時間で新しい仕事、高付加価値業務への再配置なども考えられます。

 通常のシステムはプログラム開発が必要なので、導入には最短でも3カ月~半年かかりますが、RPAはプログラミングが不要なので、短期間で導入可能で、価格が安く、品質も担保できます。

講演資料:RPAによる働き方改革より

RPAによる業務の自動化イメージ

 例えば請求書処理のフローではオペレーターが入力し、検索、転記、編集、印刷と合計8時間かかるとします。RPAではこれら作業を全て記録化し、指示されたフローを実行するだけなので半減以下、10数分にもまで短縮することが可能です。

講演資料:RPAによる働き方改革より

RPAと類似した自動化アプローチ

 RPAと類似した自動化方法として、マイクロソフト製品に代表されるマクロや、システム連携を得意とするBPMS(ビジネス・プロセス・マネジメントシステム)があります。これらと比較すると、RPAは基幹系システム、業務支援システム、外部クラウド、システムサービスの種類にかかわらず、すべての連係動作を自動化できることが特徴です。

 改善実行の主体は個人単位ないしは機能別組織なので、適用範囲は狭いのですが、すぐに効果が出ます。費用対効果が算出しやすく、小粒な業務に向いています。

講演資料:RPAによる働き方改革より

トライアル導入によるPOCアプローチ

 実際に、どのように導入していくのか、一般的にはPOC(Proof of Concept)アプローチで検討することになります。本当に実現できるかどうか、モデルプロセスを設定して1回やってみて、うまくいったら次のプロセスに進めるという展開方法です。

 パイロット版を導入すると相当の効果があることがわかります。RPA導入によって5割以上の業務削減に成功した企業が97%にのぼりました。

Ⅲ.IoT/ICT普及で起こる伸びそうなビジネス

働き方改革推進の4つの課題

 RPAを導入する際、本質的には業務を変えていきたいという組織のニーズ感・目的感がない限りは進みません。

 一般的な課題としては4つあります。1つ目は「目的が不明瞭」ということです。「RPAを入れて時短を図る」なのか、その分、浮いた時間で「何か新しいことをやる」なのか、この目的感が、定まっていないことを感じることが多いです。

 2つ目は「目的浸透が遅い」ことです。浸透スピードが遅いと、現場には「やらされ感」がつきまといます。

 3つ目は「方法論がわからない」ことです。今回のテーマに限っていえば、RPAという明確な方法論がありますが、一般的には、やり方・進め方がわからず、頓挫してしまうことが多いです。RPAの場合、教育等方法論の展開が甘いため、活動が止まることが多いです。

 4つ目は、これが大事な点ですが「活動継続のための仕掛けがない」ことです。パイロット版で仮に対象プロセスの97%が時短に成功したとしても、次に続けていく仕掛けがない限り、そこでストップします。

全社の働き方をカエル変える「メカニズム」

 働き方改革を継続化することで、成果をあげている企業の取り組み方を5つの要素に分けました。

 第1に「明確で強いトップ方針」。第2に「働き方実態の『見える化』」。RPAは業務を可視化します。第3に「働き方見直しのノウハウづくり」。RPAもノウハウのひとつです。第4に「ドライブとなる体制づくり」です。現場のITリテラシーが高くない場合は支援する部門がないと進みません。第5に「意識改革マネジメント」です。実質的に職場をつくっているのは中間管理職なので、彼らに「RPAをやろう」という動機づけがない限り、うまくいきません。逆に、うまくいっている会社は、ここをきちんと押さえた上で進めています。

講演資料:RPAによる働き方改革より

業務プロセス改善の考え方・改善の視点

 よくメーカーで「ECES」という改善視点が使われることがあります。Eは排除(Eliminate)の頭文字で、その帳票やデータは必要なのか、そもそも業務自体が要るのかという観点でまず考え、不要なものは削っていきます。

 Cは結合と分離(Combine)の頭文字で「同時にできないか」「別々にできないか」と検討することです。

 Rは入れ替えと代替(Rearrange)の頭文字で、「順序・タイミングを変えられないか」と考え、どうしたら作業が容易になるのかを探っていくものです。

 Sは簡素化(Simplify)の頭文字で、「距離をもっと短く、重量をもっと軽く、もっと簡単にできないか」を考えます。

非定型業務プロセス改善の考え方・改善の視点

 改善対象を明確にする段階で、「私の仕事は非定型なので、RPAは無理です」という人がいますが、本来は定型的な業務なのに、あえて本人が非定型にしている仕事がたくさんあります。製造業の改善の考え方でいうと「仕事をばらす(分解する)」という術を使い、細かくばらしてみると非定型ではなく、実は定型だったという仕事が結構あります。そうした業務も対象にすれば、RPAの適用範囲が大きく広がります。

 加えて、時短・コスト削減効果を出すためには、あわせて「帰れ」「休め」という仕組みを設ける必要があります。RPAの効果で減るのは、あくまでも、その対象業務の正味時間であって、それが人単位の時短・長時間労働是正につな
がるとは限りません。

 皆さんがRPAを入れて何を目的にするか。目的を見極めたうえで事前に業務量を把握し、RPA化できそうな仕事の発見、動機づけなどを、しっかりやっていただくと、抜群の費用対効果が望めるのではないかと思います。

セミレポ_RPA田中氏公式
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株式会社日本能率協会コンサルティング
ビジネスプロセスデザインセンター
チーフ・コンサルタント
田中 良憲氏

業務プロセス改革、情報システム導入による生産性向上、サービスレベル・品質向上テーマを専門領域に活動。直近は働き方改革、ワーク・ライフバランス&ダイバーシティ実現支援の経験も多く、これらテーマにかかわる書籍・雑誌・新聞の執筆活動にも力を入れている。
㈱ワーク・ライフバランス 加盟ワーク・ライフバランスコンサルタント。


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